2026年6月17日「中国の対日認知戦における偽ニュースサイトの展開/米中連携干渉最前線アルバータ州独立運動」 ウェビナーレポート

2026年6月17日、新領域安全保障研究所(Institute for New Operational Domains Studies: INODS)は「中国の対日認知戦における偽ニュースサイトの展開/米中連携干渉最前線アルバータ州独立運動」と題して公開ウェビナーを開催した。ウェビナーには一田和樹氏と鈴木涼平氏が登壇し、それぞれの発表と関連議論が交わされた。
まず、鈴木氏は2024年にカナダの研究機関「シチズン・ラボ」(Citizen Lab)が明らかにした中国の「ペーパーウォール」作戦(Paperwall)に焦点を当てた分析結果を紹介。2021年から2024年2月までの期間に日本で展開される15の偽ニュースサイトで発信された記事タイトル約16万件に着目し、「韓国」という単語が最も頻出していたことを指摘。さらに、韓国関連のトピックを分類したところ、4つのクラスターに分けられるとし、中でも日本関連のクラスターでは日韓の文脈でネガティブに受け取られうる「徴用」、「反発」、「汚染水」といった単語の分布が確認されたと述べた。この結果から、タイトルに韓国と付く記事のうち日本に言及するものでは、日韓の対立的なトピックがより多く発信されている可能性があると言及。また、偽ニュースサイト上で転載される聯合ニュースの汚染水・処理水表記の記事を分析し、汚染水表記の記事が非対称的に多く転載されていた点も指摘した。
ついで、一田氏はカナダの研究機関「disinfowatch」が公開したアルバータ州の分離独立運動を分析するレポート『National Unity Under Threat』の内容説明と評価を行なった。本レポートはアルバータ州独立運動に対する外国からの情報発信についての分析を行なっている。例えば、ロシアがプラウダ・ネットワークを用いてアルバータ州独立を支持する記事を発信したり、アメリカのインフルエンサーの言説がカナダに波及している点を分析している。本レポートを評価するため、一田氏は24項目・5段階から成る指標に当てはめて本レポートの評価を行なった。その結果、本レポートは20項目で最高評価を得て114点を獲得し、672件のレポート中、第2位の評価を得るに至った。このことから、一田氏はこのレポートを認知戦分野の「教科書的な完成度」であると表現した。また、一定数以上のレポートを発信する28機関を対象として、それらの機関を(a)高規格総合型、(b)主体マッピング型、(c)プラットフォーム監査型、(d)広域モニタリング型に類型化できることも紹介。加えて、日本を含む東アジア地域のレポート傾向として、アトリビューションや脅威評価以上に「対策・課題」に関する記述が行われていることにも言及した。
発表後、ウェビナー参加者からは日本で展開される15の偽ニュースサイトの構築目的やSNS上における記事拡散の有無、今後の中国の対日認知戦の展望、高市政権の誕生に関連したペーパーウォール作戦の変化などについて質問が交わされた。
(以上)
