米国に広がる誤・偽情報対策の後退 SIOは選挙に関する研究を中止
スタンフォード大学を拠点とするソーシャルメディアプラットフォーム悪用についての研究グループであるSIO (Stanford Internet Observatory)が政治的圧力により閉鎖の危機に直面している。
SIOは2019年創立。スタンフォード大学に拠点を置く、選挙における情報操作、人工知能、SNSを媒介とする児童搾取など情報技術におけるソーシャルメディア乱用についての研究、教育を行う学際的なプログラムである。
SIOを含む虚偽情報研究グループは、2020年、2022年米大統領選においての不正の疑いや、COVID-19ワクチンの誤情報拡散などにについて調査・報告してきたが、結果として研究が検閲にあたると主張する共和党員をはじめとする保守的な政治家や活動家から非難されることとなっていた。
NPR(National Public Radio、米国公共ラジオ放送)の報道によると、2023年11月SIO創設ディレクターAlex Stamos (1979~)が退任以降、同じくマネージャーのRenée DiResta(1981~)を筆頭とするスタッフらの契約が未更新となっている。
Stamosは元SIOの創設ディレクター。現在はスタンフォード大学に残り、スタンフォード専門能力開発センターの講師を務め、国際政策プログラムとコンピュータサイエンスの両方を教えている。同大に入職以前はYahooやFacebookの最高セキュリティ責任者(CSO)を務めていた。
DiRestaは元SIOのライター兼リサーチマネージャー(24年6月上旬退任済み)。SNSの悪用について調査し、議会、国務省、その他の学術、市民、ビジネス組織に助言をしてきた人物。The Atlantic、Noema、Wiredなどのメディアで定期的な執筆も手がける。
関係者によればSIOに残っているスタッフはわずか3人。彼らは退職するか、スタンフォード大学のサイバー・ポリシー・センターで働くことになるようだ。
6月13日付のテクノロジー系ニュースレター「Platformer」への声明で、大学はSIOの解体を否定しており、活動は同大教員のJeff Hancock下で再構成され、子どもの安全やその他のオンライン被害に関する重要な取り組みは継続されると反論している。
SIOを揺るがすきっかけになったのはワシントン大学情報公衆センターと共同設立した米大統領選(2020年と2022年)に関する虚偽や誤解を招く情報の追跡調査プロジェクト「EIP-Election Integrity Partnership(選挙の信頼性に関するパートナーシップ)」にある。
大学とSIO、研究者らは、調査が政府と連携した保守派に対する検閲であると主張する保守派主導のグループによって、昨年3度の連邦訴訟を受けることとなった。
さらに議会や裁判所による厳しい監査の対象となり、SIOは2024年11月の米大統領選やその他の選挙に関する偽・誤情報研究は行わない方針を発表している。
SIO関係者らはネット上での誹謗中傷に晒され続けており、3度の訴訟による金銭的負担も加わり資金調達に苦労している。
このような状況に対しStamosとDiRestaの二人は、「Platformer」への声明で司法制度による擁護への期待を語っている。
https://www.nytimes.com/2024/06/25/opinion/stanford-disinformation-election-jordan-twitter.html
https://www.newyorker.com/magazine/2023/10/30/jim-jordans-conspiratorial-quest-for-power
https://www.platformer.news/stanford-internet-observatory-shutdown-stamos-diresta-sio
https://www.theregister.com/2024/06/14/stanford_internet_observatory