ロシアによるフランス選挙への干渉
フランス最大の政府基礎研究機関CNRS(フランス国立科学研究センター)は6月30日、「ロシアがフランスの選挙に介入するため、ソーシャルメディアを標的にして戦略を立てている」という研究論文を発表した。この研究によると、ロシアは「明確な親ロシア傾向」にある国民連合(RN/先日のフランス国民議会下院選挙の第一回投票で最多議席を獲得した極右政党)を拠り所に活動しているという。
「フランスでプーチンの支持政党が政権を握る前に、乗り越えなければならない最後のハードルがRepublican Front(選挙期間中、極右政党に対抗するため複数の政党が協働する政治戦略)である」と、論文の著者David ChavalariasはEuractivに語った。「プーチンにとっての課題は単純だ。彼の支配に反対する政治コミュニティを、どのようにして選挙で敗北させるかという点にある」
この論文では「100ユーロを支払って違法に票を買っているマクロン大統領」のデマ情報を流布するウェブサイトなども具体例として取り上げられた。「生成AIの進歩で、こうした活動はここ数か月でより生産的かつ効果的になっている」とChavalarias氏は語った。
ロシアがソーシャルメディアを利用して他国の選挙活動に影響を与えようとする戦略は、2016年の米国大統領選や2022年のフランス大統領選などでも確認されてきた。これらの活動に、どの程度の影響力があるのか(あったのか)は専門家たちの間でも意見が分かれており、一部の研究者は「きわめて限定的な効果」「因果関係を確実に特定することは難しい」と示唆している。
一方、フランス国内ではロシアとRNの繋がりを危険視する声も多い。先日、フランスの専門家や元外交官たちは、大手新聞Le Figaroのオンラインプラットフォーム「FigaroVox」に辛辣な声明を発表した。
彼らはRNがプーチン、その他の非自由主義国家の権威主義的指導者たちと関係を強めていると指摘し、協力的な国際関係や法の支配を重視してきたフランスの伝統的な外交政策とRNは異なった方角を目指していると主張し、それはフランスの同盟関係や友好関係、国際社会での地位や信頼や影響力を大きく損なうことになるだろうと警告している。
なお日本国内でも大きく報道されているとおり、7月7日のフランス国民議会下院選挙の決選投票では左派連合が勝利するという予想外の結果となり、躍進が見込まれていたRNは第3勢力にとどまった。