ライブ配信されたインディアナ州銃乱射事件の動画が、XやFacebookに拡散

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2024年5月、米インディアナ州の食料品店で銃を乱射した20歳の男が逮捕された。幸いにも犠牲者は出なかったものの、容疑者のRichard Klaff Jr.は人種差別的な暴言を吐きながら黒人の客や従業員に銃を向け、複数回に渡って発砲する様子をライブ中継で配信しており、その動画は多くのプラットフォームに拡散した。

ISDの研究者たちによると、X(旧Twitter)とFacebook上には数十のバージョンの動画が拡散し、それは事件発生から48時間以内で計900万回以上再生されてしまったようだ。これらの動画の一部は現在も視聴可能となっており、さらに再生回数を増やしている。

研究者たちはInstagramやTikTok、YouTubeでも同じ動画を検索したが、暴力的な描写のないニュースのコンテンツや、動画の断片しか見つけることができなかった。一方で、この動画はXとFacebookの両方のポリシーに違反している可能性が高いにも関わらず、いずれのプラットフォームでもコンテンツに警告ラベルが付与されなかった。

こういったコンテンツの投稿を阻止するための取り組みとしては、「テロ対策に関するグローバル・インターネット・フォーラム(Global Internet Forum to Counter Terrorism/GIFCT)」によるコンテンツ・インシデント・プロトコル(CIP)が策定されている。

今回の事件の動画は、CIPが定めている「違反コンテンツ」の基準のいくつかを満たしており、その対象となるべきだった可能性が高い。しかし即座に対応されなかったようだ。その理由として「容疑者に明確なイデオロギー的動機がなかった」ことが挙げられるのではないかとISDは述べている。

つまりGIFCTのCIPは「テロリストや過激派によるライブ配信の阻止」に注力している。一方、この事件の容疑者は人種差別的な発言こそしていたものの、「いつも誰かを殺したいと思っていた」「軍隊に入る予定だったが(早く殺したくて)待ちきれなかった」という動機で乱射事件を起こした。そのため、動画の内容が極めて暴力的かつセンシティブであったにも関わらず、見過ごされてしまったのではないかと彼らは考えている。

このような動画がXやFacebookで派手に拡散した背景には、両社がポリシーに従って正確かつ迅速に対応することの限界が示唆されているのではないか、とISDはまとめている。いずれにせよ、利用者に精神的な影響を与えかねない暴力的なコンテンツをどのように制御していくのかは、今後のソーシャルメディアにとって大きな課題となるだろう。

(注:いずれも舞台はインディアナ州、容疑者は20歳の男性という共通点があるのだが、2022年7月の「3人が死亡した銃乱射事件」と、ここで説明されている殺人未遂の銃乱射事件は全くの別件である)

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