EU選挙で偽情報の組織的な大洪水に飲まれたX
Guardianは7月12日、EU議会選挙とソーシャルメディアに関する記事を掲載した。オランダのコンサルタント企業「Trollrensics」の報告によると、EU議会選挙前の欧州の国々には、偽情報を拡散するアカウントの組織的な活動が洪水のように押し寄せていたという。
トローリング活動や偽情報の分析を専門とするTrollrensicsの研究者たちは、ドイツ、フランス、イタリア、オランダにおけるXの投稿を分析し、そのうち約5万のアカウントを「意図的に偽情報を拡散しているアカウントのネットワーク」として特定した。それらの多くは選挙の数週間前から数日前にかけて急激に活動を強化し、フォロワー数を急増させていた。
上記の4か国における彼らの活動には、いくつかの共通点と相違点が見られたようだ。まずフランスのXでは、極右政党「再征服(Reconquête)」創設者のエリック・ゼムールに言及する投稿が12万7千件以上あったが、その約20%が偽情報アカウントによるものだった。
ドイツもフランスと同様、極右政党「Alternative für Deutschland(ドイツのための選択肢)」に関する投稿の10%が偽情報アカウントから発信されていた。「いずれの国も、実際の割合はさらに高かった可能性がある」と同社は述べている。
一方、オランダでは偽情報アカウントの組織的な活動が見つからなかった。またイタリアで調査対象となったアカウント群は、選挙そのものよりも「移民」「ワクチン」などに関する論争のほうに注力していた。
国ごとに深刻度やアプローチは少々異なるものの、これほどの規模のネットワークであれば、選挙に何らかの影響を及ぼしたことは間違いないだろう。Trollrensicsの研究者は、これらのアカウントが組織的に活動し、投稿、シェア、コメント、いいねなどの機能を(互いに)利用することで「洪水のようにXを占拠し、全体の議論を支配できる」と述べた。
彼らが調査した大量のアカウントは密接につながっており、その圧倒的多数は相互フォローをしていた。報告書には、このように記されている。「この手法の主な目的は、アカウントの信頼性を高めることにある。フォロワーの数が多ければ、そのアカウントがより正当なものに見えるからだ」
意図的な偽情報の拡散がもたらす社会的な影響については、これまでにも多くの研究が行なわれてきた。どのような内容のデマが流されたのか、どのプラットフォームで何回表示されたのかが報告される機会も多い。しかし「どれほどの数のアカウントが、どれほどの規模で組織的に協働したのか」という点も、その影響力や対策を考えるうえで重要な要素となるだろう。
この分野で先行しているMetaの脅威分析チームは以前からCIB(協調的不正活動)をテイクダウンの基準としていることからもその重要性がわかる。
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