中国のNGOファクトチェック団体「China Fact Check」

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ありとあらゆる誤情報や偽情報がオンラインに蔓延している現在、政府の検閲やグレートファイアウォールの存在が知られている中国のソーシャルメディアは、どのような状況になっているだろう?

「China Fact Check」の創立者Wei Xing(魏星)氏は今月19日、自身の活動に関する記事をIJNetに寄稿した。Sixth Toneの編集長だったXing氏が2020年に創立したChina Fact Checkは、中国初のファクトチェック非政府組織だ。彼が活動を記した記事は、いま中国が抱えている問題や対策の難しさを浮き彫りにしている。

目次

偽情報が蔓延しやすい背景

Xing氏は記事の冒頭で「いかに中国がファクトチェックを必要としているのか」を説明している。まずグレートファイアウォールや検閲のある中国では、市民がメディアの報じる情報を信頼していない。さらに国内のソーシャルメディアのプラットフォームは、誤情報や偽情報の防止対策が欠如している。結果として、中国のソーシャルメディアは偽情報や誤情報が「特に」蔓延しやすくなっているという。

中国政府によるファクトチェックの問題

現在のところ、中国でのファクトチェックは主に政府主導で行なわれており、その取り組みはpiyaoと呼ばれている。しかしpiyaoが取り上げる情報は「政府にとって好ましくないと思われる噂」に偏る。そしてpiyaoが否定する誤情報やデマは「(政府にとっての)安定や秩序に悪影響を及ぼしそうなもの」となっている。

つまり中国における「ファクトチェック」とは、ただ政府が自らの利益のためにだけに行なっている活動ではないのか、という懸念がある。さらに政府主導による取り組みが「国際的に認められたファクトチェックの基準に従っていない」という批判もある。

非政府団体による事実検証の難しさ

しかし中国では第三者によるファクトチェックが非常に困難だ、とXing氏は語る。中国のテクノロジープラットフォームは海外のプラットフォームと異なり、非政府組織によるファクトチェックに資金を提供したがらない。そして国内の商業メディアも「リスクが高くてほぼ利益のない活動」をわざわざ先導しようとは考えない。さらに中国のソーシャルメディアには、すでに膨大な量の誤情報/偽情報が溢れているため、少数の専門家がそれらを検証しようとすれば作業量も膨大になってしまう。

China Fact Checkの取り組み

そんな逆境の中、あえてChina Fact Checkを立ち上げたXing氏は、「ジャーナリズムの世界で働くことを志している学生たち」と「信頼を失ってしまったメディアのリテラシー向上を願っているベテランのジャーナリストたち」とを繋ぐことで(彼らは主にボランティアで参加している)、情報の透明性と信頼性を高めるための活動を続けている。

彼の記事はここからが本題なのだが、今回は「中国と偽情報とファクトチェックの現状」をお伝えすることが目的なので、彼の活動に関する詳細な説明は割愛したい。しかし壮大な野望を持つXing氏のメッセージは非常に読み応えがあるので、興味を持たれた方には、ここで全文をチェックしていただきたい。

余談

当たり前だが、中国で広がっているデマは日本とはだいぶ違うことがChina Fact CheckのWebサイトを見るとよくわかる。「バイデンが死亡してホワイトハウスは半旗を掲げた」、「プーチンが階段から落ちて尾てい骨を傷めた」、「中国の宇宙船が月面で宇宙人を虐待している」といったデマへのファクトチェックが並んでいた。どれも聞いたことがない。

また、中国の官製ファクトチェックが、「(政府にとっての)安定や秩序に悪影響を及ぼしそうなもの」を対象にしているという話は、日本にとっても他人事ではなくなりそうな気配となっている。

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