ドイツの若い有権者を極右政党へ誘導するTikTokのアルゴリズム
欧州の非営利シンクタンクAI ForensicsとInterfaceの研究者たちが執筆した報告書によると、EU選挙の前のドイツでは、若い有権者たちがTikTokを通して極右政党へ誘導されていた。
この報告書を独占入手したWIREDが7月16日に報じた内容によると、投票前の数週間のドイツでは、TikTokのアプリを使って特定の政党や政治家を検索したユーザーの約25%に「求めていた情報の代わりとして、他の政党の候補者に関するコンテンツ」が提案されていた。そこで表示されたコンテンツの大半は、ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に関連していた。
AfDがTikTokの特性を利用して若年層に影響を与え、過激な思想や偽情報を拡散してきたことは、すでに立証されている。複数のメディアでも報じられ、INODSも過去に取り上げてきた話題だ。しかし今回の新しい報告書は「AfDがTikTokのアルゴリズムそのものにも助けられていた可能性」を示唆している。
Interfaceの研究者はWIREDに説明した。「通常の検索でAfD(のコンテンツ)がより頻繁に表示されるのは、AfD(のコンテンツ)がTikTok内に多く存在しているからだ。しかし(TikTokの)検索の提案にはアルゴリズム的な側面もあり、『2つの検索を関連付ける』という決定が下されている」。そのため「緑の党を検索するとAfDが表示され、CDUを検索してもAfDが表示されるが、AfDを検索すると他の政党は現れない」。つまり彼らはTikTokとAfDの間に積極的な協力関係があったと示唆しているのではない。TikTokの構造(あるいは設計)が意図せず、悪意を持ったユーザーに活躍の場を与えてしまうことを指摘している。
InterfaceとAI Forensicsが昨年に実施した調査では、「一連の検索候補が表示された際、ユーザーは最も刺激的な見出しをクリックする傾向が強い」ことも示された。また「検索候補は、それ自体が人々の記憶に残りやすい」とも彼らは主張している。TikTokの検索提案が、より極端な内容(この場合は単純にコンテンツの数が多く、なおかつドイツの裁判所から「過激派」と評価された政党であるAfDの動画)を頻繁に表示する傾向があるなら、若いユーザーは偏った情報を記憶しやすくなるだろう。
TikTokはEU選挙期間中の偽情報対策として、国別のツールを導入したと主張している。しかし、その対応が一貫していないとの批判も受けている。いずれにせよ、若年層にプロパガンダを発信するためのプラットフォームとして、テロリストや過激派政党から愛用されているTikTokには今後、なんらかの運営管理の見直しが求められるところだ。