TikTokが米国利用者の銃規制、中絶、宗教などセンシティブな意見を収集 米司法省
中国企業のTikTokから「センシティブな話題に対するユーザーの意見」を収集するためのツールが発見されたことを米司法省が発表したとAP NewsやWSJなど各紙が報じた。つまりTikTokは、米国の各ユーザーから銃規制や中絶、宗教などに対する見解を収集・追跡することが可能である、と司法省は結論づけた。
米政府や州政府が国家安全保障上の理由でTikTokを危険視するのは、もちろん今回が初めてのことではない。中国当局によるスパイ行為やユーザーデータへのアクセス、プロパガンダの拡散に利用する恐れは散々指摘されており、2022年12月には「政府端末でのTikTok禁止法(No TikTok on Government Devices Act)」が成立している。2023年3月の米議会公聴会では、TikTokのCEO、Shou Zi Chewが5時間以上にわたる厳しい質問攻めを受けた。
そして2024年4月には「外国の敵対勢力に支配されたアプリから米国市民を保護する法案(The Protecting Americans from Foreign Adversary Controlled Applications Act)」が成立した。この法律はTikTokに焦点を当てているため「TikTok禁止法」とも呼ばれている。この法案の成立により、TikTokの親会社ByteDanceは、TikTokの事業を他国の企業へ売却することが強いられた。売却が行われない場合、米国ではTikTokの利用が全面的に禁止される。つまり同社は、事業売却か米国撤退かの二者択一を迫られている。
これを不服としたByteDanceは2024年5月、「当該法案は憲法修正第1条(国民の表現の自由、言論の自由を保障する)の侵害にあたるおそれがある」と主張し、同法案への異議申し立てを行った。つまり今回の米司法省の発表は、ByteDanceから異議を唱えられた「TikTok禁止法」の妥当性や重要性を後押しするもの、ということになる。
米国ではTikTokの人気が非常に高く、約1億7,000万人のユーザーがいると報告されている。若年層から絶大な支持を受けていることも特徴的で、ピュー・リサーチ・センターによると18歳から29歳の米国市民の半数以上がTikTokを使用している。
このようなサービスが全面的に禁止される状況は想像しづらいのだが、利用者が多いからこそ中国政府によるスパイ活動や干渉を恐れるのは当然だとも言えるだろう。いずれにせよ、複数の億万長者たちがTikTokの買収計画を発表している一方で、ByteDanceはTikTokの事業を売却する意思はないと語っている。