イギリス全土に広がった暴動 警察では歯が立たず常備軍設置
拡大する暴動に対応しきれない警察
サウスポートの事件を発端にした暴動がイギリス全土に広がっている。発端となったサウスポートやハートルプールから、ロザラム、サンダーランド、ハル、ストーク、リバプール、ミドルズブラ、タムワースなどに飛び火した。ニューヨークタイムズ、ワシントン・ポスト、ガーディアン、タイムズ、AP通信などの主要誌が事件の状況を伝えている他、現場で活動していたHOPE not hateは現場の状況を伝えている。
極右を始めとした人々が参加していたが、現在はより広い範囲の不満を持つ人々が参加している。中には最近夏休みに入った野次馬やティーンエイジャーもいる。
2024年8月4日には、一時的な亡命希望者向け宿泊施設で放火未遂事件が2件発生した。1件はロザラムで、1,000人近い暴徒が集まり、現地の警察は歯が立たなかった。暴徒はゴミ箱を建物内に押し込み、火をつけるなどの破壊行為を行った。タムワースでは暴徒が宿泊施設に押し入り、廊下に火を放ち、人種差別的な落書きを建物にスプレーで描いた。
一方、ブリストルでは、暴徒が宿泊施設に入ろうとしたところ、反ファシスト活動家が立ちはだかって食い止めた。
ハルでは、当初は大規模なデモが行われていたが、暴徒化し、警察と激突した。暴徒が街を徘徊し、車のタイヤでバリケードを築いて火を放ち、停車中の車を破壊した。やがて、建物に火がつけられ、店舗が略奪される事態となった。
ミドルズブラでは、多数の暴徒が警察に襲いかかろうと集まり、道路を封鎖し、家屋に甚大な被害を与えた。投稿された動画では、車を停車させ、乗っているのが「白人かつイギリス人」であるかどうかを確認してから通過させる男たちのグループが映っていた。
カーディフ、ドンカスター、レクサム、スウィンドン、ノッティンガム、プレストン、レスター、トーキー、ハイウィコムなどでは、反ファシスト活動家が極右を妨害したり、あるいは充分な人数が集まらなかったりして、騒ぎは起きなかった。
8月10日には、ベルファスト、リバプール、ニューキャッスル、サルフォードなど、複数の場所で活動が予定されている。
一部ではロシアの関与も指摘
騒ぎが広がる中、ロシアが関与しているという指摘が、TelegraphやIndependentに掲載された。ロシアは民主主義国で騒動が起きれば、それを煽る情報を発信したり、拡散したりすることが多い。今回も関与している可能性は高いが、その規模や影響範囲は今後の分析を待たないと評価できないだろう。
専門の常備軍設置
イギリス首相は、こうした事態に対し、専門の常備軍を設置し、法制度を整えるとした。
この事件は、誤・偽情報と暴動の関係についての事例として調査研究されることになるのは間違いなく、同時にヨーロッパおよび世界の多くの国がすでにガソリンを撒いた状態になっており、誰かがマッチをするだけで大火災になることを世界に再認識させた。