イギリスの暴動はロシアの情報工作が発端だった?

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2024年8月9日更新

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イギリス政府がロシアの関与を調査

サウスポートの刺傷事件から始まり、イギリス各地に広がった暴動のきっかけとなったのはロシアの情報工作だったという指摘がある。Daily MailPoliticoIndependentTelegraphなどが伝え、その後イギリス政府も海外からの干渉について調査を開始したとロイターが報じた。

ロシアの3つの関与

指摘されているロシアの関与は次の3つがある。

1.大きく拡散するきっかけとなったサイトChannel3 Nowの運営に関与していた可能性

2.ロシアのプロパガンダメディアであるRTがその記事を取り上げ、拡散を加速

3.ボットによる拡散

2と3については日常的に欧米の民主主義国に都合の悪いことを取り上げているので、行われている可能性は高いというか、目立つ騒ぎがあったら必ずやっていると言っても過言ではないだろう。
まず、2のRTに関しては、思い切り誤りと指摘されたChannel3 Nowの犯人の名前や素性を掲載した。Channel3 Nowの記事は削除されたが、RTにはまだ残っており、見ることができる。
3のボットによる拡散そのものはすでに確認されたと報道されているので、ロシアである可能性は高い。

2024年8月9日追記 1.についてはBBCの検証記事によって否定された。

きっかけとなったChannel3 Nowはロシアのプロキシだったという疑惑

前述の複数の報道によると、下記のような経緯だったと考えられる。

・10年以上前にごくふつうのYouTubeチャンネルが開設され、しばらくして更新が途絶えた(当時ではよくある話)。

・チャンネル名が変更され、動画の内容も大きく変わった。専門家数名は乗っ取られた可能性があると指摘している。BBCの検証記事によれば実際には買い取られたようだ

・その後もチャンネル名は何度も変更され、今はChannel3 Nowとなっている。昨年、Webサイトも作られた。Webサイトには大手報道機関のニュースの再投稿やAIで加工した記事が掲載された。

・反ロックダウンなどで知られる人物が犯人の名前と素性を投稿し、その2分後にChannel3 Nowにその内容が掲載され、大規模な拡散のきっかけとなった。

・その人物は投稿を削除し、Channel3 Nowもしばらくして記事を削除し、謝罪記事を掲載した。Daily Mailによれば、この謝罪記事は生成AIによるものである可能性が高い。

2024年8月9日追記 その後、BBCの検証記事によってChannel3 Nowがロシアとは関係のなかったことが判明した。また、発信元についても当初名指しされていた人物は最初の投稿者ではなかった可能性が出て来た。

デジタル影響工作 4つの干渉方法

デジタル影響工作では干渉方法は4つのタイプに分けられる。ロシアには直接政府が関与する以外に、間接的に関与しているグループ(タイプ3、4)が無数に存在する。Channel3 Nowもそのひとつであった可能性が高いと報じられている。
2024年8月9日修正 たとえばコロナ禍の際、ロシアはパンデミックにまつわる反ワクチン、陰謀論など投稿を拡散することで、そうしたサイトや個人の閲覧やフォロワーを増やし、広告収入を増大させていた。QAnonはそのおかげでコロナ禍で勢力を拡大した。Channel3 Nowの記事の内容から考えて、タイプ4だったと言える、ロシアは以前からChannel3 Nowの記事を拡散していたのだろう。


このタイプの干渉はロシアの関与を特定することは難しい(そもそもこういう時に否認できるためにそうしている)。イギリスおよび欧米はロシアの関与を非難することになるが、有効な対策は打ちにくい。なぜなら直接の関与がない以上、一般市民の活動と区別することが難しいうえ、こうしたプロキシは無数に存在する。今回のように事後に対処することはできるが、事前に無数のプロキシを摘発してまわるのは困難であるうえ、言論の自由を侵害するリスクがある

ロシアの関与について、ある、なしの二択で答えるなら、あったことになるが、明確に白黒に分かれるものではなく、タイプ1から4のグラデーションがある。そして、タイプ3と4は現状欧米型の民主主義国では対処が難しいものとなっている(くわしくはこちら)。今後もさまざまな国で同種の事件が起こる。

我が国の複数の官庁が偽・誤情報対策を考えているようだが、タイプ3と4への有効な対策を持たない限り、欧米の二の舞を踏むことはほぼ間違いない。

もうひとつ忘れてはならないのは、ロシアのデジタル影響工作はきっかけではあったが、イギリス国内には大規模な暴動が起こりやすい状況だったということだ。なにもない状態から1日で暴動を起こさせるような力があるわけではない。前提として社会は臨界点に達する状態だった。今回の事件でロシアを非難する以上に重要なのは、臨界点に達しないような社会を作ることだ。

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