英暴動をめぐりSNSへの批判強まる

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極右による暴動が英国の各地で発生し、140人以上が身柄を拘束されたことを受け、ソーシャルメディアの運営企業の責任を問う声が広がっている

この暴動の発端となったのは、7月29日にサウスポートのダンス教室で発生した集団刺傷事件だった。ダンスを習っていた子供たちが17歳の少年に刃物で襲われ、3人の少女が死亡した。この事件の犯人はウェールズ生まれの英国人だったのだが、SNSには「移民による犯行」というデマが流れた。犯人に関する誤情報は「シリアから来た亡命者」「昨年、船で英国に流れ着いた難民申請者」「イスラム過激派」など複数のパターンがあり、多くの著名な極右アカウントによって拡散された。

そして8月3日以降、英国の各地では極右の活動家による「不法移民への抗議活動」が次々と発生し、それは破壊活動、放火、投石などを伴う暴動へと発展した。キア・スターマー首相は「極右の蛮行」であると非難し、「抗議ではなく組織的な暴動」「英国の街にもオンラインにも、こんな場所があってはならない」「この暴力に加わった者には、あますところなく法の力が適用される」とコメントした。

スターマー首相は、ソーシャルメディアの運営企業に対して「暴力を煽動する行為を阻止する責任(暴力を煽るコンテンツを削除する責任)」について繰り返し警告を行ってきた。一方、イーロン・マスクは同首相の発言に「どうかしている(Insane)」とコメントした。ちなみにマスクは昨年、悪名高い英国の極右活動家のXアカウントを復活させている。
今回の英国の事件でイーロン・マスクは世界最強のオーナー・インフルエンサーとして、その影響力を発揮した。「内戦は避けられない」といった発言や、スターマー首相が抑留キャンプを計画という誤報の拡散など、ソーシャルメディア企業のオーナーとしての倫理と理性の限界を突破しようとしているかのようだ。

マスクの「内戦は避けられない」というコメントに対し、スターマー首相は「許されない発言」と怒りをあらわにした。この発言を問題視したのは同首相だけではなく、「この暴動はソーシャルメディアによって煽られたものであり、マスクは無責任だ」と批判する声も多い。

一方で、ソーシャルメディアだけが原因ではないという意見も挙がっている新聞や口コミを通して憎悪が広がることもあれば、一部の右派メディアや政治家による過激な発言にも、暴動を引き起こした責任の一端はあるだろう。とはいえ今回の暴動に関しては、移民や少数民族に対する憶測やデマがほぼ野放しとなっていた、あるいはインフルエンサーたちによって強調されていたことには疑いの余地がない。

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