TikTokでは中国政府への批判は抑制されているという調査結果
TikTokでは、中国政府を批判する(あるいは非難する)内容のコンテンツが他の競合サービスよりも表示されにくいことを非営利団体のNCRI(Network Contagion Research Institute)が報告した。「TikTokのアルゴリズムが、情報を意図的に抑制している可能性がある」と彼らは示唆している。
NCRIの研究者たちはTikTok、Instagram、YouTubeのそれぞれのプラットフォームで24の新しいアカウントを作成し、「天安門」「チベット」「ウイグル」等のキーワードで検索を行った。その結果、TikTokではInstagramやYouTubeよりもポジティブな(あるいは中立的な/無関係な)コンテンツの割合が多く、批判的な内容のコンテンツの割合が少なくなった。
たとえば「天安門」の検索結果の場合、TikTokでは約25%が親中的なコンテンツ(愛国的な歌、天安門広場の観光旅行のプロモーション動画、1989年の天安門事件には触れない風景画像など)だった。一方、Instagramでは16%、YouTubeでは約8%しか親中的なコンテンツが表示されなかったという。NCRIは「TikTokを利用する米国の若者たちが、中国の人権侵害に関する正確な情報を得られなくなる」という懸念を示している。
これに対し、TikTokの広報担当者は「新しいアカウントを作成し、特定のキーワードで検索するという手法は、実際のユーザー体験を反映するものではない」と主張しており、また「予め決まった結論へと導くために仕組まれた研究」だと批判している。
NCRIの研究者たちは、それぞれのキーワード検索で最初に表示された300件ほどの動画を閲覧したのち、それぞれの動画を「親中」「反中」「中立」「無関係」の四つに分類している。そこに主観が含まれることは彼らも認めており、「バイアスを最小限にする努力はしたが、解釈の違いの可能性はある」と自ら警告した。
TikTokが若年層から絶大な支持を受けている米国では、2024年4月にいわゆる「TikTok禁止法(The Protecting Americans from Foreign Adversary Controlled Applications Act)」が成立し、ByteDance社は事業売却か米国撤退かの二者択一を迫られることになった。この法案に対し、ByteDanceは「憲法修正第1条(国民の表現の自由、言論の自由を保障する)の侵害」にあたると主張し、異議申し立てを行っている。
そして現在、TikTokを「国家安全保障上の脅威」とみなす米国の政治家たちは、今回のNCRIによる研究結果を盛んに引用している。それはTikTok禁止法に関する議論に影響を与える可能性があるだろう。