テックに強い過激な白人至上主義者グロイバー軍団
WIREDが8月22日の記事で「グロイバー軍団」(Groypers、あるいはGroyper Army)に関する詳細な記事を掲載した。ペペ・ザ・フロッグのミーム等を通して、ぼんやりとグロイバーを認識しているものの、どういった集団なのかはよく分かっていないという人も多いだろう。この機会に、彼らの特徴や現在の活動内容について簡単に説明したい。
グロイパー軍団とは?
グロイパー軍団は5年ほど前から活動している過激な白人至上主義者たちだ。もともとはホロコースト否定派として知られるニック・フェンテスと、彼の仲間「アメリカファースト」が主導していため、発生してからの数年間は、あくまでも「白人の米国」を理想として活動する人々だった。しかし昨今では、自国でフェンテスの戦略を模倣する米国以外の信奉者が集まっている(後述)。
メンバーの特徴
テクノロジーに精通した若年層のメンバーが多い。ヘイトスピーチにあふれたプラットフォーム(4chなど)でトロール行為をするZ世代の荒らし軍団、というイメージを持つ人も多いだろう。
グロイパー軍団の標的
彼らが標的としているのは左派だけではなく、むしろ「主流の右派」のほうを攻撃する傾向がある。過激な白人至上主義、反ユダヤ主義の彼らにとっては、トランプの支持組織(Turning Point USA、CPAC、Daily Wireなど)も手ぬるい右派でしかない。つまり「真のアメリカ・ファーストを目指している保守派ではない、倒すべき対象」となる。彼らは、それらの戦いを「グロイバー戦争」と呼んでいる。
国際的なメンバーたち
今回のWIREDが詳述したのは、米国以外で活動しているグロイバー軍団のメンバーたちの話題だった。本来のグロイバー軍団が目指していた「白人の米国」ではなく、自国でフェンテスの戦略を模倣している若者たちだ。ここでは二人だけ紹介したい。
〇キース・ウッズ(アイルランド)
自称「民族主義者/過激な反ユダヤ主義者」。長きにわたって差別的な活動をしてきたため、Twitterではアカウントを停止されていたが、イーロン・マスクが(Xで)白人至上主義者たちの複数のアカウントを復活させたため、現在のウッズのアカウントは20万人のフォロワーを誇っている。
「ユダヤ人こそが諸悪の原因」と訴えるウッズは、ユダヤ人に関する非人道的なコンテンツを公開したり、ホロコーストを軽視する発言を行ったりしてきた。現在のウッズは「アイルランドにいる非白人の移民を追放するべきだ」というスローガンを掲げて活動している。
ガザに関するイスラエル政府の対応、およびパレスチナの民間人への残虐行為を、あえて「ユダヤ人全体の問題」とするような発言を行うのはグロイバー軍団の典型的な活動だが、ウッズは「#BanTheADL」というハッシュタグを発案/推進したことにより、彼らの間でも知られる存在となった。
ADL(名誉毀損防止同盟)とは反ユダヤ的なヘイトスピーチの監視を行っている米国最大のユダヤ系団体で、「#BanTheADL」は彼らをTwitter(現X)から追放するよう訴えるものだ(ちなみにイーロン・マスクは、ウッズのツイートに「いいね」や返信をし、このキャンペーンを拡散した)。現在のウッズはフエンテス主催の様々なイベントに参加しながら、各国で知られているネオナチや白人至上主義者たちとも密接な関係を築いている。
〇タイラー・ラッセル(カナダ)
カナダの極右活動家で、グロイバー軍団に大きな影響を与えている。「ラッセルレポート」というコンテンツで有名になったが、その内容があまりにも偏見に満ちていたため、彼の通っていたライアーソン大学では、ラッセルの退学を求める学生たちが嘆願書を提出するほどだった(ちなみに彼は、このコンテンツを理由に仕事を失っている)。
彼はフエンテスを倣った「カナダ・ファースト」の運動を推進しており、カナダの若い白人男性を過激化させるべくインターネットで活動している。もちろん彼も反ユダヤ主義者であることを公にしており、ユダヤに関する様々な陰謀論を拡散している。また彼は2021年9月、PPCのメンバーと共に、ジャスティン・トルドー(カナダ首相)のイベントを妨害するために投石を行っている。