SNSで行政の透明性を実現する3つのモデル オランダの調査から

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行政のSNS利用によって透明性が高まることが期待されているものの、その方法論はあまり整理されているわけではない。Julián Villodreの「A three-model approach to understand social media- mediated transparency in public administrations」はオランダの行政機関(市議会)に対する定性調査で3つのアプローチを整理した。行政組織や、文化風土は異なるものの、参考になりそうだ。

目次

行政SNS 5つのアフォーダンス

行政機関のSNS利用は透明性の向上が期待されているものの、期待の内容にはバリエーションがある。論文ではそのバリエーションをアフォーダンスで分類し、下図のように整理している。

Visibility(可視性)は、情報共有と市民の要望を共有して透明性を向上させる一方、偽・誤情報の拡散につながる可能性もある。 Interactivity(双方向性)は、行政と市民が話し合いを通じて透明性を高め、新しいアイデアを生み出し、民主主義にプラスの効果をもたらす可能性がある。一方、Collaborative Ability(コラボレーション能力)は、知識の交換を可能にすることで同様の効果が期待できる。
Communicability(コミュニケーション性)は、表現方法や、動画や画像などのコンテンツを通じて、政府が国民とつながる方法を変化させる可能性がある。
Aonymity(匿名性)は、交流の促進に有用であるものの、悪影響を及ぼす可能性がある。行政機関にSNSはに対して特別な権限をを持っていないため、匿名性には注意が必要である。

行政SNS 3つのモデル 期待される市民主体のプロアクティブ・モデル

論文では3つのモデルにまとめている。

1.保証人モデル(Guarantor model)
行政機関は情報提供者であり、市民は情報の受信者という位置づけに基づくモデルで、市民はSNSを通じて手軽に行政の情報にアクセスできるようになり、透明性の向上につながる。このモデルは、SNSが必ずしも公平中立ではないことと、行政機関を守ることを重視している。

2.会話モデル(Conversational model)
行政機関はSNSを通じて市民と会話できるので、自由に質問、意見の表明を行うことができる。透明性を高める一方で、否定的な市民の発言や機密度の高い情報の要求などにも直面することになる。多様な市民との会話に対応するには行政機関内全体で取り組み必要がある。
透明性をより高めることができる一方、匿名性を悪用し、否定的な発言を容易に行える問題もある。また、市民に対応するための要因の確保も課題となる。

3.プロアクティブモデル(Proactive model)
保証人モデルが行政主体、会話モデルが行政と市民の双方が主体になるアプローチであったのに対して、プロアクティブモデルは市民主体のアプローチとなっている。SNSの書き込みなどをモニタリングして、テーマを特定し、対応が必要な市民に必要としている情報などを届ける。プロアクティブモデルを採用している行政機関は機能別の組織からテーマ別に組織を編組して対応している。
誰がなんのためになにをしているかということがわかるという点で透明性は非常に高いものの、市民の監視という側面もあるため運用には注意が必要だ。

一般的に行政のSNS利用では受動的=保証人モデルを想定することが多く、じゃっかん会話モデルまで想像するくらいまでであるが、行政機関の透明性向上のためのアプローチは一般に想像されるよりもかなり広く、多様であることがこの調査でわかった。
重要なことは透明性モデルは単独で成立するのではなく、行政機関全体の戦略に基づいて決定されなければならない点だ。

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