インドネシアの選挙法改正案と抗議デモ 声をあげるVtuberたち
インドネシアの議会が起草した選挙法改正案が物議を醸しており、これに反発する市民がジャカルタやその他の都市で大規模な抗議デモを行った。
この選挙法改正案には、地方選挙における候補者の年齢制限の変更や、候補者指名に必要な政党の得票率の変更などが盛り込まれている。この改正案が可決された場合、現インドネシア大統領ジョコ・ウィドドの息子が地方選挙に立候補できるようになり、さらに政府の批判者として人気の高い実力者、ジャカルタ首都特別州知事アニス・バスウェダンは立候補できなくなる。
つまり、現大統領や与党連合にとって有利な現状が維持できるということになる。法律の専門家たちは、この改正案が憲法裁判所の判決に違反した権力集中の試みであり、インドネシアの民主主義に対する重大な脅威だと批判している。
2024年8月22日には、スマラン市議会議事堂の周辺に1000人以上のデモ参加者が集まって投石や放火を行い、鉄柵の一部を破壊した。当局が催涙ガスと放水銃を利用したことで、暴徒は一時的に後退したが、多くの市民が拘束され負傷者も発生した。この改正案に抗議する大規模なデモは、他の複数の都市でも行われている。
世論の批判の声の高まりを受けて、議会は選挙法改正案の審議を延期した。つまり、とりあえず今回の選挙には変更が加えられない。しかし次回の議会で、この改正案が再び審議される可能性は残されている。多くの人々は、この一連の動きが「1998年のスハルト失脚以来、インドネシアの民主主義にとって最も深刻な場面」だと主張している。
現在のインドネシアでは、これまで政治の話題に関わらなかった著名人やインフルエンサー、普段はゲームなどのコンテンツで人気を集めているVtuber(Gema GathikaやOnShannonなど)、さらには一般企業までもが唐突に政治的な発言をはじめており(曖昧な表現になることも多い)、事情を知らない国外のファンが困惑するといった現象が見られている。インドネシアの政治状況が、それだけ重要な転換点を迎えていることの現れだろう。