グローバルサウスに広がる極右のオンライン脅威

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ネオナチの衣装で5人を刺傷する様子を動画プラットフォームとゲーム配信プラットフォームでリアルタイム配信

欧米民主主義国で台頭している極右勢力だが、グローバルサウスでも同様に増加していることをソウファンセンターが8月30日に報じている。記事によれば、トルコ、チュニジア、ブラジル、南アフリカ、インドなどで顕著に見られるという。
8月中旬、トルコでは18歳の青年がネオナチのシンボルと装備を身に着け、5人を刺傷する様子を動画プラットフォームとゲーム配信プラットフォームでライブ配信するという衝撃的な事件が起きた。

グローバルサウスの極右の2つの特徴

グローバルサウスの極右で特筆すべき点は、下記の2点だ。

1.加速主義、ネオナチズム、白人至上主義など、極右の複数のイデオロギーが混合している
2.SNSプラットフォーム、動画配信、ゲーム配信を横断して拡散している

加速主義、ネオナチズム、白人至上主義など、極右の複数のイデオロギー混合と、時流に合わせて変化する主張は近年の反体制に共通する特徴だ。他の記事でも触れたことがあるが、現在の反主流派、反体制を支持する人々は特定の思想や主張に固執せず、その時々によって変わっていく。ISDが2023年に行ったアイルランドの反体制情報エコシステムに関する包括的な調査では、それが端的に現れている。反体制を支持する人びとは次々と主張を変えていた。

コロナは誤報と偽情報拡大のきっかけとなった。コロナ関連の偽・誤情報の規制が強化されると、誤報や偽情報のエコシステムの中心は、すぐに他のトピックスに移った。2022年の初めから健康に関する話題が急速に減少、ウクライナに関する話題が中心となり、2023年初頭には移民問題やLGBTQ+に関する話題が主流となった。
「ISDの一連の報告書は情報のエコシステムの包括的調査だった」より引用

変わらないのは反主流派、反体制という点だ。ただ、トランプが大統領になっても、反主流派、反体制というは少しおかしいので、反欧米価値感とか、反リベラルあるいは反エリートなどの呼び方の方がしっくりくるかもしれない。

こうした活動を行うのは小規模なグループあるいは個人だが、個人であっても急進的なエコシステムや極右過激派のネットで関わり、影響を受けているため、すべてをひとりで考え、行動しているわけではない。また、他の極右テロリストについて発言することもよくあり、過去のテロリストを参考にしていることを示している。

「難易度」、「ポイント」 犯行声明はゲーム解説になっていた

複数のSNSや動画プラットフォームを横断しての拡散はよく見られることだが、ここにゲームが加わった。冒頭で書いたようにゲーム配信プラットフォームで犯行をリアルタイム配信していたのだが、犯行声明ではテロ行為の「難易度」、被害者数などによる「ポイント」について解説していた。

その他の国たとえばブラジルでは、極右のデモ隊が2023年、ボルソナロ前大統領の選挙敗北を受けて政府庁舎や施設に押し寄せた事件や、南アフリカでのアパルトヘイトや少数派支配の歴史に端を発する陰謀論が、白人の不安を煽るために利用されている。

前回のランチウェビナーでご紹介した自発的な市民活動(VCs)は、民主主義を破壊する側、守る側の双方に広がっており、重要な役割を果たすようになってきている。ロシアなどの権威主義国は民主主義国の中にいる過激なVCsを扇動し、戦力的に活用している。
守る側のVCsは自発的に偽・誤情報の抑止を行ってきていた。たとえば政府やメディアは、福島県沖地震後に発生した「井戸に毒」などのデマを大きく取り上げたが、実際には安全情報やデマを抑止する発言の方が多かったことがわかっている。コロナの際には、少数の一般人の拡散力が大きな影響力を持っていた先日の英暴動でもHOPE not hateなどの反ファシスト市民団体が暴徒が現れそうな場所を共有し、暴動を抑えるために現場に向かっていた。
反体制活動や海外からの干渉に対抗するためには、民主主義国におけるVCsの拡大と連携、そして行政によるプロアクティブな関与が必要だ。

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