米CISAが偽・誤情報対策を信用できる情報へのアクセス確保に変更
米のサイバーセキュリティの重要機関であり、選挙における偽・誤情報対策も担っているCISA(サイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁)は、これまでのような「もぐら叩き」的な偽・誤情報対策を見直し、信頼できる情報を伝えることにより力を注ぐように変更していた。この変更はCISA長官および同庁のケイト・コンリーの発言によって明らかになった。
2024年6月18日にSemaforが主催したサイバーセキュリティのイベントで、ケイト・コンリーは「2024年の選挙のサイバーセキュリティはかつてないほど堅牢」とした。デジタル影響工作による脅威はSNSが多様化し、増加していることにより、これまでの「もぐら叩き」的対処の有効性が薄れていると指摘し、これからは信頼できる情報へのアクセスを確保することに注力する、と語ったことがRecorded Futureの記事に掲載されている。この発言の背景には、米政府機関がSNSプラットフォームに干渉したことが憲法違反に当たるという裁判が最高裁で争われたこともある。最終的に憲法違反とは言えないという判決が出たものの、米政府機関はSNSプラットフォームに頻繁に削除要請を出すことをしにくくなった。
また、CISA長官は最近行われたプレス向けブリーフィングの中で、SNSプラットフォームに削除要請を出すことはないと明言した。CyberScoopの記事によると、ケイト・コンリーは、有権者に選挙情報の正確な情報源や信頼できる情報源を提示することに重点を置いていると語った。
CISAの方針変更の背景には偽・誤情報対策へのバッシングによって、政府機関がSNSプラットフォームへの関与に慎重になったことがあるとはいえ、SNSプラットフォームの多様化と、プラットフォームを横断する拡散などによって従来の対症療法の有効性が薄くなってきたことは確かだろう。
CISAの言う効果とは「発言の削除」を指すことと思われるが、発言を削除することが偽・誤情報の影響を減少させるとは限らないうえ、偽・誤情報の脅威をアナウンスして削除することは、パーセプション・ハッキング(偽・誤情報を暴露することで情報不信を招く)の効果を増大させる。これまで効果が検証されておらず、逆効果の可能性もあったものが、廃止されて新しい試みが行われていることはよい兆候と言える。もちろん、その効果の検証がなければ前と同じ轍を踏むことになるのだが。