米NewsGuardコメンタリーが指摘するロシアの雇われバカと役に立つバカ、ただのバカ
NewsGuard社は自社のプロモーションにつながる「正論」をたびたび公開しており、今回のコメンタリーもそのひとつだ。
最初に種明かししてしまうと、雇われバカとは先日米司法省に訴追されたTenet Mediaの経営者ふたりと大金の報酬を受け取って協力したインフルエンサーたちだ。インフルエンサーたちはロシアからの金だと知らなかったと主張しているが、その通りならバカだ。ここでNewsGuardの信頼スコアを確認すれば、こういう質の低いインフルエンサーはすぐにわかる、とちゃっかり宣伝を入れている。
一方、役に立つバカとは、そういう連中のコンテンツを掲載していたSNSプラットフォームのことだ。彼らはプロパガンダだろうが、なんだろうが、広告収入に結びつくものならなんでもいいのだ。プロパガンダを流したいロシアからすれば格好の役に立つバカということになる。役に立つバカは、ロシア、中国、イランの偽情報を広める何千ものWEBサイトの記事やSNSへの投稿を世界中に拡散している。SNSプラットフォームは、中露イランなどの代理人として、プロパガンダや偽・誤情報を拡散する役に立つバカとして莫大な利益を得ているのだ。
このコメンタリーは正論ではあるものの、資本主義国の民間企業が利益を追求するのは当然のことで、問題がある行為には法的規制を課す必要がある。根本的な問題は米国でがもはや巨大資本に対して社会的規範を強制することができなくなっていることだろう。法規制を中心とした抑制策が抑制されている。その理由についてはさまざまなことが考えられそうだが、このコメンタリーのようにとりあえずSNSプラットフォームを悪役にしておくことは主流メディアの常套手段で、コメンタリーを執筆したのは元主流メディアの人物だ。「主流メディアは、一貫して誤・偽情報を議論する際の主な悪役としてSNSを取り上げる」傾向があることが調査によってわかっているのだ。
根本的な原因は、米社会が世界に中露イランなど権威主義国のプロパガンダや極右、陰謀論をふりまく反体制派の発信基地となっていることだろう。米国資本のSNSプラットフォーム経由での発信もそうだが、Telegramなどそれ以外のプラットフォームにも広がっている。さらに極右やQAnonなどの陰謀論は各国にリアルの組織もできている。もし、これが米国でなかったら、米国は国際社会のさまざまな局面で激しく非難しただろう。権威主義国だったら、制裁措置を発動していた可能性は高い。いま、他の国が非難しないのは米国発だからにすぎない。
この状況を知っていればSNSプラットフォームをやり玉にあげても仕方がないことはすぐにわかる。この観点に立つと、ロシアの役に立つバカは、アメリカ社会そのものということになり、今回のようなコメンタリーもほんとうの役に立つバカを覆い隠してくれる役に立つバカのコメンタリーということになる。いや、本人の自覚がないからただのバカなのかもしれない。