TikTokとメッセージアプリで拡大する10代の分散型テロリスト

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増加する10代のテロリスト

ミュンヘンでライフルを発砲した後に射殺されたイスラム過激派のオーストリア人少年は、地元のモスクにほとんど通っておらず、ひげを生やしたり、長いガウンを着たりすることもなかった。オーストラリアで司教を刺した16歳、チューリッヒでユダヤ人男性を刺した15歳、テイラー・スウィフトのコンサート襲撃を計画した3人の10代の若者、ウルグアイで「ローン・ウルフ」のテロリストとしてオンライン上で発言して逮捕され14歳の少年、スイスではソーシャルメディア上で過激派メッセージを拡散して11歳の少年が逮捕された。各地で10代によるイスラム過激派テロが相次いで発生している。その多くはイスラム過激派とリアルに接点を持たず、ネットで感化されている。

The Washington Institute for Near East Policy のレポートによれば、2023年3月から2024年3月の間に、イスラム過激派組織イスラム国(IS)に関連する470件の事件が発生し、そのうち少なくとも30件には10代の若者や未成年者が関与していた。もっとも多かったのはトルコ(80件)で、次いでインド(29件)、ドイツ(26件)、ロシア(20件)と続く。多くの事件で年齢データが公開されていないため、実際には10代の犯行はもっと多いと考えられている。最近のIS関連の27の事例研究では、欧州での逮捕者のほぼ3分の2が10代の若者だったことが明らかになっている。
また、2023年10月7日以降、西ヨーロッパを標的とするテロは4倍に増加したとDeutsche Welle誌は伝えている10代の若者を中心としたイスラム過激派によるテロが世界各地で増加しているのだ。同誌はその後の記事で、ISが「ローン・ウルフ」としてヨーロッパで行われるオリンピックやサッカーの試合など大規模イベントでテロを行うよう呼びかけていることを伝えた。

勝手に生まれるテロリストのコミュニティ

これまでと異なるのはISのメッセージをSNSなどで受け取った若者がISに参加するのではなく、独自にコミュニティを作って(あるいはひとりで)、活動している点だとISDの専門家は分析する。そして、その動機は「憧れ」であり、「クールなジハード」という美的意識が働いている。そして、ネット上でより過激になってゆく速度は従来よりもずっと速くなっているという。ネットで感化され、SNSで強化され、メッセージアプリで過激な行動へと走る。

極右とジハーディストの対立が相互の過激化を加速する

極右が反イスラム活動を行うほど、ISに憧れる若者は反発を強めて行動を起こす。ジハーディストが騒ぎを起こせば、極右も反イスラムの発言や活動を強める、という悪しき連鎖が2023年10月7日以降続いている。互いに憎しみ会うことが、互いの結びつきを強化し、新しい仲間を増やし、より過激になっている。

INODS UNVEIL で紹介したようにTikTokはこうした過激なグループを育む場として最適の環境を提供している。一部で「TikTokテロリスト」という呼ばれているのも道理である。
いまのところ、日本にとっては対岸の火事だが、日本でも多くの若者がTikTokを利用しており、問題のある内容の動画は決して少なくない。一度、過激な動きが出ればあっという間に加速し、現実社会を脅かす可能性もある。

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