マイクロソフトMTACのレポートは、偽・誤情報の「戦場の霧」で迷走

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MTAC(Microsoft Threat Analysis Center)は2024年9月17日、「Russia leverages cyber proxies and Volga Flood assets in expansive influence efforts」と題するレポートを公開した。

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ロシアのデジタル影響工作の変化

レポートでは、米国国民にリーチするロシアの方法に変化が現れたことを指摘している。

・ロシアの3つのアクター、Storm-1516、ドッペルゲンガー、Storm-1679のすべて民主党候補への攻撃を行うようになった。Storm-1516は8月下旬から9月上旬にかけて変化し、Storm-1679は9月初旬、

・並行してロシアのプロキシである、NoName057やRaHDitなど6つのグループがサイバー攻撃を行っている。

オペレーション・オーバーロードの分析と一致 しかし解釈は異なる

他の記事で紹介したようにロシアのオペレーション・オーバーロードはパリ・オリンピック終了後に米大統領選に焦点を移している。MTACのロシアが米大統領選にシフトしたという指摘と一致している。ただし、その狙いの解釈にはじゃっかん違いがある。

オペレーション・オーバーロードの目的は、自ら撒いた偽・誤情報をファクトチェック団体、メディア、研究者に報告することで、関係機関の負荷を高めると同時にさらなる拡散を図ることにある。MTACの今回の発表はオペレーション・オーバーロードの狙い通りにマイクロソフトが反応したということになる

Metaの2024年第2四半期脅威レポートの指摘はMTACがパーセプション・ハッキングに利用されている可能性を示唆

Metaは2024年第2四半期脅威レポートの中でロシアのドッペルゲンガーはパーセプション・ハッキングである可能性を指摘している。パーセプション・ハッキングは、そのデジタル影響工作が暴露されることによって、情報そのものへの不信感を煽る作戦だ。パーセプション・ハッキングを回避するためには、脅威を煽ることは好ましくない。この点でMTACのレポートはロシアの作戦の内容を分析し、脅威であることを指摘しているが、根拠となる影響や被害に関するデータは示されていない。悪影響や実害が確認されていないものを脅威として発表するのは、パーセプション・ハッキングを狙うロシアの思う壺である。

偽・誤情報、デジタル影響工作、認知戦は第2ステージに移っている。このステージで、中露イランなどは欧米の対処パターンを知っており、その裏をかいたり、逆に対処を利用して効果をあげることを狙っている。さらに、相手国の国内の市民を活用することで総合的な対処を困難にし、実態を見えなくしている。
偽・誤情報、デジタル影響工作、認知戦において、意図や目的をかくして相手国に混乱をもたらす作戦の全体像を把握することは困難であり、国内問題との切り分けも難しい。そのため目の前に見えるわかりやすいドッペルゲンガーのような作戦に飛びついてしまう。新しい時代の「戦場の霧」と言ってよいかもしれない。
MTACはいまだに「戦場の霧」の中でさまよっているようだ。Metaやオペレーション・オーバーロードをレポートしたフィンランドのCheck Firstは霧から抜けつつあるのだろう。

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