Facebookに選挙広告を掲載できる偽IDのアカウント世界中でセール中

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The Tech Transparency Project(TTP)が9月18日に掲載した記事によると、Facebookで選挙広告を掲載できる偽IDのアカウントが世界中で売買されているという。Metaは、Facebookのアカウントの売買も虚偽の登録も禁止しており、さらに2016年以降は政治/選挙に対する公平性を強調してきた。このような取引がMetaのポリシーに違反していることは明白だ。

目次

ここまでのおさらい

米国で大統領選の選挙活動が行われた2016年、ロシアの工作員がFacebookで盗用したIDを使い、トランプを宣伝しながら、米国内での政治的な対立を煽り立てる広告を掲載しているという問題が持ち上がった。

この問題を受けたFacebookは、信頼性を向上させるための対策として「社会/選挙/政治に関する広告を掲載するアカウントの管理者は、政府が発行するIDと居住地の郵送先住所を提出して承認を得なければならない」という新しいポリシーを導入した。これらの取り組みを通して、Metaは「選挙に対する公正さ」を約束すると述べていた。

TTPの発見の概要

しかしTTPは今回の記事で「社会/選挙/政治のカテゴリーで広告出稿を承認されたアカウント」が世界中で販売されている様子を報告した。Facebookのユーザーは、自分のIDや個人情報を提供してわざわざ承認を受けなくとも、このアカウントを購入するだけで広告の掲載ができるということになる。なにしろ偽の(架空の/盗用の)アカウントなので、自分のアカウントを汚さずにルール無用の選挙活動が可能だ。また世界中で売買できるので、国外からの内政干渉も簡単ということになるだろう。

TTPに確認された「現状」 日本のアカウントも売買

たとえばTTPは2024年6月、Facebookの公開グループ「A Community That Cares Pakistan Buy And Sell」で、米国と英国のアカウントが販売さているのを確認した。この売買を行っていたパキスタンのユーザーのアカウントは「トップ貢献者」のバッジをつけており、数千人、数万人規模のメンバーが参加する複数のFacebookグループに同じオファーを投稿していた。一部のグループのコメント欄には問い合わせが殺到し、売り手は「受信トレイを確認してください」と返信していた。

同じく2024年6月、TTPはベトナムのFacebookユーザーが米国のBM(ビジネスマネージャー)アカウントを販売しているのを確認した。つまり、そのアカウントを購入すれば米国で複数のページや広告キャンペーンを運営できる。現在、このユーザーが販売していたアカウントは「在庫切れ」と表示されており、すでに買い占められた可能性が高い。ちなみにアカウントの価格は11ドル〜18ドル程度と非常に安価だった。

「販売希望」ではなく「購入希望」の活動もある。米国の政治広告承認済みアカウントの購入を希望する投稿が公開グループに投稿され、ベトナム在住の売り手から複数の返信を受け取ったりする様子が確認されている。これらの売買を行っていたユーザーの一部は、やはりFacebookの「トップ貢献者」のバッジを持っていた。

他にもTTPは、複数の国で同様の活動が行われたのを報告している。日本も他人事ではない。2024年5月には「Facebook Ads Experts Community」というグループのユーザーが「政治広告を配信できる承認済みのFacebookアカウントを必要としている」というメッセージを投稿しており、このユーザーは2024年9月に「日本と米国の古いアカウントを大量に」求めていると記した。この投稿に対しては複数のユーザーが「販売可能」の返信をしている。
なお同様に「日本と米国の古いアカウントを大量に」求めていた個人ユーザーの投稿は、他のグループでも確認されている。

Metaの対応不足

このような取引はMetaのポリシーに何重にも違反する。不正な政治広告の掲載以前に、Metaはアカウントの売買も、虚偽申請によるアカウントの取得も禁止している。そしてMetaは政治広告に関する新たなポリシーを導入して「選挙に対する公正さ」を約束している。
しかしMetaが提供するFacebookでは世界規模で、「トップ貢献者」のバッジをつけたユーザーたちが、多くのメンバーが集まる場所で、違反行為を摘発されることもないまま「誰でもポリシーから逃れて政治広告を掲載できる抜け穴」を盛んに販売しているようだ。

TTPの結論

TTPによれば「こういった闇市場は新しい現象ではない」「Facebookは長年にわたり、偽造/盗用のアカウント、ID、その他の文書を活発に取引するグループを容認してきた」という。

そして2024年の米国大統領選挙が近づいている現在、米国では海外からの内政干渉や、誤情報の拡散が懸念されている。Facebook上で公然と行われている違法なアカウント売買の取引をFacebookが積極的に摘発して厳しく取り締まらないかぎり、米国の選挙への介入も(国内・国外の両方から)可能になるだろう。TTPは、そのリスクを指摘している。

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