世界でもっとも有名な情報源評価データベースのNewsGuardのDBを検証した論文

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偽・誤情報の追跡に当たって有効なアプローチのひとつは情報源の信頼性評価である。世界中の莫大な情報源を評価したデータベースを持つのがNewsGuard社だ。2024年9月19日に公開された論文「Best practices for source-based research on misinformation and news trustworthiness」は、NewsGuardのデータベースのデータベースについて、評価の安定性、完全性、有用性ついて調査を行っている。

NewsGuardのデータベースは偽・誤情報の早期の検知や予防、あるいはAIの学習元のリスト、ブラウザに組み込んでWEBサイトの信頼性を確認できるようにするなどさまざな用途に用いられている。このデータベースのために同社は偽・誤情報のモニタリングも行っており、その結果を高頻度で公開していることは以前ご紹介した。

目次

NewsGuardのデータベースから見えてくる全体傾向

NewsGuard の信頼性スコアは、9つのジャーナリズム基準に基づいて0から100の間で評価されている。現状、データベースに含まれる情報源の約60%は信頼できる(誤解を招く見出しをつけておらず81.3%、虚偽もしくは誤解を招くコンテンツを繰り返し掲載していない81.2%)
信頼度の平均は時間とともに減少している(2019年71.8から2024年63.6)。これは信頼できる情報源の信頼度が下げるのではなく、信頼できない情報源の収録数が増えたことが主たる原因となっている。データベースは2019年の2,375から12,288、およそ4倍に増加しており、増加分には信頼できない情報源も多く含まれていた。特に2020年のコロナ禍では信頼できない情報源が増大した。

NewsGuardデータベースの安定性、完全性、有用性

NewsGuardのデータベースは時間の結果によっても大きく変化することはなく、安定していることがわかった。情報源の更新は1年に1回大きく更新される他、WEBサイトの売買、透明性の変更などに伴い不定期的に変更される。
また、NewsGuardのデータベースの76.1%はアメリカであり、次いで多いのはイギリス5.2%となっている。言語では英語が86.9%を占めている。アメリカの信頼性スコアは低いが、これが多数の情報源を収録しているため信頼性の低いものも多く含まれているためのかはわからない。国ごとのメディアシステムやジャーナリズムのあり方によっても異なってくる可能性がある。
NewsGuardのデータベースは政治的な指向についてのラベルもあるが、ラベルがつけられているのはアメリカで41%、他の国では10%と少ない。このラベル付けについてNewsGuardのデータベースは特に偏った付け方はしていないようだ。

NewsGuardのデータベースは有用であるが、アメリカ以外の国の収録数が少ないことや、ラベルがあまり付されていないことなど制限もある。また、実際の利用では代替的なデータとの付き合わせも必要だろう。

日本ではなぜか全く話題にでない情報源データベース

論文に書かれている情報源データベースは偽・誤情報追跡の一般的かつ効果的な方法のひとつであり、他のアプローチと異なり、信頼できる情報源も同時にわかるようになっている。ほとんどの国において、偽・誤情報よりも信頼できる情報の方が多い以上、偽・誤情報のみに焦点を当てた対策は非効率的であることは明らかだ。これは以前、論文のレビューでも紹介された通りだ。

放置すればNewsGuardのような外資系が日本の情報源の信頼性スコアを出すようになる。間接的に日本における「真実の裁定者」のような存在になるのだ。経済、文化、安全保障などさまざまな面で問題が大きい。常に後手に回っている日本の情報政策であるが、今回もまた大きく後手に回りそうだ。

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