米に蔓延する警戒主義を象徴するアドビ社の大統領選と偽・誤情報についてのレポート

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アドビ社は米国の消費者が大統領選を前に強力な偽・誤情報対策を求めているというレポートを2024年9月18日に公開した。同社が行った2,000人を対象とした調査結果をまとめたもので、露骨に警戒主義の悪化を示すものとなっている。警戒主義とは過度に偽・誤情報を警戒することであらゆる情報に疑いを持つようになり、民主主義への不満を募らせるようになることを指し、偽・誤情報の脅威を過度に強調することで引き起こされる。米国はメディアや政府が過度に偽・誤情報について情報発信することで警戒主義に陥っている

アドビ社の調査回答者の44%が最近、偽・誤情報を信じたり、混乱させられたことがあると回答し、83%は偽・誤情報が選挙を前にして増加したと感じ、94%は選挙への影響を懸念している。
デジタルメコンテンツへの信頼が低下し、74%が評価の高いニュースメディアのコンテンツを疑った経験があると回答している。
89%はSNSプラットフォームはより厳しい偽・誤情報対策を行うべきと考えており、74%は政府の偽・誤情報対策を不十分と感じている。

米国市民が偽・誤情報に遭遇する確率については、さまざまな数字があるが、多くても数パーセントであり、よく引用される論文では0.15%となっている。しかし、2016~2018年には、メディアの見出しの91%が「Fake news」という用語を使用していた。2019~2022年には、見出しの80%が「misinformation」に言及していたのだ(前掲記事)。
また、それらの実際の影響については未検証に近い状態となっている。そのため調査回答者たちが選挙への影響を懸念しているのは、明確にメディアと政府発表の影響と言える。過去の研究からSNSプラットフォームに偽・誤情報対策を求めるのもメディアの影響の可能性が高い。
デジタルメディアへの不信や政府への不満は典型的な警戒主義の現れだ。

アドビ社のレポートは、米国に警戒主義が蔓延していることを端的に示す結果であると同時に、このレポートも警戒主義を加速する内容となっている。

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