ロシアのドッペルゲンガー実施企業Social Design Agencyの2.4GB漏洩文書

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2024年9月上旬、ロシアのデジタル影響工作ドッペルゲンガーについて、2つの大きな動きがあった。ひとつは米司法省などによる暴露と、Süddeutsche Zeitungによる漏洩文書に基づく暴露記事だ。
前者は米諜報機関が入手したドッペルゲンガー実行部隊であるSocial Design Agency(SDA)の内部文書などを含み、後者は2.4GB、3,000以上のSDA内部文書を含んでいた。なぜか後者はあまり注目されなかった。

後者に関する情報はドイツのいくつかのメディアに掲載されたものの、莫大すぎてそれぞれフォーカスする場所が異なっており、全体像が明らかになるには時間がかかりそうだ。
SDAはロシアのデジタル影響工作の実行部隊であり、漏洩文書の中にはロシア政府関係者とのやりとりなどの文書も含まれていたため、彼らがなにを目的として活動していたか、効果をどのように評価していたかがわかる。

2024年9月30日にForeign Affairsにデジタル影響工作の専門家が寄稿した記事は、SDAの目的などに注目した興味深い内容となっていた。

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SDAの目的はロシア政府との契約と予算獲得

記事によるとSDAはドッペルゲンガーなどの成功をアピールし、次の契約とより多くの予算を獲得することを優先していたと指摘している。効果測定をSNSでの拡散などにした場合、思うような数字を達成できないため、SDAが用いた効果測定方法は、ターゲット国の政府、メディア、SNSプラットフォーム、シンクタンクなどの注目度だった。SDAは「『西側諸国』の国々は、このプロジェクトの有効性について深刻な懸念を抱いている」ことを成果として誇っている
Metaが2024年第2四半期の脅威レポートで、ドッペルゲンガーがパーセプション・ハッキングである可能性を指摘していたのは、(動機は異なるものの結果として)正しかったようだ

ターゲット政府とメディアの対応がドッペルゲンガーを拡大させた

ドッペルゲンガーはその活動が暴露されたからこそ、キャンペーンを継続することができたのだ。このことはデジタル影響工作キャンペーンの報道の欠陥を示している。報道することで、デジタル影響工作に影響力があるかのように見せかける証拠を提供することになり、デジタル影響工作のマーケットを拡大してしまう
現在、デジタル影響工作を暴くことは、それ自体がひとつの産業となっている。数十の非営利団体や営利団体が、どんな小さなデジタル影響工作であろうと、できるだけ派手に暴露している。しかし、このような表面的な暴露は、逆効果になっている。
メディアやファクトチェック団体をターゲットにしたオペレーション・オーバーロードは、まさに暴露したい側と、暴露されたい側の需要と供給が一致したwinwinの作戦だったと言える。

では対策は?

記事では作戦実施前の上流で食い止めることや、ほとんどあるいはまったく影響のないありふれた影響工作に関する報道、あるいはその影響を誇張する報道を控えることを提案している。
偽・誤情報対策、デジタル影響工作対策などが見直しの時期に入っていることを何度かお伝えしたが、この記事もその流れの中にあるもので、攻撃側実行者の目的という貴重な情報に基づくものとなっており、参考になる
日本では見直しの動きは見られず、効果のない作戦でも大々的に報道するという攻撃側を喜ばすような展開となっている。まだしばらくは格好の狩り場になりそうだ。

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