オーストリアの極右政党の歴史的な勝利の背景
2024年9月29日、オーストリアで行われた国民議会(下院)選挙では、極右の自由党(FPÖ)が過去最大の勝利を収めた。ハーバート・キクル率いるFPÖは現在、かつてない人気を誇っており、その過激さも増している。
このFPÖの成功は、ドイツやフランスを含めた欧州全体の極右から祝福されている。つまり彼らの極端なイデオロギーや陰謀神話、あるいは極端な政策やスローガン(特に白人ナショナリストたちが主張する「再移住」など)が国際化され、正常化されたのだと彼らは見なしている。今回の選挙結果は、極右の台頭を示す重要な出来事として国際的に注目されるものだ。
FPÖが利用したのは、移民やインフレ、ウクライナ紛争などに対するオーストリア国民の不安だった。彼らは様々な陰謀論、COVID-19懐疑論、気候変動否定論、反フェミニズム、反LGBTQ+などを取り入れながら、オルタナティブメディアやソーシャルメディアを効果的に活用してきた。9月30日のThe Guardianは次のように説明している。
「選挙が近づくにつれ、これらのメディアで虚偽の主張が連鎖反応的に広がった。たとえば『ディープ・ステート』がFPÖの勝利を奪おうとしている、あるいは中道政党が選挙後に強制ワクチン接種を再導入する計画をしている、という主張が流布された」
それらのメディアで、キクルは「気候共産主義」や「WHO独裁」などの用語を使い、多くの陰謀論者の間で支持を広げてきた。「EU、NATO、WHOに屈しないFPÖ」の首相になると約束しているキクルは、主流政党を支持する政治家や中道派の政治家を「Systempolitiker」と呼び、「Volksverrat(直訳:国民に対する反逆)」だと非難しているが、この二つはアドルフ・ヒトラーが使ったことで知られている言葉だ。
そしてThe Guardianは、このように述べている。
「極右ポピュリストたちは超国家主義を掲げているが、彼ら自身のネットワークは驚くほど国境を越えたものだ」
実際のところ、FPÖの思想の多くはフランス発祥である。特にFPÖが主張する「再移民」(remigration/移民、あるいは移民としての背景を持った人々を大量に国外追放するというスローガン)も、2014年にフランスで極右集会が開かれたのち、ソーシャルメディアで急速に広まったものだ。フランスやオーストリアだけではない。ドイツのAfD党も、9月1日に行われた地方選挙の活動の一環として「再移民」という言葉を使用しており、さらにドナルド・トランプも先日Xで、「不法移民」に関する投稿の中で「再移民」を呼びかけている。