米リベラルが発信している「プロジェクト2025」についての偽・誤情報
保守派や右派の支持者たちが、ソーシャルメディア等を通して過激な偽情報や誤情報を拡散するケースは世界中で数えきれないほど報告されている。しかしリベラル系の支持者たちも、やはり誤った主張を拡散している。
とりわけ保守系シンクタンクのヘリテージ財団による「プロジェクト2025」の話題では、その間違いが繰り返されやすくなっているようだ。今年の7月には、リベラル派のソーシャルメディアアカウントで「プロジェクト2025が米国気象局(NWS)の廃止を求めている」という誤情報が広く拡散された。
そして現在、米国ではハリケーン「ヘリーン」が猛威を振るっており、人的被害、経済的損失ともに深刻な状況となっている。2024年9月のへリーン上陸以降、被害が広がるにつれて、先の誤情報は再び注目を集めるようになった。9月27日にはリベラル派の政治活動委員会「Really American PAC」が、Xの公式アカウントで次のような投稿を行った。
「100年に一度のハリケーンによる壊滅的被害の動画を目にする機会が増えるいま、ドナルド・トランプのプロジェクト2025が国立気象局を廃止することについて言及しておくべきだ」。
実際のプロジェクト2025はNWSの廃止を求めておらず、「NWSの役割を一部変更して、予報業務の商業化を図るデータ収集サービスのほうへ重点を置くこと」を提案している。またヘリテージ財団の広報担当者も「プロジェクト2025はNWSの『廃止』を求めているわけではない」と明確に否定している。
しかし先述のPACの投稿は2024年9月30日までに2,200回リポストされ、123,000回閲覧された(現在は削除済み)。またNewsGuardの調査によると、2024年9月22日から30日の間、Xでは「米国気象局」と「プロジェクト2025」という言葉が75,200回言及された。
リベラル派は過去にも「プロジェクト2025」の内容を誤って拡散している。たとえば社会保障制度を廃止する、イスラム教徒の米国への入国を禁止する、女性に「生理パスポート」の所持を義務付けるなどだ。これらは全て事実でないことが判明している。
プロジェクト2025は、その過激な内容に多くの注目が集まっている。しかし文書があまりにも長いため(922ページ)、実際に読んだうえで批判している人は少ないだろう。また拡散された情報のファクトチェックにも時間がかかる。それはプロジェクト2025に関する誤情報が拡散されやすい理由のひとつかもしれない。
一方で保守派の一部は、ハリケーン「へリーン」が注目される中、へリーンが気象改変技術によって作られた、あるいはコントロールされたという陰謀論を拡散している。共和党下院議員マージョリー・テイラー・グリーンは2024年10月3日、Xで「彼らは天候をコントロールできる。それができないと嘘をつくのは誰にとっても馬鹿げた話だ」と投稿しており、それは1日で450万回閲覧され、2万1000件の「いいね」を獲得した。