巨大産業に成長した未検証がん治療とAmazon

がんと診断されたばかりの患者の多くが、治療に関する情報をオンラインで得ようとするのは非常に一般的だ。しかしそこで得られる情報は、どれほど科学的根拠に基づいているのだろうか?
カナダ癌学会の助成金を受けたカナダの研究者チームは現在、「癌に関する誤情報が、どのようにオンラインで拡散されるのか」を調査している。この研究チームの一員であり、アルバータ大学の健康法研究所およびカナダ健康法・政策研究部門のディレクターでもあるTimothy Caulfield法学教授は、アルバータ大学のウェブサイトに掲載された記事の中で「ひどいことになっている」と語った。
Caulfield教授によると、Amazonの検索結果のページには、誤った情報が掲載されている書籍や、明らかに間違った主張をしている書籍が溢れている。そして現在、癌に関する粗悪な「科学」は急速に拡大しており、「残念ながら『検証されていない癌治療』は巨大産業になっている」「信じられないほどの害をもたらす可能性がある」という。
Amazonは、当局の承認を受けていない医療効果の宣伝を禁止している。しかし研究チームの調査によれば、Amazonで「癌治療」を検索してヒットした書籍のタイトルのほぼ半分に、癌の治療や治癒に関する誤った情報、誤解を招きかねない主張が含まれていた。たとえば、新しい戦略や治療法で癌を治癒できると主張するもの、あるいは癌を単純化しすぎたり、従来の治療法を否定したりするものなどだ。
さらに悪いことに、これらの書籍は検索結果の上位に表示されやすく、最初のページでは約70%が怪しいタイトルの書籍に占められていた。多くの書籍は、それらが「科学に基づいている」という誤った主張をしており、またレビューで高評価を受けているものも多かった。彼の研究チームは、このような情報が人々の目に触れやすくなっている原因(たとえばAmazonの検索結果が表示される順番を決定するアルゴリズムなど)についても調査を続けている。
また同チームは、ソーシャルメディアやその他のプラットフォームで、癌治療がどのようにマーケティングされ、評価されているかも調査している。たとえば彼らは、著名な「癌の代替治療クリニック」47件について、Googleのリストとレビューを調査した。これらのクリニックは「代替医療である」と明記することがほとんどなく、またクリニックの評価は「5段階で平均4.5」という高評価に偏っていた。Googleのレビューは説得力のあるナラティブを提供しているが、それを医療上の意思決定に使用すべきではない、と研究者たちは述べている。
Caulfield教授によれば、COVID-19のパンデミックに起因する「ワクチン懐疑論」は、科学を貶めて疑念を煽ることにより、誤情報の拡散を加速させているという。彼はオンラインの情報環境が「偽りのバランス装置」だと表現している。それは科学的コンセンサスを歪めて伝える一方で、主流から大きく逸脱した未検証の見解を正当視し、どちらにも等しく注目を集めさせる。
つまり、未検証の(あるいは誤情報を含めた)見解が「不当に沈黙させられている」と主張することで、「表現の自由を求める声」が彼らを正当化してしまうのだと同教授は説明する。「これは二重の意味で嘘である。まず、そのような見解は決して沈黙させられていない。第二に、それらは調査された結果、誤りであることが証明されている」
「ワクチンであれ癌治療であれ、インチキ療法のマーケティング担当者たちは、科学への信頼を揺るがすために、ある程度の不確実性を生み出そうと試みている。そうすることで彼らのブランドや商品、つまり彼らの目的を達成するためのスペースができるからだ」と語る同教授は、その試みについて「残念ながら、うまくいっている」と評価した。
2024年10月10日、アルバータ大学のウェブサイトに掲載されたCaulfield教授の見解は、ここで読むことができる。また彼の所属する研究チームが発表したAmazonに関する研究論文は、ここで読むことができる。