異なるグループの考えがわかる、という思い込みについての調査

  • URLをコピーしました!

「自分とは異なるグループの人々」の考えや信念を想像する能力について、私たちは自信過剰に陥りやすいようだ──そんな結果を示す新しい検証が2024年10月11日、非営利メディアネットワーク「The Conversation」に掲載された。元の論文はこちら

目次

検証方法

この検証には256人の米国人(男性119名、女性137名。政治的見解は左派と右派がほぼ半数ずつ、平均年齢は45歳)が参加した。

研究者たちは参加者に対し、ひとつの意見を提示し、どの程度それに同意するかを尋ねた。次に、同じ質問をされた他の参加者の回答を提示した。たとえば「移民は社会に利益をもたらす」という意見に強く同意した参加者に、「移民は社会に全く利益をもたらさない」と答えた参加者の意見が提示された場合、その相手は「自分とは異なるグループの参加者」となる。自分と同様の回答をした参加者の意見が提示された場合、その相手は「自分と同じグループの参加者」となる。

このようにして、相手が自分とは反対の/あるいは同じ意見を持っていることを認識した上で、今度は「合法的な中絶は誰でも受けるべきである」「同性婚が合法化され、容認されるのは正しい」などのトピックについて、相手がどのように回答するかを予測させた。
(たとえば移民を歓迎している参加者が、移民を忌避する参加者の回答を予測する場合、「この人は中絶にも反対しており、同性婚にも反対しているはずだ」と考えるかもしれない)

研究者たちは、「同じグループ」「異なるグループ」の参加者に対し、さまざまな意見に関する相手の考えを予測させた。また参加者が相手の考えを予測するたび、その予測が正しいかどうかの確信の度合いを「まったく自信がない」から「非常に自信がある」までの尺度で示してもらった。

検証の結果

・多くの参加者たちは、自分の予測に高い自信を持っていた(平均で75%の確信度合い)。そして実際、自分と同じグループの参加者に対する予測は、比較的正確だった。
・しかし「自分と異なるグループの参加者」に対する予測は、60%以上の確率で間違っていた
・自分と同じグループの参加者の意見を予測したときは、その自信の度合いが高ければ高いほど、予測も正しくなるという傾向があった。
・しかし自分と異なるグループの参加者の意見を予測した場合は、その自信の度合いが高くなるほど、間違っている確率も高くなった。

つまり私たちは、実際よりも盛大に「自分とは異なる人々の考えを理解している」と過信してしまう傾向があるようだ。そして自分と似た人々の考えについては比較的正確に予測できる反面、自分と異なる人々の考えについては、「こうであるに違いない」という確信が強ければ強いほど相手を誤解している可能性が高い。

浮き彫りになる「二極化」

この検証結果は、二極化/分断が進む現代社会の深刻な状況を浮き彫りにしたものだと言えるだろう。

多くの場合、私たちは自分に近い考えの人々と交流することを好む。同じグループの間で接点を持つことにより、「私たちは同じではない。一人ひとりが違う考えや信念を持った個人なのだ」と理解し、尊重できるようになる。そのため、同じグループの人々の意見を予想するのも得意なのだろう。

一方で私たちは「自分と異なる人」を軽視している。相手に対する不信感や嫌悪感を募らせ、個人として見ることをやめ、「全員こうなのだ」と決めつけ、なるべく近づかない、関わらないようになる。その傾向が深まるにつれて交流の機会も減り、相手を理解する機会も失われ、相手に対する誤解や偏見はますます大きくなってしまう

もうひとつの検証

この検証結果を見て、絶望的だと感じる人もいるだろう。しかし同じ研究者たちが行った「もうひとつの検証」は、そこに一筋の光を当てるかもしれない。彼らは参加者たちに対し「自分の予測が正しかったか、間違っていたか」のフィードバックを行った。

その結果「異なるグループの参加者に対する、自分の誤った思い込み」を知らされた参加者たちは、以前よりも正確で優れた予測を行うことができるようになり、また「自分が理解できる可能性が高い人々、低い人々」がいるという認識を深めたという。

この検証を行った研究者たちは、次のように語っている。
「私たちは、自分たちのグループに『さまざまな信念を持った、多くの異なるタイプの人々が存在すること』を理解している。たとえば白人は白人全員が同じではないと知っている。しかし人々は、自分たちと異なったグループの人々については『全員が同じで、似たような信念や見解を持っている』と考えがちだ。そして人々は、それら(の信念や見解)が何であるかについて、しばしば誤解している」

「だからこそ、多様な人々の意見に触れることは非常に重要だ。彼らの話を聞き、個々人としての彼らについて理解を深めること、つまり彼らの性格、信念、願望、感情などを理解することは、『内集団と同様に、外集団もさまざまなタイプの人々で構成されている』と理解するのに役立つ。 私たちは時間をかけて、彼らを人間として扱うようになる可能性が高くなる」

よかったらシェアお願いします
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次