ロシアは自然災害を利用して米国に分断を広げる

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米国を襲った大型ハリケーンと、連邦政府のハリケーン対応について、ロシアが誤情報や誤解を招く主張を拡散し、米国市民の分断を企んでいたことがISDの調査で判明した。

今年の夏から秋にかけて、米国では大型のハリケーンが猛威を振るった。特にへリーンとミルトンは多くの命を奪い、経済的にも甚大な被害をもたらした。ISDの調査によると、この二つのハリケーンへの米連邦政府の対応を批判し、米国の指導者たちを無能で腐敗しているように描写するコンテンツが、ロシアの国営メディアやソーシャルメディアのアカウント、ウェブサイトを通じて拡散されたという。

これらの主張の中には、ディズニーワールドの壊滅的な洪水の様子(実際には起きていない)を撮影したとされる写真など、AI作成による偽画像を含むものもあった。現実に発生している大きな災害への市民の懸念を悪用することで、ロシアの偽情報活動は米国の議論に食い込むことができ、また議論を引き起こしやすい話題を利用することで、政府への信頼を損ない、市民の分断を図ることができる。

ISDが特定したコンテンツには、あきらかに米国向けに書かれた英語の投稿と、ロシア国内向けに書かれたロシア語のプロパガンダの両方が含まれていた。拡散されたデマの多くは、連邦緊急事態管理庁(以下FEMA)や民主党政権への批判を煽るものだった。これは「大統領選挙を目前に控えた米国の政治的言説を操作する」というロシアの大きな作戦の一環だとISDは考察している。しかしISDの研究ディレクターは、次のようにも述べている。
「これは外国勢力によって作り出された状況ではない。彼らは、すでに存在していた火にガソリンを注いでいるだけだ」

米国の当局者やアナリストたちは、米国で発生したハリケーン、および米政府のハリケーン対策の偽情報をロシアが拡散する主な動機は、やはり「ウクライナ侵攻」であることに変わりないと述べている。つまり「プーチン大統領を称賛し、NATOやウクライナの指導者を中傷しているトランプを支援することが目的」という考えだ。実際、ロシアとつながりのあるソーシャルメディアアカウントは日常的にハリスを中傷し、ロシア国営メディアRTはトランプを「歴史に残る神秘的な人物」と呼んでいる。

またISDの研究者たちは、ロシアの偽情報作戦の工作員が、米国所有のソーシャルメディアプラットフォーム(Xなど)のコンテンツ管理の甘さを利用していると指摘した。たとえば以前のTwitterでは、国家権力によるメディアアカウントのコンテンツにはラベル付けが義務付けられていたが、イーロンマスクが買収したあとのXでは、この規則が撤廃された。これによりXでは、国が発信するプロパガンダ、ヘイトスピーチ、過激派の勧誘が急増したという指摘だ。

イスラエルのテクノロジー企業Cyabraの研究者たちは、FEMAのハリケーンへの対応を批判してインプレッションを稼いだXのポストを分析した。かなりの数の投稿が、実在の人間による投稿なのかどうか確認できず、また人気のあった投稿への返信の4分の1は偽物とみなされた。これらの投稿は、5億回以上ユーザーに閲覧されている。

「投票日が近づくにつれ、FEMAが移民支援に資金を流用しているという誤った主張から、気象操作に関する陰謀論まで、さまざまな虚偽の主張が国民の政府への信頼を損ない、有権者の信頼に深刻な影響を与えた可能性がある」と、Cyabraの研究者は報告書の中で述べている。

なお以前にもお伝えしたとおり、米国のハリケーンに関しては、リベラル派の政治活動委員会もまた「トランプのプロジェクト2025が国立気象局を廃止する」という誤情報を発信し、リベラル層の米国市民がそれをシェアする事態となった。大きな災害や痛ましい事件が起きている瞬間こそ、我々も冷静に考える必要があるだろう。とりわけインターネットには、さまざまな目的で「人々が心を乱される状況を悪用し、利益を得ようとする戦略」が溢れている。

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