ジェンダー問題は反民主主義プレイブックの中心
2024年11月25日、カーネギー国際平和基金のWEBサイトに「Why Gender Is Central to the Antidemocratic Playbook: Unpacking the Linkages in the United States and Beyond」が掲載された。この記事によると、これまで反民主主義的活動と、中絶やLGBTQなどのジェンダー問題は異なる文脈で語られることが多かった。しかし、下記の4つの点で、この2つは深く結びつき、相互に強化し合っているとしている。
1.性差別的な考えを持つ有権者は、極右の権威主義政党や指導者に投票する確率が高く、権威主義は性差別を利用して支持を獲得している。2017年のにヨーロッパで行われた調査によると、性別に関する伝統的な考え方を持つ人は、ヨーロッパ23か国において急進右派を支持する可能性が高かった。米国のいくつかの研究は、一般的に言われている経済的混乱などよりも、敵対的な性差別や人種差別が白人有権者のトランプ支持と関連していることが示唆されている。
2.世界各国における民主主義から離れる動きは、伝統的なジェンダー規範を支持し推進する運動やイデオロギーと結びついていることが多い。特に極右ポピュリストの運動や指導者にとって、重要なイデオロギー的支柱となっている。
3.民主主義が正しく行われていない国では、女性やLGBTQの権利、そしてジェンダー平等に対する攻撃が容認されるようになっている。米国だけでなく他の国々でも、反民主主義的な行為者は、民主主義のプロセスを衰退させることで、過激なジェンダー関連の政策や法律を進めている。
4.反民主主義的なリーダーは女性嫌悪やジェンダーに基づく暴力を、批判者や反対者を黙らせるための手段として利用し、容認している。後退する民主主義国家に共通して見られる傾向として、批判者や反対者を「女性化」し、威嚇し、黙らせるための手段として、ジェンダーに基づく暴力やヘイトスピーチを利用し、是認していることである。
記事では、それぞれについて豊富な調査結果や事例を紹介している。そして、反民主主義的活動は下記のロードマップでジェンダー問題を利用して反民主主義的政策を推進する。
STEP 1.性差別や伝統的な性別ヒエラルキーの支持は、反民主主義的で非自由主義的な政治家への支援に結びつく。反民主主義的政治家は、ジェンダー問題を利用して有権者を分断し、特に男性有権者が抱える社会経済的な不満につけ込み、政治的支持を固めることができる。
STEP 2.性差別の主張は極右のポピュリストのリーダーや政党から発信されることが多く、超保守的な宗教運動と政治連合を組むことで政治的影響力を強めることがある。
STEP 3.政治的権力を手にすると、反民主主義的な政治家は、ジェンダー関連の問題に関する反民主主義的な政策や立法を推し進める。
STEP 4.こうした政治家にはジェンダーに基づく虐待や嫌がらせ、さらには暴力に自ら関与したり扇動したりして、批判者を威嚇し黙らせようとする傾向がある。同時に、ジェンダー問題を軽視する。
反民主主義的主張は、人種、民族、宗教などの差別や反ワクチンや陰謀論などを利用することが知られており、ジェンダー問題も利用されている。今回、ご紹介した記事はその中でもジェンダー問題が特に重要性を調査結果や事例によって明らかにしたものだ。この記事がどこまで正しいかはわからないが、後半のロードマップはジェンダー問題に関する部分を他の人種、民族などに置き換えても成り立ちそうだと感じた。