デマはジャガイモではない 露の偽ファクトチェックネットワーク
ロシア政府が支援しているNGO、ANO Dialogが主催したイベント「Dialogue on Fakes 2.0」でファクトチェックネットワーク「Global Fact-Checking Network」の発足が紹介された。このネットワークはファクトチェックの標準を確立するためのもので、ジャーナリズムや組織に規範に従うサインをした後に参加するよう呼びかけている。
East StratCom Task Forceの運営するEUvsDisinfoはロシアの偽情報の隠れ蓑であり、国内外の情報操作を行うための組織である、と指摘している。
これに先立ち、2021年にANO DialogはLapsha Media projectを開始している。このプロジェクトは偽・誤情報に人々が騙されないための情報を発信し、啓発しており、偽・誤情報に関する情報を配信している。このプロジェクトはロシア語話者を対象とし、ロシア語で情報を発信していた。その後、ANO Dialogで働いていた男が WarOnFakes projectを立ち上げ、複数の言語での情報発信を開始した。
ANO Dialogは2023年に1200万人が閲覧した4051件の偽情報を暴き、2024年には 4,000 件以上の偽情報を特定したと主張している。ANO Dialogの報告書には、過去数年間で偽物の数が最も多かった月を示すグラフや、ロシアの各地方で特定された偽物の総数を示すヒートマップまで含まれている。これについて、EUvsDisinfoは「偽情報はジャガイモではない」とし、信用に値しない数値であるとした。
EUvsDisinfoはGlobal Fact-Checking Networkの狙いは混乱を引き起こすことだと指摘し、最近偽・誤情報として取り上げられた「北朝鮮兵士がロシアとともにウクライナと戦っている」や「ロシアは他国から兵器を入手している」などの情報を紹介している。あらかじめ注意しておくと、これらは我々の世界では正しい情報とみなされている。
偽・誤情報を発信する主体がファクトチェックを行ったり、正しい情報(自称)を発信する手法はよく行われている。ロシアと並んで偽・誤情報の発信元して有名な中国は、CVERC(国家计算机病毒应急处理中心)というサイバーセキュリティ機関を使って、欧米とは異なるサイバーセキュリティ情報を発信している。欧米の情報圏にいる我々がCVERCの情報を目することは少ないが(たまに欧米の主流メディアがとりあげることがある)、中国が浸透しているグローバル・サウスでは信憑性高く受け取られることもある。特に一帯一路で中国が情報化を支援している国ではそうだ。そのような国では情報関連企業や機関に中国企業が入り込んでおり、彼らがCVERCの発信する情報を正しいものとして現地の人々に伝えている。