CSCEが公開したロシアの対NATOシャドーウォーの実態

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Commission on Security and Cooperation in Europe(CSCE)は、2024年12月12日に「SPOTLIGHT ON THE SHADOW WAR: INSIDE RUSSIA’S ATTACKS ON NATO TERRITORY」を公開した。
このレポートはいわゆるロシアが展開している対NATOの「閾値以下の攻撃」=ハイブリッド攻撃をマッピングしたもので、コンパクトに状況を把握できるものとなっている。

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もっとも多かったのは、選挙および情報作戦

特徴はハイブリッド攻撃を重要インフラへの攻撃、暴力扇動、移民兵器、選挙および情報作戦の4つに分けている点である。全体で150の攻撃をとりあげている。もっとも多いのは選挙および情報作戦で35%となっており、次いで重要インフラへの攻撃の35%、暴力扇動20%、移民兵器12%となっている。

これはすべてを網羅しているわけではないので、「発見されることを前提とした作戦」であるデジタル影響工作の数がおおいのは当たり前かもしれない。
重要インフラへの攻撃では病院、列車、水道などへのサイバー攻撃が行われ、一部は一時的とはいえ成功した。医療機関へのサイバー攻撃は過去2年間のNATOへのサイバー攻撃のかなりの割合を占めており、被害をもたらした。選挙および情報作戦と同時に行われた場合、疾病地政学的なリスクが大きい。
暴力の扇動ではNATO加盟国内でのテロ行為などを扇動したり、資金を提供したりした。
移民兵器は高い成功率を持つ攻撃だ。簡単に言うと、第三国の移民を集めて攻撃対象の国に押しつけるだけ。2023年11月、フィンランドはロシアに扇動された移民の急増に対して、国境を封鎖した。その月だけで900人の第三国の国民が有効な書類を持たずにフィンランドにやってきていた。2024年の夏には、ポーランドで移民の急増があった。1日あたり400件近くが違法に国境を越えてきた。
移民兵器において問題は数ではなくて、違法な移民を受け入れることが社会的に問題となり、拒否反応などが起きることである。その一方でポーランドは莫大な数のウクライナ人を受け入れている。移民兵器は相手国の二枚舌を明るみに出し、国民の持つ差別意識を露出させることが問題なのだ。

俯瞰した状況把握の必要性

ハイブリッド戦あるいは全領域の戦いは、あらゆる分野にわたっている以上、全体像を俯瞰しなければ状況の把握ができない。しかし、多くの研究は事例研究であり、全体像を把握するにはほど遠い。こうしたレポートが増えてくることを期待したい。

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