ISDによる欧州の親ロシア・エコシステムの解明

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2025年1月9日、ISDはフランス、ドイツ、イタリアの3カ国にまたがる極右や極左などの過激派、陰謀論者、親ロシアのTelegram上のコミュニティを分析し、その相互作用など明らかにした「Behind the Curtain: Unveiling Pro-Kremlin Ecosystems in Europe」を公開した。

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デジタル影響工作の最大のターゲットである反主流コミュニティ

レポートでは、主流の主張に懐疑的で陰謀論にはまりやすい反主流コミュニティ(レポートではフリンジ・コミュニティ)がデジタル影響工作の最大のターゲットであることを解説している。

ロシアのRTが中心となってヨーロッパで多様な反主流派コミュニティと関わるようになり、西側で現状に不満を持つ層にアピールすることに成功した。大きく躍進したのはコロナ禍の時で、RTは積極的に反ワクチンの偽・誤情報、陰謀論を拡散した。さらに、ロシアのプロパガンダメディアであるSputnikとRuptlyも各国の反ワクチン、反コロナ規制運動を頻繁に拡散していた。これにより、ロシアはヨーロッパの極右、極左のポピュリズムの支持を受けることになった。これらの政党はヨーロッパにおいて、大きく支持を伸ばした。最近、ロシアでデジタル影響工作を実施していたSDAの内部文書が漏洩し、ロシアがドイツの極右政党AfD(AfD事態は極右であることを否定している)の得票率を増やす工作を行っていたことがわかっている。

*コロナ禍においてロシアが反ワクチン、反コロナ規制を通して各国の反主流派と結びついたことは非常に重要な転機だったが、なぜか日本でこの話題を取り上げる識者はいない。この背景がないと、反ワクチン、反コロナ規制のコミュニティが、ロシアのウクライナ侵攻の際に一斉に親ロシア、反ウクライナの主張を開始したことが理解できないはずなのだが。

レポートの主要なポイント

このレポートは極右、極左、陰謀論、親ロシアの4つのアクターに関連するTelegramのチャンネルを抽出し後にインフルエンサー、匿名チャンネル、政府系、組織、メディア、出版社、政治家・政党、その他で分類し、2022年1月1日から2024年2月29日までのすべての投稿7,784,669件を収集し、分析した結果である。その結果、22のテーマと113のサブテーマが得られた。

・親ロシアコミュニティは3カ国でさまざまなグループと相互関係があった。もっとも関係が深かったのは陰謀論チャンネルで77%が親ロシアコミュニティと関係があった。3カ国でもっともシェアされた50チャンネルのうち、フランスで14チャンネル、ドイツで17チャンネル、イタリアで10チャンネルが陰謀論と高い割合を占めていた。逆に親ロシア・チャンネルから過激派や陰謀論コミュニティにシェアされた投稿には偽・誤情報や陰謀論が多数含まれていた。

もっとも影響力があったチャンネルはロシア語チャンネルと親ロシア・チャンネルであり、国境を越えて浸透していたことが判明した。この中にはロシア政府と直接関係のあるロシア国防省、Ukraina.ru、RIAなど4つのチャンネルが含まれていた。

・親ロシア・インフルエンサーとしれて世界的に有名なAlina Lippはイデオロギーの異なる極右と極左の双方から支持を受けていた。

・極右コミュニティと親ロシアの関係は国より温度差がかなりあり、フランスとドイツで結びつきが強い。極右コミュニティは3つの国すべての存在するが小規模で分散している(これは近年の極右コミュニティの特徴でもある)。

・すべてのチャンネルでもっとも話題となったテーマは、ロシア・ウクライナ戦争であり、サブテーマとしては欧米とNATOだった。

定量的な分析に裏打ちされて参考になるレポート

本レポートにはTelegramに限定されているとはいえ、さまざまな角度での定量分析が行われており、参考にになる。

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