2024年米大統領選でAIによる偽・誤情報の脅威の発生源

  • URLをコピーしました!

2024年米大統領選でAIによる偽・誤情報の脅威の発生源についての論文「The origin of public concerns over AI supercharging misinformation in the 2024 U.S. presidential election」が2025年1月30日に公開された。

この論文は2023年8月に行ったアンケートを分析したものとなっている。調査対象者の83.4%が大統領選においてAIを利用した偽・誤情報に不安を感じていたことがわかった。この不安は年齢、学歴、AIに関する知識のいずれとも有意な差はなかった。AIに関する知識はこうした不安を払拭することはなかった、ということになる。
有意な関係が確認されたのは、ニュース、特にテレビニュースの摂取量であり、特に高齢者で顕著に表れていた。実際にAIによる悪影響を見たわけでも報告されたわけでもなかったが、ニュースによって不安を募らせたことになる。

(出典:Yan, H. Y., Morrow, G., Yang, K.-C., & Wihbey, J. (2025). The origin of public concerns over AI supercharging misinformation in the 2024 U.S. presidential election. Harvard Kennedy School (HKS) Misinformation Review. https://doi.org/10.37016/mr-2020-171

「影響の少ない問題が過大報道されることで、警戒心が広がる」というのは、一般的な偽・誤情報でも起きていることだ。「AIの悪用が選挙の脅威となる」という検証されていない、あるいはただ可能性を指摘しただけの意見が、あたかも身近に大きな脅威が迫っているかのように報道されることで情報への不安と不信が募る。
偽・誤情報についての過大報道は、それ自身がより害のある偽・誤情報になり得るということはもっと知られてもよいだろう。

よかったらシェアお願いします
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表。代表作として『原発サイバートラップ』(集英社)、『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)、『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)、『ネット世論操作とデジタル影響工作』(原書房)など。
10年間の執筆活動で40タイトル刊行した後、デジタル影響工作、認知戦などに関わる調査を行うようになる。
プロフィール https://ichida-kazuki.com
ニューズウィーク日本版コラム https://www.newsweekjapan.jp/ichida/
note https://note.com/ichi_twnovel
X(旧ツイッター) https://x.com/K_Ichida

目次