教師のためのホロコーストの否定や歪曲対応ガイド ユネスコ

ホロコーストを否定したり、歪曲するコンテンツは以前から存在したが、コロナ禍以降過激になり、さらに2023年10月7日以降、さらに状況は悪化している。ホロコーストを扱ったTelegramの公開チェンネルのコンテンツの約半数49%は事実を否定あるいは歪曲しており、特にドイツ語では80%以上、フランス語では約50%と多い。それ以外のX、TikTok、Facebook、Instagramでも割合は低いがホロコーストに関するコンテンツは存在している。
こうした状況を踏まえてユネスコでは、ホロコーストの否定や歪曲に教師が対応するためのガイドを公開した。このガイドは教育現場にいる教師はもちろん、ホロコーストに関心を持ち、学びたい人にも参考となる。現在のホロコースト否定や歪曲は、いわゆる反主流派と重複することが多く、反主流派が流布する他の歴史的事実の否定や歪曲にも応用することができそうだ。
ガイドは大きく3章で構成されている。
1章では、否定と歪曲の一般的なパターンを紹介し、拡散のパターン、実害、表現の自由との兼ね合いなどをコンパクトにわかりやすくまとめている。ホロコーストの否定や歪曲を行う人々が陰謀論、極右などの反主流派と重複していることも指摘されている。
また、AIの普及によって悪化する可能性も指摘している。Aハルシネーションによって、ホロコースト関連の事実を捏造したり、過度に単純化した説明で本質を誤解させたりするなどのリスクの他、AIを悪用したディープフェイクや偽情報が増えるリスクもある。
2章では、教育の場を通して取り組む目的やアプローチなどが紹介されている。そのほとんどは、ファクトチェックや、デバンキング、プレバンキングをホロコーストに適用した内容となっており、実践的である。
最後の章では少し一般的な偽・誤情報への対処方法などを交えた解説となっている。
全体で75ページのガイドで読み応えがあるものの、具体的な事例で多角的な対処方法について知ることができる貴重な資料となっている。この領域に携わる方々た、歴史修正主義に危機感を覚えている方には役に立つと思う。
たとえば陰謀論ナラティブは実存的欲求、認識論的欲求、社会的欲求を満たすというコラムがあったかと思えば、具体的な学習目標が整理されていたりと多岐にわたる。ちなみに、本書には歴史修正主義(Historical Revisionism)の正しい意味についてのコラムもある。