歴史と日常をAIが改ざんする

すでに米政府の各種情報が次々と書き換えられていることは以前の記事で紹介した。こうした言葉狩りや改ざんしたい歴史的事実を不可視化する試みはこれまでにも行われてきた。
トランプは言葉を殺す 米政府機関から消える言葉
https://inods.co.jp/news/5551/
反主流派の梁山泊となった共和党の新しい仲間”Moms for Liberty”
https://note.com/ichi_twnovel/n/ndecace54347f
ディープフェイクがもうひとつの歴史を作る
その動きはさらに加速し、ディープフェイクの利用により効果的になってきている。AAP(Australian Associated Press)の2025年4月10日の記事は、フェイスブックなどで多数の歴史改ざんディープフェイクが投稿され、閲覧されていることを報じている。ホロコースト、人種差別といった歴史的事実を覆い隠す捏造された画像にアクセスが集まっている。
Fears history is being rewritten with AI technology
https://www.aap.com.au/factcheck/fears-history-is-being-rewritten-with-ai-technology/
現在の現実も改ざんされている
改ざんされているのは過去だけではなく、今現在も同様だ。たとえば、現在選挙期間中カナダでは自由党のMark Carneyに関するディープフェイクが、フェイスブックの広告とそれを拡散する不正なネットワークによって広がっていることを2025年4月14日のThe Logicの記事が伝えている。カナダでは現在フェイスブックでニュースを見ることはできないが、調査によれば過去1カ月感にフェイスブックで「ニュース」(っぽいもの)を見たカナダ人は25%と多い。実際には起きていないことがあたかも起きていたかのように「ニュース」として人々に届いているのだ。
Facebook is being flooded with deepfake news reports about Mark Carney
https://thelogic.co/news/facebook-deepfakes-mark-carney-canada-election/
架空の人間=AIキャラクターも増えている。Metaは導入に失敗したが、おそらくまたやるだろう。Press Gazetteによれば、AIがAIであることを伏せて、プレスリリースを書いて送ったり、プロの評論家としてコメントをつけたり、インタビューに応じたりしている。単発ではなく、キャラクターを維持してさまざまなメディアに露出していたこともある。
Virtual reality: The widely-quoted media experts who are not what they seem
https://pressgazette.co.uk/publishers/digital-journalism/virtual-reality-the-widely-quoted-media-experts-who-are-not-what-they-seem/
専門家になりきっているAIを現実の存在であり、彼らの言動もまた事実である、という考え方もあるかもしれない。しかし、いまのところAIは人間になりすましており、そのプロフィール(専門家としての経歴等)はウソでしかない。もしかしたら、やがてAIであることをカミングアウトして、資格を取って専門家として活動するAIも現れるかもしれない。その時はまだ新しい議論が必要だろう。
世界的な歴史と現実の改ざんを加速するAI
AIはさまざまな形で歴史と現在の改ざんを加速している。この先、我々がなにをもってリアルとするのか大変興味深いのだが、重要なことがひとつある。人間は論理的に現実を定義できない。人間が根拠なくしがみついている現実を、論理的にAIが破壊してゆくのを我々は見ているのかもしれない。