コメと地震とパニック買い(下)~メディアによる拡散と政府の嘘

(上)では南海トラフ臨時情報が「令和の米騒動」の引き金となった可能性について述べた。(下)では「令和の米騒動」をめぐり政府と大手メディアによってなされた情報発信について、パニック買いのメカニズムを踏まえて考察する。さらに、臨時情報の問題点に触れ、メディアのチェック機能を再考する。
政府による曖昧な情報発信
“呼びかけ”のわかりにくさ
災害等の緊急時に買いだめ/買い占め行動が起こりやすいことは、過去の震災やコロナ禍での事例から明らかになっている。政府が南海トラフ地震臨時情報(以下、臨時情報)を出すにあたり、これらの事態をどの程度まで想定していたのかということは、公式資料からうかがい知ることができる。
2024年8月8日、気象庁は臨時情報の発表に際して開いた会見で、具体的な防災行動はどのようなものが望ましいかと問われ、自治体の指示に従うこと、日ごろからの備えを再確認することだと答えている。このとき以下の資料が示された。

記者会見での回答にもこの資料にも防災行動に関する具体性が欠けており、備蓄の内容等については触れていない。首相や官房長官の会見においても、「地震への備えの再確認」を呼びかけるにとどまっていた。中央省庁の中で買いだめへの注意喚起をおこなったのは農水省のみであり1、8月9日にXの公式アカウントで家庭備蓄についての投稿「食品の家庭備蓄 何がどのくらい必要?」をしている。
とはいえ、このX投稿だけを見ても詳細は分からず、リンクを踏んで公式サイトの「家庭備蓄ポータル」ページに行き、PDF形式の「災害時に備えた食品ストックガイド」をクリックするとようやく家庭備蓄の推奨内容がわかる。災害に関わる情報発信とは思えない煩雑さだ。
農水省の見解によれば、「コメが備蓄の柱である」という。
特に、お米は保存性、栄養面、費用、保存スペースのどれをとっても優れており、備蓄の柱となります。また、近年は国産米粉を使った乾パン・乾めん等が開発されており、これらの備蓄は自給率の向上にもつながります。
農林水産省 “備蓄の適切な運用・家庭での備蓄”
大人2人で一週間あたり4kgのコメ備蓄が推奨されているが、この量を越えて備蓄した場合に何が起こるのかは示されていない。コメは保存性に優れているというが、精米したコメは酸化しやすく、高温多湿によって品質が低下する。特に夏場は常温保存すると虫やカビなどが発生しやすいため、冷蔵庫に保存して2-3週間で食べきるのが望ましいとされている。一般家庭でコメを大量買いした場合にこういった保存状態を保つことは難しいだろう。
「地震の備え」の呼びかけは自治体レベルでもなされた。南海トラフ地震避難対策の特別強化地域に指定されている静岡市では、難波市長が8月9日の会見で、過剰な備蓄や買いだめを控えて冷静な対応をするよう呼びかけている。このような時に首長が「いざとなれば自治体で備蓄しているので安心してください」などと明言すれば、入手できる見通しが立つので安心感が生まれ、買いだめ抑止効果がありそうだが、そこまで踏み込んだ発言はなかった。
お粗末な“改善策”
臨時情報発表から4か月あまり経った12月20日、内閣府の防災担当は改善策を公表した。「とるべき行動が分かりにくかった」という反応を受けて、臨時情報発表時の呼びかけを改善するとしている。以下は改善策の資料の一部である。

内閣府防災担当 “南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)発表を受けての防災対応に関する検証と改善方策”, 2024年12月20日, p. 27
過度な買いだめや買い急ぎへの注意喚起としては、「経済的・社会的混乱を最小限に抑えるため、食料品や生活必需品の買いだめ、買い急ぎはお控えください」と呼びかけるとあるが、これだけでは不十分なのだ。改善策に求められるのは、臨時情報の発表に伴って発生したパニック購買の現象を分析した上で、社会心理学や社会経済学などの知見を踏まえて具体的な改善策を策定し、戦略的に実行することである2。
買いだめの心理的メカニズム
過剰な備蓄や買い占め行動に対する注意喚起は、発信者が政府や自治体であれスーパー等の小売り業者であれ、どれも一様に「冷静な対応」を求める定型文になっている。これだけでは効果は薄く、場合によっては逆効果になりかねない。買いだめ/買い占め行動には複雑な心理的メカニズムが働いているからだ。
初動で反応してパニック買いをする人の多くは、不安や衝動性につき動かされていたり、認知バイアスにとらわれていたりする。「冷静に」との呼びかけで行動変容が起こるとは考えにくい。人間には制限が課されると欲求が高まる傾向もあり、買いだめを禁じるとかえって拍車がかかるおそれすらある。また、買いだめをしないでいる人に対して、よけいなフラストレーションを与えかねない。
ニュースやSNS、口コミを通じてパニック買いが広く知られるようになると、それにつられて買いだめをする人だけでなく、冷静に判断した上で買いだめをする人が出てくる。つまり、買いだめは合理的ではないとか倫理的によくないということを十分に認識している人、買いだめを煽るようなデマや報道を信じていない人も、みんなが買って品切れになり自分が入手できなくなる事態を避けるために買いだめをするのである3。彼らは理性的な判断にのっとって行動しているので、「冷静な対応」を求めても意味がない。このようにしてひとり一人が損失を回避する行動をとった結果、みんなが買いだめをして品切れするという事態に陥る4。
買いだめや買い占めなどのパニック購買は、個人がそれぞれ最適な行動をとった末に集団としての利益が損なわれるという、社会的ジレンマの例である。このジレンマから抜け出すためには、個人レベルではなく集団全体としての行動変容を促さなければならない。政府や自治体がマスメディアを通じて広く情報を発信することが、有効な手立てとなる。残念ながら買いだめについて公的機関が発信する情報の内容や発信のしかたは、効果的とはいいがたい(パニック購買に関するリスクコミュニケーションについては注2を参照のこと)。
買いだめを煽るメディア報道
「空になった棚」は格好のネタ
パニック買いに関しては、不適切なメディア報道による影響も看過できない。今回はコメが買われたが、コロナ禍ではマスクやトイレットペーパー、東日本大震災では電池や水や非常用食料などの買い占めが発生し、古くはオイルショック時にトイレットペーパーの買い占め騒動があった。マスメディアはそのたびに消費者心理を煽り、事態を悪化させている。
店頭に殺到する人々の様子や空になったスーパーの棚を映すのが、いつの時代もお決まりのパターンだ5。今回のコメの買い占め騒動でも似たような報道が見られた。テレビのニュース番組では、冒頭に「空になった棚」を映すパターンが散見された6。
空になった棚が不安を煽るからといって、倉庫に山積みになった在庫を報道すればいいのかというと、話はそう単純ではない。今まで全国規模でのパニック買いが起こるたびに、在庫が十分にあることを伝える報道もされてきたが、はかばかしい効果は得られなかった。訂正情報を流すことでかえって社会的混乱が生じるという研究結果も出ている7。買いだめや買い占め等のパニック買いに関する報道については、このような知見も踏まえて見直す必要があるだろう8。
メディア報道がSNSの拡声器に
SNS上の投稿をテレビや新聞等が取り上げて報じることでパニック買いが加速し、全国規模に拡大することもある。
たとえば、コロナ禍の2020年2月末に起こったトイレットペーパー買い占め騒ぎでは、SNS上のデマをテレビが取り上げたことから買い占めの動きが全国的に広がった。きっかけとなった偽情報は「トイレットペーパーは中国産が多いため、新型コロナウイルスの影響でトイレットペーパーが不足する」というものだった。次のグラフはその偽情報をどのメディアから入手したかを尋ねた結果である。テレビが6割近くを占めており、テレビの報道が拡声器となってSNSのデマを広めたことがわかる。

総務省「令和2年版情報通信白書」第一部補論「偽情報に関する情報の入手」
「令和の米騒動」についても、マスメディアによる過剰な報道を指摘する声は当初からあった。2024年8月26日の産経新聞の記事は、「コメ不足」をテーマとした連日の報道が消費者の不安を煽り、コメを買い求める動きが急速に広がったとしている。
https://www.sankei.com/article/20240826-WRSPMKJAFRF33ECSHZQLQT2KGQ
この見解を裏付けるようなデータを民間の調査会社が公開している。下のグラフは2024年5月末から8月末までの「米不足」「米騒動」に関するウェブニュースを調査・分析したものである。

“【令和の米騒動】1週間で記事数が7倍に。2024年の「米不足」のウェブニュースを調査【Qlipperレポート】”
(株式会社トドオナダのWEBメディアモニタリングサービス「Qlipper」による調査。2024年8月26日)
この「Qlipperレポート」によれば、関連ワードを含む記事は5月下旬からほぼ連日確認されており、ポータルサイトを除けばテレビ局のニュース記事が最多であった。臨時情報の呼びかけが続いていた期間中は記事数の目立った増加は見られないが、8月19日から23日にかけて急増している。その理由として、お盆が明けて取材しやすくなったことに加え、SNS上でコメ不足を訴える投稿をメディアがニュースにするまでに時差があったのではないかと同レポートは見ている。つまり、SNSの個人投稿をマスメディアが後追いして報じたということになる。
メディア報道と買いだめの関連性を考察するために、(上)で引用した「スーパーでの販売数量・価格の推移」のグラフをここでもう一度見てみよう。

POSデータに基づき農林水産者が作成。2025年6月23日更新(農林水産省 “米の流通状況等について”より)
8月5日から8月11日の間に販売数急増の一回目の山があり、これは臨時情報の影響だと考えられる。8月19日から8月25日に二回目の山があり、その後は減少して8月5日の水準まで戻っている。
この動きはQlipperレポートの記事数グラフと符合する。記事数グラフでは8月17日から8月25日の間に記事数の急増による山が二つできていて、その後は急増前の水準に戻っている。元データは公開されていないが、記事数の山は販売数の二回目の山と重なり合っていることから相関関係が推定される。メディア報道が販売数を増加させたのか、販売数の増加が報道を活発化させたのかは不明だが、両者の間になんらかの因果関係があるのではないかと推測される。
小さなデマと大きなウソ
SNSに責任を押しつけることが“偽・誤情報対策”なのか
情報拡散のメカニズムを説明するモデルとしては、「拡散のトランペット」が有名である。

クレア・ウォードルの「拡散のトランペット(The ‘Trumpet of Amplification’)」をもとに筆者作成
ネット上の閉鎖的なコミュニティを経てオープンなSNSに伝わった情報が、最終的に報道機関によって拡散される構図を示したものである。この拡散モデルは主に偽情報対策の文脈で引き合いに出されるものだが、「令和の米騒動」で見られたコメ不足を伝えるSNS投稿のように、明らかな偽情報・誤情報とは言えないような情報にも適用が可能である。
昨今の大手メディアはSNSの情報を随時チェックしており、ネタ探しに余念がない。SNS専門のチームを設けているところもある。SNSで流行っているネタがあればニュースにするし、投稿者に情報提供を求めたりもする。このようにして、ネットの中にとどまっていた情報がテレビや新聞などで取り上げられ、ネットの外へと広まっていく9。情報空間での拡散メカニズムにおいてマスメディアの果たす役割は大きく、責任は重い。「令和の米騒動」に関しても、そのような観点から報道のあり方が問われるべきである。ところが、そういった視点を欠き、SNSに責任を帰すような論調の記事もある。たとえばフェイク対策を経営計画に掲げるNHKは、昨年9月に次のような記事を出していた。
この夏、相次いだ台風や大雨、そして南海トラフ地震の臨時情報。
不安の中、SNSでは偽情報の広がりとともに「インプレゾンビ」や大量の「スパム投稿」が見られ、スーパーではコメの品薄が話題になりましたが、私たちの行動もその一端を担っていたかもしれません。
NHK NEWS WEB「“地震予知”“川氾濫” 偽情報 スパムで荒れたSNS どうすれば」2024年9月7日
この記事は、「コメが買えない」などのSNS投稿が消費者の不安を煽り、パニック買いを誘発しているとして、情報を拡散する前に一人一人が気を付けるようにと注意喚起する内容になっている。だが、コメが入手困難な地域があったことは事実であり、空になった商品棚を目にした人が「コメがない」と投稿すること自体は、偽情報でも不確かな情報でもなく正確な一次情報である。それをSNSで拡散する人々に「米騒動」の責任の一端があるにしても、SNSの後追い報道や煽るような報道をする「拡声器」としてのメディアが、自らの責任を問う方が先ではないだろうか。
この記事では専門家のコメントとして、「また今回は、いくつかのメディアにおいては、令和の米騒動といった表現をしたり、世間の受け止めよりも強く発信していた印象が全体的にあり、注意が必要だ」とあるが、この指摘をNHKがどのように受け止めているかは記事には示されていない。
「官製デマ」と呼ばれかねなかった南海トラフ地震臨時情報
NHKの記事は冒頭で、SNSのデマ「2024年8月14日に南海トラフは起こる」を取り上げ、気象庁のコメントを付して注意喚起している。
気象庁によりますと、地震の起きる時や場所、大きさを精度よく予測することは現在の科学的知見では難しく、「日時と場所を特定した地震を予知する情報はデマと考えられる」としています。
NHK NEWS WEB「“地震予知”“川氾濫” 偽情報 スパムで荒れたSNS どうすれば」2024年9月7日
地震発生の日付の特定が科学的に不可能なのは、疑いようのないことだ。それはそうと
南海トラフ地震臨時情報は、科学的な知見に厳密にのっとって出されたのだろうか。
今回の臨時情報は、2024年8月8日に宮崎県沖でマグニチュード7.1の地震が発生したことから発表された。臨時情報は想定震源域内でマグニチュード7.0以上の地震が発生したときに出されることになっているが、想定震源領域の設定には専門家の間でも疑義があり、日向灘の地震との関連性を疑問視する声もある。「東海地震説」の提唱者として知られる石橋克彦・神戸大学名誉教授は今回の臨時情報について、科学的根拠が乏しく確度が低いと指摘している10。
南海トラフ地震の発生確率は30年以内に80%とされているが、この確率が水増しされた数字であることを東京新聞の小沢慧一記者が明らかにした。小沢記者による一連の報道とそれらをまとめた書籍を読むと、南海トラフ地震の理論が既得権益や政策的配慮によって歪められ、恣意的に作られた可能性があることがわかる11。80%を算出した「時間予測モデル」の提唱者である島崎邦彦・東大名誉教授は、この計算モデルが間違っている可能性を今年5月の学会で示唆した。政府の地震調査委員会は現在、確率算出手法の見直しを検討している。
臨時情報の「呼びかけ」の1週間という期間にも、科学的根拠があるわけではない。自治体へのアンケートをもとにして、社会的な受忍限度であろうという想定で決められたものである12。
このように科学的根拠に乏しい「呼びかけ」であっても、公的機関から正式に発表されたものである以上、自治体は従わざるを得ない。岸田首相(当時)が外遊を取りやめたことも、自粛を促すメッセージとして機能した。観光地で海水浴場の閉鎖等がおこなわれた結果、宿泊施設のキャンセルなどが起こり、甚大な経済的損失が生じている。コロナ禍の休業要請とは異なり、注意報を受けての防災対応は自治体や民間に任されているので、政府による補償はない。野村総研の試算では、臨時情報によって旅行関連消費に2000億円近いマイナスの影響が出るとのことだが、政府は経済損失の検証をおこなわない方針を示している。
臨時情報の影響は多岐に及び、ダメージを被るのは観光関連業にとどまらない。「令和の米騒動」もその一つであるならば、臨時情報の余波はいまだに続いている。政府発の科学的根拠に乏しい情報に日本中が振り回されているのだ。
メディアがチェックすべき情報は何か
南海トラフ地震に関する学説や政策を徹底的に検証し、問題点を指摘する大手メディアは多くはない13。北海道大学地震火山研究観測センター長を務めた島村英紀・武蔵野学院大学特任教授は著書『公認「地震予知」を疑う』(2004)のなかで、ジャーナリズムによるチェック機能が働いていないことを指摘し、理由の一つとして省庁と記者クラブとの馴れ合いを挙げている。
ただでさえ複雑で多岐にわたる科学情報を、親切に資料を用意して説明してくれる各官庁の受け売りをするだけで当面の科学記事はできてしまう。(pp. 98-100)
島村教授は巨大地震の警戒宣言に「戒厳令」の側面があることを示唆し、そのような状況下で報道機関がジャーナリズムを発揮できるのかという懸念を表明している。
たとえば、この「戒厳令」下で、警戒宣言を発令するに至った根拠や経緯を、政府の発表以上に正確に伝えたり、ときには疑問を呈したり批判することは許されるのだろうか。(pp. 194-195)
2003年に内閣府の中央防災会議が発表した「東海地震対策大綱」の内容について、島村教授は「報道機関は政府と「連携」させられてしまう」と述べている。報道機関との連携は、同会議による2021年策定の「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」においても明記されている。南海トラフ地震臨時情報の発表後の周知に関しては、「各計画主体は報道機関との事前協定の締結等その的確かつ迅速な実施を可能にする措置を考慮するものとする。」とあるように、事前の協力・連携体制の構築が定められているのである。なかでも放送の役割は重要視されており、関係機関と事前に密接な連携をとること、警戒宣言が出た時には関係機関と協力して住民へのよびかけと情報提供をすることが求められている14。
政府と報道機関の連携体制を事前に構築することは、防災面でメリットが大きい。だが、島村教授の言うように、そのような体制下で政府の防災施策に異論を唱えるのは容易ではないだろう。臨時情報が「空振り」に終わろうと、実際に後発地震が発生しようと、程度の差こそあれ社会生活や経済活動が制約され私権が制限されることに変わりはない。公的機関による制限が行き過ぎないようチェックするのはメディアの役割である。臨時情報の妥当性や社会的影響を検証するとともに、メディア報道のあり方も問うていく必要があるだろう。
- 森久保司 “南海トラフ地震臨時情報の発表を踏まえた政府の対応等について” 令和6年度 巨大地震対策オンライン講演会, 2024年12月7日, pp. 9-11 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/jishin_bosai/lecture/02_morikubo.pdf ↩︎
- 災害の社会心理学やリスクコミュニケーションを専門とする東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター長の関谷直也教授によれば、買いだめをする人はごく一部であり、「買いだめをやめましょう」という呼びかけは逆効果であるという。政治家や行政は「冷静に行動しましょう」「安心してください」などというメッセージを出したがるが、それも的外れである。消費者が求めているのは、いま現在、目の前の物資が足りていないという状況の説明と今後の見込みを示すことであり、それがパニック購買など災害時の混乱をおさめる上で重要だと関谷教授は指摘している。経済産業省・災害時の燃料供給の強靭化に向けた有識者会議(第1回)議事録https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/saigaiji_nenryo/pdf/001_gijiroku.pdf
関谷構成員説明資料「災害時の買いだめ・モノ不足の集合行動的視点と被災地への情報提供のあり方」https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/saigaiji_nenryo/pdf/001_07_00.pdf ↩︎ - 新型コロナウイルス感染拡大時に生じたトイレットペーパー買いだめについてNHK放送文化研究所(文研)が2020年に実施した調査では、流言を信じて買いだめをした/しようとした人は少数派であった。買いだめの理由として最も多かったのは「自分は流言を信じていないが,他人は流言を信じて買いだめをしていると思った」という「多元的無知」の心理によるものであり、文研の調査はこれを定量的に明らかにしている。
福長秀彦「新型コロナウイルス感染拡大と流言・トイレットペーパー買いだめ~報道のあり方を考える~」放送研究と調査,2020年7月号https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/pdf/20200701_8.pdf ↩︎ - 大阪大学の安田洋祐教授は買い占め騒動をゲーム理論で説明し、個人と全体の利益が食い違うことに問題の本質があると見ている。“買い占めに走る消費者は「間抜け」なのか?ゲ
ーム理論「協調ゲーム」で考える消費者行動の合理性” 日経ビジネス, 2020年3月11日https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/030900081 ↩︎ - 蓑輪幸彦 “トイレットペーパーはなぜ消えた?” NHK NEWS WEB, 2023年4月30日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230428/k10014050991000.html ↩︎ - TBS NEWS DIG “米の品薄”いつまで続く?「棚が空っぽ」食卓を直撃、“平成のコメ騒動”令和に再び?【Nスタ解説】, 2024年8月21日
https://www.youtube.com/watch?v=rNFPJcMB39c ↩︎ - 飯塚隆介, 鳥海不二夫ほか「デマの訂正が社会的混乱に与える影響の分析」人工知能学会 合同研究会2020, 2020年11月21日
https://collabodesign.org/docmas/wp-content/uploads/2020/11/docmas_202011_02.pdf ↩︎ - NHK文研の福長秀彦研究員は、「昨今のメディア不信を考えるとき、打ち消し報道へのメッセージには、受け手への心理への配慮が必要となる」と指摘。訂正放送によって反発が生じたり、偽・誤情報への確信を強めたりといった逆効果が生じる可能性があるという。「~しないでください」等の行動指南型のメッセージは、よほどの緊急時でない限りは不適切であるとしている。
福長秀彦「SNS 時代の誤情報・虚偽情報とマスメディアの打ち消し報道~留意すべき事柄を考える~」放送研究と調査, 2019年8月号
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/pdf/20190801_5.pdf ↩︎ - 法政大学社会学部メディア社会学科の藤代裕之教授によれば、真偽不確かな情報はソーシャルメディア、ミドルメディア、マスメディアの間を行き来しながらニュース化され、拡散する。フェイクニュース生成の経路である「フェイクニュース・パイプライン」で重要なのが、ニュースメディアやまとめサイトなどのミドルメディアである。2017年の衆院選での調査を通じて、マスメディアのコンテンツとソーシャルメディアのコンテンツを組み合わせて記事化しポータルサイトへ配信するという、ミドルメディアの新たな役割が明らかになった。
藤代裕之「フェイクニュース生成過程におけるミドルメディアの役割」情報通信学会誌, 37巻2号, 2019年, pp. 93-99
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicr/37/2/37_93/_pdf/-char/ja ↩︎ - 福島隆史 “「南海トラフ地震臨時情報」に突きつけられたイエローカード” TBS NEWS DIG, 2024年10月26日
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1512147?display=1 ↩︎ - 小沢慧一 “南海トラフ 80%の内幕” 東京新聞, 2020年6月11日-2020年7月30日
https://www.tokyo-np.co.jp/f/series/trough_uchimaku
———『南海トラフ地震の真実』東京新聞, 2023年8月31日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/268433 ↩︎ - 内閣府(防災担当)“南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライ
ン” 2021年5月, pp. 40-41 https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/pdf/honbun_guideline2.pdf ↩︎ - 注11に挙げた東京新聞の小沢記者は2018年に取材をはじめて以来、継続的に検証記事を書いている。また、毎日新聞は2021年に2度にわたり連載記事を掲載していた。”連載 地震予測の舞台裏” 毎日新聞, 2021. 3
https://mainichi.jp/ch210373603i/%E5%9C%B0%E9%9C%87%E4%BA%88%E6%B8%AC%E3%81%AE%E8%88%9E%E5%8F%B0%E8%A3%8F
”連載 地震学の現在地” 毎日新聞, 2021. 4
https://mainichi.jp/%E5%9C%B0%E9%9C%87%E5%AD%A6%E3%81%AE%E7%8F%BE%E5%9C%A8%E5%9C%B0/ ↩︎ - 災害時の放送は放送法第108条で基幹放送事業者の業務として規定されている。「基幹放送事業者は、国内基幹放送等を行うに当たり、暴風、豪雨、洪水、地震、大規模な火事その他による災害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、その発生を予防し、又はその被害を軽減するために役立つ放送をするようにしなければならない。」
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000132/ ↩︎