大学生はなぜ選挙時にテレビや新聞にニュースを求めるのか

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 選挙時のSNSにおける偽・誤情報が問題となっている。現状では、プラットフォーム企業に対して法規制による対策を迫ったり、リテラシーを向上させるといった対策が試みられているが、法規制は制度的に実現性が乏しく、真偽を見抜くことは生成AIにより困難になっている。それらに比べればニュースへの接触を増やすというアプローチのほうが現実的に思える。SNSを日常使いする大学生が選挙時にはニュースを求めてテレビや新聞に触れようとする状況がある。しかしながら、大学生がニュースに触れるのは簡単ではない。

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選挙時にテレビや新聞に触れようとする

 大学生が選挙時にテレビや新聞といった既存メディアに触れようとする傾向があることに気づいたのは2018年に行われた沖縄県知事選挙に関する調査をしていたときのことだ。この選挙は真偽不明の投稿が話題となり地元の地方紙による検証活動が行われるなど、昨今の選挙状況の先行事例といえたが、沖縄では沖縄タイムス、琉球新報が高い普及率を持つことから、家庭に配布された紙の新聞があることが要因ではないかと考えていた。

 2024年の東京都知事選挙時にも法政大学社会学部生に対し簡単な調査を行った。都知事選についてニュースを自分で探したり、収集したりしたかという質問に対しては、「した」49.3%、「していない」50.7%で、半分弱の学生がニュースを探そうとしていたが、候補者情報にたどり着くのに苦労していた。

 このときの都知事選はYouTubeでの発信で注目された石丸伸二が出馬して、166万票近くを獲得して衝撃を与え、「SNS選挙」や「TikTok選挙」と言われた。調査では、テレビの存在感が大きく、TikTokで情報を収集した学生は少なかった。新聞は日頃ほとんど読んでいない学生が多いにも関わらず、かなりの接触率の向上となっていた。

 選挙のような重要な話題では、学生たちはテレビや新聞に触れようとする傾向があるのではないかと考え、2026年の衆議院選挙についても調査を実施した。

テレビと新聞で分かれる接触状況

 授業を受講している法政大学社会学部の2年生以上に行ったアンケートには、202人から回答があった。内訳は、2年生が117人、3年生が61人、4年生が24人だった。衆議院選挙から2カ月が経過しているというタイミングや受講生と対象が限られているが、若者の選挙時における情報やニュースの接触状況を知る参考にはなるだろう。

 まず各メディアへの接触状況だが、毎日接触しているのは、YouTubeとInstagram、次いでX、TikTokとなる。興味深いのは、TikTokには「まったく接触しない」という回答が4分の1ほどいることだ。Facebookはほとんど使われていない。

 既存メディアでは、テレビは約半分が毎日接触している。それに比べて新聞は「ほとんど接触しない」と「まったく接触しない」を合計すると7割近くになり、接触状況は異なっている。ニュースサイトもSNSに比べれば接触の頻度が低い。

学生の各メディアへの接触状況(筆者作成)

 ニュースを見る際に各メディアにどれくらい接触するのか。毎日接触しているのはテレビで、SNSは頻度が低下し、Instagramでは「ほとんど接触しない」と「まったく接触しない」を合計すると半分弱になる。SNSで最もニュースに触れているのはXである。大学生に聞くとInstagramは友人や知人の情報共有、YouTubeは暇つぶし、といった具合にSNSを使い分けていることが分かる。新聞はほとんど変わらず接触が乏しい。

ニュースを見る際の各メディアへの接触状況。SNSでの頻度は全体に低いが、その中ではXが高い(筆者作成)

『ロイター・デジタルニュースリポート2024』では「ニュース回避」についての記述があり、国内ではニュースに関心があると答えた人は2015年に66%いたが、2024年は45%と低下傾向にある1

ニュースに触れる困難さ

 2026年の衆議院選挙のニュースを自分で探したり、収集したりしたかという質問に対しては「した」113(55.9%)、「しなかった」89(44.1%)となっている。

 「した」という学生がニュースを探したり、収集したりした媒体はテレビが最も多く、次にニュースサイト、Xの順となるが、新聞という回答がそれなりの数として登場するのが興味深い。日常的に新聞への接触は乏しいが、選挙になると接触しようとするという行動は衆院選挙でも確認されたということになる。

衆議院選挙のニュースを「自分で探したり、収集したりした」という学生がニュースを探した媒体。ここでは、新聞が存在感を示す(筆者作成)

 今回の調査では、選挙時に普段のメディアやニュース接触が異なるかどうかを聞いている。113人のうち「同じ」と回答したのは66人だが、47人は普段とは異なると回答していた。その理由には「新聞やテレビに触れる機会が増えた」「SNSのニュースばかり接触しないように気をつける」といったものがあり、既存メディアに接触しようという動きが見られた。新聞と回答した学生からは「新聞の方がネットより詳しくまとめられているし、主観要素が入ってないと感じるから」と評価するものもある。もちろん「報道のされ方に偏りがある」といった批判的な意見もあった。

 重要なことは、選挙といった重要なイベントに対し、大学生たちがSNSを避けてテレビや新聞からニュースに触れようと試みていることだ。これは真偽不明の情報が溢れるSNSから距離を取るリテラシーの表れとも考えられる。しかしながら、テレビや新聞からのニュース接触が日頃から乏しいため困難が生じている。

 自由記述からは困難が複数の側面から確認できる。「ニュース記事や解説は専門的な言葉が多く使われており、一つ一つの内容が難しくて理解しづらかった」といった回答や「新聞は購読していないため、図書館に足を運ぶ必要があった」「選挙期間に実家に帰っていて、(新聞が)手元にあったため読んだ」といったように、そもそも接触しようとしても物理的に難しいという回答もあった。

 大学生がSNSから距離をとるリテラシーを発揮しても、既存メディアがあまりに遠い。ニュースへの関心の低さというよりも、メディア環境の変化によりニュース側が大学生を回避しているともいえ、この状況を改善する必要がある。

  1. 税所玲子 シリーズ「ロイター・デジタルニュースリポート2024」(1)~日本人はニュースをどれくらい信頼し、何を求めているのか~【研究員の視点】#548
    https://www.nhk.or.jp/bunken-blog/200/671497.html ↩︎
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この記事を書いた人

藤代 裕之のアバター 藤代 裕之 リサーチフェロー

法政大学社会学部メディア社会学科教授
広島大学文学部哲学科卒業、立教大学21世紀社会デザイン研究科前期課程修了。徳島新聞社で記者として司法・警察や地方自治などを取材。NTTレゾナントに転職し、ニュース編集やNTT研究所のR&D支援(gooラボ)、新サービス開発などを担当した。2013年から法政大学社会学部メディア社会学科准教授、2020年に教授。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表理事。著書に『ネットメディア覇権戦争
偽ニュースはなぜ生まれたか』(光文社)、編著に『フェイクニュースの生態系』(青弓社)などがある。

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