Xの自動翻訳が結びつける排外的な投稿

日本各地で相次いでいる寺や神社の火災に対して、「イスラム教徒が放火した」という排外的な投稿がSNSで拡散している。新聞社は「根拠がない」と否定する報道を行っているが、投稿はくすぶり続けている。Xのニュース・ストーリー機能と自動翻訳が、海外の排外主義の投稿と国内の火災を結びつけている。
相次ぐ火災「放火の根拠なし」の報道
読売新聞は6月12日に、1月から6月に国内各地で発生した寺社や酒蔵での火災10件を取材し、そのうち8件で警察と消防から「外国人が火を付けた事実や情報はない」と否定の回答を得たとの記事を公開した。
- 厳島の「不消霊火堂」全焼など寺社や酒蔵の火災巡り、根拠なき「ムスリムが放火」のデマ拡散(読売新聞)
この寺社などが放火されたという話題はX(旧Twitter)がAIでまとめるニュース・ストーリー機能に取り上げられている。タイトルは「全国神社仏閣で火災相次ぐ 放火疑いのSNS憶測広がる」だ。

この機能は、Xで話題になっている情報やテーマをAI・Grokが取りまとめるもので、「本日のニュース」として表示されている。投稿には、不確実な情報が紛れ込むことがあり、タイトルは投稿をAIで要約しているためミスリーディングなタイトルとなったり、偽・誤情報が拡散したりすることがある。4月に行われた京都府知事選挙では、情勢報道が間違ってまとめられ京都新聞がXに削除要請を行っている。
まとめられた投稿を確認すると、海外の保守系インフルエンサーと国内の不確実情報を発信するアカウントがやり取りをしながら、排外的な話題を拡散していることが分かった。3月から始まったXの投稿を自動的に翻訳する機能が日本利用者にも拡大されたことが背景にある。
翻訳機能でつくられる排外主義
投稿を具体的に見てみる。翻訳はXの表示をそのまま使用している。アカウントの所在地は、偽・誤情報対策にXに導入されたもので「このアカウントについて」から確認した。
「ヨーロッパでは、多くの教会が謎の火災に遭っています。モスクはそうではありません。」
投稿は英語。アカウントは154万フォロワー、所在地はヨーロッパ。
「奇妙だと思いませんか。日本がムスリムを輸入するやいなや、彼らの仏教寺院が焼き払われ始めるのです。ヨーロッパ中の教会と同じように」
投稿は英語。アカウントは5.2万フォロワー、所在地はイギリス。
「日本、このままでは英国やヨーロッパのようになります。」
投稿はスペイン語。アカウントは2.9万フォロワー、所在地はスペイン。
このような投稿に対して、「ムスリムの仕業」「なぜモスクは燃えていないのか」「モスクを燃えせ」といった反応が日本語や英語など複数言語で寄せられて拡散している。海外の排外主義の投稿が、国内の火災と結びつけられて物語が作られている。
否定報道もAIタイトルに反映されず
広島県の地方紙中国新聞は、5月22日に宮島で起きた火災について放火に対して否定する報道を行い、Xに投稿して紹介している。
- 宮島・弥山の霊火堂全焼「外国人が火をつけた」 SNSに書き込み相次ぐ 廿日市署などは「放火を示す痕跡なし」(中国新聞)
この投稿もさきほどのニュース・ストーリー機能に含まれて紹介されているが、「全国神社仏閣で火災相次ぐ 放火疑いのSNS憶測広がる」とのストーリーのタイトルには記事内容が反映されておらず、リストには排外的な投稿が多く含まれているため効果は薄い。排外的な投稿の多さや拡散力に対し、新聞社の投稿や反応も少ないため、AIに反映されにくいのかもしれない。また、記事は会員でなければ全文を読むことはできない上、再度確認したらXの投稿は残るものの記事は削除されており、参照することができなくなっていた。
6月になり公開された読売新聞の記事を紹介するXの投稿にも「イスラム教徒が欧州でやってきた事」、「イスラム教徒は入国禁止にすべきだ」といった反応が寄せられており拡散は収まっていない。
ニュース・ストーリー機能には、「Grokは間違えることがあるため、アウトプットが事実かどうかを確認してください」という注意事項がタイトルと要約の下に小さく記載されているが、タイトルのインパクトからすれば不十分であり、「本日のニュース」として表示されているタイトルだけを見て判断する利用者も多いだろう。いくら新聞社が否定する記事を書いても、Xの機能が偽・誤情報を拡散を誘発している以上、焼け石に水の状態だ。
