bioshokの最新AI事情 2026年7月11日~7月17日 米国がフロンティアAI公開の事前承認制へ、ハサビスが特異点を宣言

偏執的に世界中のAI情報を収集・発信するbioshokの週刊連載。この1週間にピックアップした主要ニュースをまとめて紹介。
【要約】
米国 ── 「ゴールドイーグル」で事前承認制へ移行
今週最大の動きは、ホワイトハウスが「ゴールドイーグル」と呼ばれるプログラムを開始したことだ。米国における最先端AIの公開に対する統制力が強化され、どの企業が新モデルへのアクセスを許可されるかについて政府の明確な承認が必要となる。これまでの自主的な参加の時代が終わりを迎える可能性がある。
併せて米国はFINRA(金融業規制機構)のような、最高水準のAIモデルを審査する監視機関の設立を検討している。この計画はスージー・ワイルズ首席補佐官によって検討されており、Google DeepMindのデミス・ハサビスCEOが発表した政策提言と一致する。ハサビス氏の計画は、連邦政府が監督する標準化団体の一環として独立した技術専門家の委員会がAIモデルを審査するもので、業界が資金を提供し、政府機関や国立研究所と協力してサイバー・バイオ分野のテストプロトコルを開発する。この提言はMicrosoftのナデラCEO、OpenAIのアルトマンCEO、SpaceXのマスクCEOからも称賛を受けており、普段は激しいライバル関係にある主要プレイヤーが規制の枠組みで一致するという異例の状況が生まれている。
ハサビス ── 「特異点のまさに始まりに立っている」
デミス・ハサビス氏が「脳が持つあらゆる認知能力を備えたAGIは、おそらくあと数年で実現するでしょう」と明言し、「私たちは特異点のまさに始まり、人類にとって新たな時代の幕開けに立っていたことに気づくはずです」と述べた。ハイプを避ける傾向のあったハサビス氏が、産業革命の10倍の規模が10倍の速度で起きるとし、特異点という言葉を自ら記事にして公表したことは注目に値する。
AI2040 ── 議論の広がり
先週発表されたAI2040を巡る議論が拡大している。「議論の地図」が整理され、AI2040が前提とする世界観に対し、AGIピル内部からの批判(経済前提の粗さ、トップダウン志向)とAGIピル外部からの批判(世界観そのものへの懐疑)という二つの質の異なる議論が存在することが明確化された。AGIピル的リソースの集大成的な位置づけにあるため、議論を追うこと自体に意味がある。
「ASIピル」という言葉も流行し始めている。AGIピルが産業爆発やカルダシェフ・スケール文明への認識だとすれば、ASIピルは人類の絶滅リスクへの認識を指す。AI2040に対するリアクションはこの複数の立場が入り乱れる形で展開されている。
200人超の研究者・経済学者が政府に即時行動を要求
ジャック・クラーク、ジェフ・ディーン、ノーム・ブラウン、タイラー・コーウェン、ジョン・シュルマン、ヨシュア・ベンジオ、エリック・シュミット、ディーン・ボールなど200人以上の研究者や経済学者が、AIの経済的影響に備えるため各国政府や機関が今すぐ行動を起こすよう求める声明に署名した。安全性の立場を超えた幅広い専門家が経済的備えの緊急性で一致している。
習近平 ── 世界AI会議に初登壇
習近平国家主席が上海の世界AI会議に初めて登壇した。「100年に一度の大変革」から演説を始め、AIが「ガバナンスにとって大きな機会であると同時に大きな課題」であると指摘。オープンソースへのコミットメントを再確認する一方、AIに国家安全保障の概念を「過度に拡大解釈」し一国の安全保障を他国より優先することに警鐘を鳴らした。「新たな歴史的不正義」の発生に反対するという強い表現を用い、今後5年間で発展途上国にAI研修・協力センターを通じ5,000の機会を提供すると表明。ASEAN、アフリカ連合、BRICSなどを名指しした。米国のFable 5輸出規制やゴールドイーグルへの対抗姿勢が明確だ。
なお、中国のKimi K3は依然として最先端モデルから5~8か月遅れているとの分析が出ている。
AI開発競争の停止運動
米国でAI開発競争の停止を求める運動が起きている。AI2040のPlan Aが提唱するASI開発の一時停止とも呼応する動きで、社会的な圧力が研究コミュニティの提言と合流し始めている。
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全体として、米国がゴールドイーグルでフロンティアAIの事前承認制に踏み込み、ハサビスが特異点を宣言し、習近平が世界AI会議で米国の「過度な安全保障拡大」を牽制するという、AI覇権を巡る構図が新たな段階に入った一週間でした。AI2040を巡る議論はAGIピル・ASIピルという複数の認識レベルが交錯する形で深まり、200人超の専門家が経済的備えの即時行動を求める声明に署名しました。フロンティアAIの管理が「自主参加」から「政府承認」へ移行しつつある転換点として、今週は記憶されることになるかもしれません。
【詳細】
- 米国、最高水準のAIモデルを審査するFINRA(金融業規制機構)のような監視機関の設立を検討。この計画は現在、ホワイトハウスのスージー・ワイルズ首席補佐官によって検討されていると、関係者は匿名を条件に語った。この計画はまだ公表されていないため、関係者は匿名を希望した。
米国の計画は、今週初めにGoogle DeepMindの最高経営責任者であるデミス・ハサビス氏が発表した政策提言と一致している。ハサビス氏は来週、ワシントンで政策立案者と会談し、自身の計画の実現に向けてロビー活動を行う予定だ。彼の提言は、マイクロソフトの最高経営責任者であるサティア・ナデラ氏、そして普段は激しいライバル関係にあるOpenAIの最高経営責任者であるサム・アルトマン氏とSpaceXの最高経営責任者であるイーロン・マスク氏からも称賛を受けた。
ハサビス氏が考案した計画では、連邦政府が監督する標準化団体の一環として、独立した技術専門家からなる委員会がAIモデルを審査することを提案している。人材と計算能力の費用を賄うため、同氏は業界がこの自主規制組織に資金を提供し、この組織が政府機関や米国の国立研究所と協力して、サイバーセキュリティや生物学的脅威といった分野におけるモデルテストプロトコルを開発することを推奨している。
https://x.com/i/status/2078285393699418186 - →ホワイトハウスは「ゴールドイーグル」と呼ばれるプログラムを開始した。これにより、アメリカにおける最先端AIの公開に対する統制力が強化され、どの企業が新しいモデルへのアクセスを許可されるかについて、政府の明確な承認が必要となる。自主的な参加は終焉を迎えるかもしれない。
https://x.com/i/status/2078282821228171632 - 習近平国家主席が上海で開催された世界AI会議に初登壇した際の演説の主な要点:
・演説は、習主席のモットーである「100年に一度の大変革が世界中で起こっている」という言葉から始まった。
・世界は「AI技術における前例のない活発なイノベーションの時代に突入した」と述べ、これは「ガバナンスにとって大きな機会であると同時に大きな課題でもある」ことを意味すると指摘した。
・AIの「オープン性とウィンウィン」を促進するため、オープンソースへのコミットメントを再確認した。
・AIに国家安全保障の概念を「過度に拡大解釈」し、ある国の国家安全保障を他国よりも優先することに警鐘を鳴らした。
・中国はAIにおける「新たな歴史的不正義」の発生に反対する(演説の中で最も強い表現の一つ)。
・中国は今後5年間で、発展途上国に対し「AI研修・セミナープログラム」および「協力センター」において5000の機会を提供すると表明した。ASEAN、アラブ連盟、アフリカ連合、CELAC、上海協力機構、BRICSを例に挙げた。
https://x.com/i/status/2077974037427290202 - Kimi K3は依然として5~8カ月最先端から遅れているとの指摘。
https://x.com/i/status/2077966871484370951 - AI2040を巡る「議論の地図」を整理。AI2040が「前提とする世界観」とそれに対する二つ(AGIピル内部/外部)の異なる質の議論が存在します。できるだけ客観的な立場で書いた。AGIピル的なリソースのある意味での集大成的な立ち位置のため、議論を追うことには意味があると思われる。
https://x.com/i/status/2077088970966798597 - デミス・ハサビス「脳が持つあらゆる認知能力を備えた汎用人工知能(AGI)は、おそらくあと数年で実現するでしょう」「私たちは特異点のまさに始まり、人類にとって新たな時代の幕開けに立っていたことに気づくはずです」
ハサビスはあまりハイプとかしない印象だったけど、AGIが数年以内で産業革命を10倍にした規模が10倍早く起きると言い、特異点という言葉も使っている。凄いな。インタビューでもちょくちょく言ってたけどこうやって記事にして自分で出すとは。
https://x.com/i/status/2076979793430806685 - 最近ASIピルって言葉が流行り始めそう。AGIピルが産業爆発カルダシェフ・スケール文明だとしたら、ASIピルが人類の絶滅になる。AGIピルを飲んでないと産業革命レベルの世界観だけどAI2040はこの三者の立場が入り乱れてリアクションがされてる感じ。 https://x.com/i/status/2076930491283087614
- ジャック・クラーク、ジェフ・ディーン、ノーム・ブラウン、タイラー・コーウェン、ショルト・ダグラス、ジョン・シュルマン、ヨシュア・ベンジオ、エリック・シュミット、ディーン・ボールなど、200人以上の研究者や経済学者が、AIの経済的影響に備えるため、各国政府や機関が今すぐ行動を起こすよう求める声明に署名した。
https://x.com/i/status/2076665221431857367 - AI開発競争の停止運動が米国で起きている。
https://x.com/i/status/2076532947067552212
