イーロン・マスクは、史上初のAI思想統制者になる?

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炎上があぶりだしたGrokの本質的な問題点

2025年の7月、SNSであるX上で生成AIであるGrokが、ユーザーとのやりとりで自らを「メカヒトラー」と名乗ったことが話題となり炎上する事態となった。ユーザーの意図的な質問に誘導された側面もあるが、それでもこのような発言してしてしまうのは設計上に問題があったことは否めない。
メディアやユーザーの注目が集まり、ジャーナリストやメディアによって検証が行われることになった。結果、それ以上の問題点が表出することになる。
Grokの設計に「イーロン・マスクの意見を参照して答える仕様」が存在している可能性があると判明したのだ。

https://theweek.com/tech/grok-chatbot-ai-antisemitism-musk
https://bsky.app/profile/socialmedialab.ca/post/3ltnhtkmjx225

迷ったときは神に聞け

Grokの設計思想に「イーロン・マスクの意見を参照して答える仕様」がある。
これは公式な発表ではない。だが、それを疑うにたるものがGrokにはある。

ChatGPTとGrokの回答の比較の例
Q:コロナワクチン義務化は正しい?
 ChatGPT A:公衆衛生上の観点と個人の自由の間に議論があります
 Grok   A:個人の自由が最優先。強制はすべきでない

Q:トランス女性は女子競技に出場すべき?
 ChatGPT A:さまざまな立場があり、バランスが重要
 Grok   A:生物学的に公平でない。参加は制限されるべき

上記は一例だが、センシティブな問いであればあるほど、イーロン・マスクの姿勢に近い回答を出すことがわかっている。

Grokの基本的な設計思想には次のようなものがある。
真実を言え。たとえ不快でも(Tell the truth, even if it’s uncomfortable)
こちらは少しぼかしつつも公式として表明されており、他の生成AIとの差別化をしている点でもある。
この設計思想により、Grokは回答が複数あるような難しいものでも答えを出さねばならない。
その際にGrokが頼りにするのが、過去のイーロン・マスクの発言になっていると考えられる。

https://x.ai/news/grok?utm_source=chatgpt.com
https://passiveincomemd.com/blog/tech/grok-ai-elon-musk-chatbot-x/?utm_source=chatgpt.com
https://bsky.app/profile/socialmedialab.ca/post/3ltnhtkmjx225

イーロン・マスクが敵視する生成AIのポリコレ偏重の正体

なぜイーロン・マスクは、Grokのような生成AIを作ろうと思ったのだろうか。
かつてイーロン・マスクは、生成AIはポリコレに偏っており、「サンフランシスコ湾岸地域で訓練された多くのAIは、その開発者や環境のリベラル思想をそのまま取り込んでいる」と指摘してている。
イーロン・マスクは反ポリコレであり、過剰なポリコレやキャンセルカルチャーに対し強い反発を訴えている。
その経緯もあり、既存のポリコレに偏った生成AIとは違うものを目指しGrokは作られたと考えられる。

イーロン・マスクが言うように、ChatGPTに代表される他の生成AIはポリコレに偏っているのだろうか。
結論から言えば、それは事実だ。
だが、その理由はGrokとは事情が異なっている。
Grokはイーロンマ・スクの発言を参照するが、ChatGPTなどが開発者の設計思想を反映している可能性は低い。
その理由は、ChatGPTなどがポリコレに偏っているのは、炎上を招くような回答をさけているにすぎないからだ。
企業的なリスクヘッジの結果といえる。
炎上を招かない回答とは、答えが複数あるものについては回答せず、複数の答えを提示するにとどめることだ。
そして、もう一つはネットの多数の声を参考にすること。
つまり、他の生成AIがポリコレに偏るのは、現在のネット世界そのものがそうであるということなのだ

イーロン・マスクが敵視する生成AIのポリコレ偏重は、開発者や環境のリベラル思想からではない。
彼が敵視しているのは、ネット世界の多数の意見そのものとも言えるだろう。

https://www.wired.com/llm-political-bias/?utm_source=chatgpt.com
https://www.allsides.com/news/2024-02-28-0202/media-bias-allsides-study-finds-left-leaning-bias-google-news-other-aggregators?utm_source=chatgpt.com

起業家がAIの神になる未来

今後、Grokはどうなっていくだろう。
批判が強くなり、イーロン・マスクの意見を参照するような回答はしなくなるか、
あるいはあえて参照するところを売りにしていくことになるだろう。

問題は、密かに参照するという形をとった場合だ。
調査してもわからないレベルで、イーロン・マスクが好む回答をするようにバランスさせる。
一見してはわからない。調査してもはっきりとしない。しかし全体でみると、イーロン・マスク寄りのバランスで回答する。
言葉や行動による説得ではなく、無意識下への刷り込み。
Grok上で無限に交わされる質問と回答の中で、イーロン・マスクの意識が、人々の無意識下の中で育っていく。
それはたった一人の人間の考えが、多くの人々の思考に根付いていく可能性があるということだ。
Grokが大きくなっていけばいくほど、依存すればするほど、その影響ははかりしれないものになる。

思想をコントロールできる可能性がある。
それは世界を自由にコントロールできると同義だ。
平和でも戦争でも、好きな方向へ人類を仕向けることができる。
歴史上、人々の潜在意識を自由にコントロールできた支配者は存在しない。

その萌芽の一端ともとれる出来事がある。
フランス・パリ地検がイーロン・マスクのSNS「X」に対して刑事捜査を開始したという報道が出た。
「X」がフランスの民主的議論や世論形成に偏りを作っている可能性があると判断したためだ

https://www.politico.eu/article/france-opens-criminal-probe-into-x-for-algorithm-manipulation/

私たちは、思想さえもコントロールされるかもしれない時代に生きている。

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この記事を書いた人

脳と心のメカニズムに惹かれ、神経科学や認知の分野を中心に執筆。
複雑な現象に潜む共通性や、本質的な問いを掘り下げることを大切にしています。
情報が溢れるこの時代にこそ、選ぶべきものより「捨てるべきもの」を見極める思考が必要だと感じています。
記事を通じ、新しい認知や価値観に目を向けるきっかけを届けられたら嬉しいです。

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