NSOグループの米への売却とガザ和平案 アメリカ1984

2025年10月10日、イスラエルのITメディアCALCALISTは、イスラエルのNSOグループが米国の投資家に売却されることを報じ、すぐにTechCrunchが同グループに確認を取ったうえで記事を公開した。
NSO to be acquired by U.S. investors, ending Israeli control of Pegasus maker – CALCALIST
https://www.calcalistech.com/ctechnews/article/s1jgvmitgx#google_vignette
Spyware maker NSO Group confirms acquisition by US investors – TechCrunch
https://techcrunch.com/2025/10/10/spyware-maker-nso-group-confirms-acquisition-by-us-investors/
買収したのはハリウッドのプロデューサーであるロバート・シモンズで、数千万ドルの取引である以上のことは明らかにされていないが、同誌の取材によれば、本社と中核事業はイスラエルに留まり、イスラエル政府機関の監視下に置かれ続けるという。
NSOグループは国際的に活躍する(悪い意味で)スパイウェアのベンダであり、これまで何度となくさまざまな国家の検閲や弾圧、ジャーナリストの盗聴、人権侵害に加担したと糾弾されてきた。アメリカでは2021年にブラックリストに入り、製品供給が禁じられている。
これまでイスラエル政府は同社のスパイウェアを政府の監督下におき、販売先を制限することで外交の武器として利用してきた。つまり、イスラエル政府の要求に応じるならばスパイウェアを売ってやってもいい、という交渉を行ってきた。それほどに魅力的な威力のあるツールなのだ。まさかと思う方も多いと思うが、アラブ諸国との関係改善(アブラハム合意)、ハンガリーやインドおよびメキシコと関係を改善し国連でイスラエルを非難する決議を棄権させたりする成果をあげたと言われている。
Metaのレポートからわかる外交兵器としてのサイバー兵器
https://note.com/ichi_twnovel/n/n8c7b76d3e3b1
このことから考えると、ガザの和平案の発表とNSOグループの売却になんらかの関係があるのではないかと勘ぐりたくなる。トランプ政権がイスラエルの要求に応じる代わりにNSOグループのスパイウェアを手に入れた、という可能性だ。
さらにタイミングを合わせたかのように、サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)やアメリカ国土安全保障省(DHS)はサイバーセキュリティ担当者を含む多数の職員が、移民・関税執行局(ICE)、税関・国境警備局(CBP)、連邦保護局(FPS)、つまり移民排斥担当に異動となった。
Homeland Security Cyber Personnel Reassigned to Jobs in Trump’s Deportation Push – Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-10-08/homeland-security-cyber-personnel-reassigned-to-jobs-in-trump-s-deportation-push
アメリカの移民排斥業務ではさまざまな監視、傍受ツールが投入されており、NSOグループのスパイウェアが新しく加わればさらに監視は強化できる。アメリカ版の1984はオリジナルの小説を超えて拡大しつつある。