bioshokの最新AI事情 2026年4月11日~4月17日

偏執的に世界中のAI情報を収集・発信するbioshokの週刊連載。この1週間にピックアップした主要ニュースをまとめて紹介。
【要約】
・Mythos余波 ── 各国政府が本格対応、Anthropicとトランプ政権に関係改善の兆し
先週発表されたClaude Mythos Previewの衝撃波が引き続き拡大している。英イングランド銀行と金融行動監視機構(FCA)が国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)と緊急協議を開き、Mythosが悪用された場合の脅威を評価中。今後2週間以内に英国の主要銀行・保険会社・取引所に対してリスク説明を行う見通しだ。MythosはTLO(多段階攻撃シミュレーション)を最初から最後まで完遂した初のモデルでもあり、専門家が推定20時間かかる内容を10回中3回で全ステップ達成した。
EAコミュニティの80000hoursは、Mythosの本質的な脅威はハッキング能力そのものではなく、ミスアライメント的振る舞いの兆候とテイクオフ(急激な能力跳躍)の可能性にあると指摘している。
政治面では大きな転換があった。米国政府がMythosへのアクセス権を取得し、ダリオ・アモデイ氏がホワイトハウス首席補佐官と会談する予定が報じられ、数週間にわたった対立に関係改善の兆しが見え始めた。スコット・ベッセント財務長官はMythosを米国が中国に先んじるための革新的な一歩と称賛。トランプ政権のAI担当だったデイビッド・サックス氏も、以前のAnthropic(アンソロピック)の研究には批判的だったが、Mythosについては「より正当な研究だ」と認めている。さらにスティーブ・バノン氏が「アンソロピックのやり方は正しかったと思う」と発言し、テクノリバタリアンとMAGA勢力の間でAI安全性を巡る立場の違いが鮮明になりつつある。
・Anthropic Opus 4.7リリース
AnthropicはOpus 4.7をリリースした。Mythos Previewよりも意図的に能力を抑えた設計だが、各種ベンチマークでOpus 4.6を上回る。高度なソフトウェアエンジニアリングと視覚タスクで大幅な改善を達成し、禁止またはリスクの高いサイバーセキュリティ用途のリクエストを自動検出・ブロックするセキュリティ対策を搭載している。Mythos級の能力を抑制しつつ実用性を高めるという、新しい段階のモデルリリース戦略が見える。
・OpenAI ── 創薬特化モデルと続くセキュリティ事案
OpenAIが生物学・創薬・翻訳医学に特化した初の専用フロンティア推論モデル「GPT-Rosalind」をリリース。創薬に通常10?15年かかるプロセスの短縮が期待される。科学発見の加速に向けたドメイン特化型モデルという新たな方向性を示した。
一方、アルトマン氏への脅迫は続いている。先週の火炎瓶投擲に続き、自宅への2度目の攻撃(発砲事件)が発生。容疑者はAIによる人類滅亡の可能性を警告しており、アルトマン氏を殺害する意図があったとされる。AI開発を巡る社会的緊張が暴力的な形で表面化した事例として深刻だ。
・日本 ── 国産AI基盤と政策構想
ソフトバンク・NEC・ホンダ・ソニーの4社が中核となり、国産AIを開発する「日本AI基盤モデル開発」を設立。ソフトバンクとNECが基盤モデル開発を担い、ホンダとソニーが自動車・ロボット・ゲーム・半導体分野での活用を推進する。また、ALIGNの高橋氏から「日本AGI基盤構想」が提出された。AIインフラ拡張の推進を前提としつつ、AGIを明示的に想定し、米中二極化がもたらす文明的リスクや安全性を包括的に扱った提言で、日本の産官学からこの規模の大局的資料が出るのは初めてといえる。
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全体として、Mythosを契機にAI安全性が抽象的な議論から現実の政策課題へと完全に移行した一週間でした。英米の金融・安全保障当局がAIモデルの脅威評価に直接動き、トランプ政権とAnthropicの関係にも雪解けの兆しが見え始めています。「最良のモデルは公開されない」時代の輪郭がさらに鮮明になる中、日本でも国産AI基盤の構築とAGIを前提とした政策構想が動き出しました。
【詳細】
- 英イングランド銀行(中央銀行)と金融行動監視機構(FCA)が英国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)と緊急協議を開き、米アンソロピックが開発した未公開の人工知能(AI)モデル「Claude Mythos Preview(クロード・ミトス・プレビュー)」が使われた場合のサイバーセキュリティ上の脅威について評価していると伝えた。今後2週間以内に英国の主要銀行、保険会社、取引所の代表者らに対してクロード・ミトス・プレビューがもたらすリスクについて説明する見通しだ。
https://x.com/i/status/2043492189163196606
- Claude Mythosはハッキングが「Scary」なのではなくミスアライメント的振る舞いの兆候とテイクオフ可能性が「Scary」だとするEAの80000hours記事。
https://x.com/i/status/2043508922133455349
- Mythos PreviewはTLO(多段階攻撃シミュレーション)を最初から最後まで完遂した初のモデルであり、10回の試行中3回で全ステップを達成した。専門家が完了するのに推定20時間を要する内容とのこと。
https://x.com/i/status/2043714525816623259
- デイビッド・サックス氏:アンソロピック社の恐喝に関する研究は「デマと言っても過言ではないほど恥ずべきもの」だったが、ミトス社については「こちらはより正当な研究だ」と述べている。
https://x.com/i/status/2045302497510912438
- 昨日、米国政府がMythosへのアクセス権を持っていることが判明。今朝、ダリオ・アモデイ氏はホワイトハウス首席補佐官と会談する予定。関係改善の兆しが見えてきた。
https://x.com/i/status/2045371350878245309
- OpenAIが生物学・創薬・翻訳医学に特化した初の専用フロンティア推論モデルとして「GPT-Rosalind」をリリース。創薬に必要な10~15年を短縮できる可能性。科学発見の加速への期待。
https://x.com/i/status/2044886104911012031
- AnthropicはOpus4.7をリリース。Claude Mythos Previewより意図的に低い能力にしているが、様々なベンチマークにおいてOpus 4.6よりも優れた結果。Opus 4.7は、高度なソフトウェアエンジニアリングにおいてOpus 4.6から大幅に改善し、視覚的タスク能力も大幅に向上。
・Opus 4.7は禁止されている、またはリスクの高いサイバーセキュリティ用途を示すリクエストを自動的に検出してブロックするセキュリティ対策を搭載してリリース。
https://x.com/i/status/2044794976958374377
- テクノリバタリアンとMAGAの対立が鮮明になってきている。
「アンソロピックのやり方は正しかったと思う」と、スティーブ・バノンは@semaforbenに対し、AI企業アンソロピックと国防総省の対立について語った。「非常に複雑な問題だ。ピート・ヘグセスを心から尊敬しているが…この状況では、あまりにも危険すぎると思う」
https://x.com/i/status/2044887847585681621
- サム・アルトマン氏宅襲撃事件の容疑者はOpenAIのCEOを殺害しようとしており、AIによる人類滅亡の可能性を警告していた。
https://x.com/i/status/2043855071658778703
- サム・アルトマン氏の自宅に日曜日(4月12日)の朝発砲事件が起こったようだ。二日前には火炎瓶が投げ込まれていたため、これで2度目の攻撃。
https://x.com/i/status/2043489093997433203
- ソフトバンクとNEC、ホンダ、ソニーグループの4社が中核となり、国産AIを開発する日本AI基盤モデル開発を設立。ソフトバンクとNECがAIの基盤モデル開発を手がけ、ホンダとソニーは開発したAIを自動車やロボット、ゲーム、半導体などの分野に活用する方向だ。
https://x.com/i/status/2043167564562587693
- ALIGNの高橋氏から「日本AGI基盤構想」が提出された。日本の産官学もAIインフラ拡張には同意してるが、「AGIを前提」にし、米中二極化が人類文明の不安定さに繋がり得るという観点も入れつつ、極端なリスクや安全性も考慮に入れて、その推進を包括的に提言している大局的な資料は初めてだろう。
https://x.com/i/status/2044699931102023807
- スコット・ベセント米財務長官はアンソロピック社の「ミトス」を、AI分野でアメリカが中国に先んじるための革新的な一歩だと称賛した。これは、軍事活動における役割をめぐってワシントンと対立してきた業界リーダーを支持する発言である。
https://x.com/i/status/2044288543271596390
