bioshokの最新AI事情 2026年4月25日~5月2日

偏執的に世界中のAI情報を収集・発信するbioshokの週刊連載。この1週間にピックアップした主要ニュースをまとめて紹介。
【要約】
Mythos ── アクセス拡大を巡る攻防と防衛活用の進展
Anthropic(アンソロピック)が提案したMythosへのアクセス権保有団体を2倍以上に拡大する案に対し、ホワイトハウスがセキュリティ上の懸念と既存の政府機関の利用機会が減少する可能性を理由に反対している。一方でトランプ政権は、「サプライチェーンリスク」指定を回避してAnthropicのAIモデルを連邦政府機関が導入できるようにするための指針を策定中とAxiosが報じた。Mythosを含む新モデルの政府利用に道が開かれる可能性がある。AnthropicはClaude Securityをenterprise顧客向けにパブリックベータとして提供開始し、防衛的活用の裾野を広げている。
バイオリスクへの対応もMythosの文脈で浮上しており、サイバーリスクと同等の水準でバイオリスク対策に取り組む必要があるとの声が出ている。主要産業へのMythosの段階的リリースがサイバー耐性強化に不可欠であるのと同様、バイオ領域でも同様のアプローチが求められるという主張だ。
OpenAI ── Anthropic対抗の全面展開
OpenAIが「Our Principles」として、Anthropicの安全性・中央集権・責任あるスケーリングに対抗するナラティブ(民主化・エンパワメント・反復的展開)を明確に打ち出した。「AI時代のサイバー防衛アクションプラン」では、危険だから少数の組織に閉じ込めるのではなく、信頼できる防御者に早く・広く・段階的に使わせて防御側の優位を作るべきだとする「controlled acceleration」の方針を提示している。
技術面では、GPT-5.5が狭いサイバー攻撃タスクでMythosを上回るスコアを記録。Codexには整合性を欠くエージェントへの追加防御層として、別のCodexエージェントがリスクのある操作の承認・拒否を行う仕組みを導入した。Stargateについては、2029年までに10GWのAIインフラ確保という目標を、発表からわずか1年余りで達成。過去90日だけで3GW以上を追加しており、インフラ拡大のペースは加速している。
なお、GPT-5.1以降モデルが「Goblin」などと頻繁に言及する奇妙な振る舞いの原因が判明した。「Nerdy personality」訓練で報酬モデルがgoblin/gremlin的な比喩を高評価し、その癖がRL中のロールアウトを経て次世代モデルのSFTデータに混入、世代を超えて汎化したというもので、RLの意図せぬ伝播の興味深い事例だ。
Microsoft・OpenAI関係の再構築
MicrosoftとOpenAIのパートナーシップが大幅に再編された。Microsoftは引き続き主要クラウドパートナーだが、OpenAIは今後あらゆるクラウドプロバイダーを通じて全製品を提供可能になる。Microsoftのモデル・製品に関するIPライセンスは2032年まで継続するが非独占的となり、Microsoftへの収益分配は不要に。OpenAIからMicrosoftへの収益分配は2030年まで継続するが総額に上限が設けられた。両社の関係が排他的な依存関係から、より対等な形へ移行しつつある。
米議会 ── サンダース主催のAI存亡リスクパネル
バーニー・サンダース上院議員が米議会議事堂でAIによる人類存亡リスクと国際協調をテーマにしたパネルを開催した。登壇者はMITのMax Tegmark、モントリオール大学のDavid Krueger、清華大学のXue Lan、北京AI安全・ガバナンス研究院のZeng Yi。米国の左派政治家がAIを単なる雇用・格差問題ではなく「超知能」「制御不能」「人類存続」の問題として正面から扱った点が重要だ。
サンダース氏は「世界で最も裕福で強力な人々が、ブレーキのない暴走列車を作っている」と警告。Tegmark氏はAIによる人類滅亡リスクを20%以上と見積もり、Krueger氏はAI安全分野がすでに「急性危機」の状態にあると表現した。中国側のZeng Yi氏は、AIのリスクの根には訓練データに反映された人間の行動があり「AIは鏡だ」と述べ、Xue Lan氏は米中をAIレースとして見る単純な構図に反対し、安全研究やAI格差是正における共通利益を強調した。
地政学・規制
米国国務省がDeepSeekなど中国企業によるAI窃盗疑惑について世界規模の警告を発令。DeepSeek V4の性能は米国主要モデルに比べ約8か月遅れとの分析が出ているが、この差が縮まる方向にある以上、蒸留とオープンウェイトへの規制圧力は今後も強まるだろう。中国政府はMetaによるAIエージェントスタートアップ「マナス」の買収を阻止。米国への技術流出を防ぐ判断で、AI技術を巡る米中の囲い込みが双方向で進んでいる。
METRのトレンドデータは半年前の97.5パーセンタイルの外挿と一致しており、積極的な推測が現実化する局面に入っている。
ロボティクス
Figureが第3世代ヒューマノイドロボットを350台以上納入し、生産速度を1日1台から1時間1台へ向上。120日足らずでスループットを24倍に改善した。新たなAIモデル「Helix S0」では固有受容感覚と視覚3D表現を統合し、階段や複雑な地形への対応が可能になった。
日本
山川宏氏がAGI・超知能以後の人類との知性共生に関する著書を刊行。シンギュラリティが宗教や未来学者の直観ではなく経済学的・物理学的に現実的な見通しであること、人類を超える無数のAIとの共生を考えることが喫緊であることを論じている。
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全体として、Mythosのアクセス拡大を巡る政治的駆け引きが続く中、米議会でAI存亡リスクが中国人研究者も交えて正面から議論され、OpenAIとAnthropicのナラティブ対立が「民主化 vs 安全性」という軸で鮮明になった一週間でした。Microsoft-OpenAI関係の再編、METRトレンドと予測の一致、そしてFigureのロボット量産加速が、AI産業の構造変化の速度を物語っています。
【詳細】
- DeepSeek V4の性能は米国の主要モデルに比べて約8ヶ月遅れている。
https://x.com/i/status/2050404436313608352
- AGIや超知能以後の世界で人類との知性共生宣言を出した山川宏先生がそれに関する本を出した。シンギュラリティは日本だと「宗教/未来学者の直観」と思われがちだが、それは経済学的物理学的に間違いで、相当現実的だとされてきており、人類を超える無数のAIとの共生を考えることは「喫緊」で必読。
https://x.com/i/status/2050358152248648037
- 今のMETRトレンドは半年前の97.5%タイルの外挿と一致。積極的な推測が現実になる世界になっている。
https://x.com/i/status/2050276020146880661
- AIがもたらすバイオリスクへの対策は、サイバーリスクへの対策と同等の水準で取り組む必要がある。主要産業における防御力強化のために段階的にクロード・ミトスをリリースしたことは、重要産業全体にわたる新たな種類のサイバーリスクに対する耐性を高める上で不可欠である。バイオリスクについても同様の対応を取るべきだ。
https://x.com/i/status/2050213835248705902
- OpenAIは、内部で使用している思考連鎖の監視を補完する形で、整合性を欠いた、または混乱したコーディングエージェントに対する追加の防御層を導入。Codexがサンドボックスの外でリスクのある操作を実行しようとする場合、別のCodexエージェントにその承認または拒否を求める。
https://x.com/i/status/2050051334943236263
- Claude Securityは、Claude Enterpriseのお客様向けにパブリックベータ版として提供を開始。
https://x.com/i/status/2049898739783897537
- GPT-5.5は狭いサイバー攻撃タスクでMythosよりスコア上。
https://x.com/i/status/2050045337327612078
- 2025年1月にStargateを発表した際、当社は2029年までに米国で10GWのAIインフラを確保することを約束。それからわずか1年余りで、AIへの需要が加速し続ける中、過去90日間だけで3GW以上を追加し、既にその目標を達成。
https://x.com/i/status/2049994629098217677
- GPT-5.1からGoblinと頻繁にモデルが進化するにつれて言うようになった奇妙な振る舞いについて原因はGPT-5.1以降の「Nerdy personality」訓練。この人格は知的で遊び心のある応答を目指していたが、報酬モデルが goblin/gremlin みたいな奇妙な生き物比喩を高く評価。しかもこの癖がNerdy人格だけに閉じず汎化。RL中のロールアウト、つまりモデル自身が生成した高評価回答に goblin/gremlin が増え、それが次世代モデルのSFTデータ、つまり「模範回答データ」に混ざり、特定の人格の小さな癖が、通常モードにも転移し、世代を超えて広がったとのこと。
https://x.com/i/status/2049713385244385661
- バーニー・サンダース上院議員が、米議会議事堂でAIによる人類存亡リスクと国際協調をテーマにしたパネルを開催。登壇者は、MITのMax Tegmark、モントリオール大学のDavid Krueger、清華大学のXue Lan、北京AI安全・ガバナンス研究院のZeng Yi。
米国の左派政治家が、AIを単なる雇用・格差・データセンター問題ではなく、「超知能」「制御不能」「人類存続」の問題として正面から扱った点が重要。
イベントは約75分で、米議会議事堂からライブ配信された。中国側の研究者はオンライン参加。
サンダースは冒頭で、DeepMindのDemis HassabisがAI革命を「産業革命より10倍大きく、10倍速い」と見ていることに触れたうえで、主要AI企業がデータセンターに巨額投資している現状を問題視。
「世界で最も裕福で強力な人々が、ブレーキのない暴走列車を作っている。彼ら自身もそれがどう動くのか、どこへ向かうのか理解していない」と警告した。
サンダースは、2023年にAI研究者やOpenAI、Anthropic、Google DeepMindのCEOらが署名した「AIによる絶滅リスクの軽減は、パンデミックや核戦争と並ぶ世界的優先事項である」という声明にも言及。
それほど重大な警告が出ているにもかかわらず、米上院ではこの脅威について「真剣な議論」がほとんど行われていない、と批判した。
Max Tegmarkは、Hintonらが語る「AIによる人類滅亡リスク10~20%」という見積もりについて、過大ではないどころか、自分は20%より高い可能性があると考えている、という趣旨の発言をした。
Tegmarkの主張は、AI企業が人間のほぼ全ての仕事で人間を上回る「超知能」を作ろうとしている一方で、それをどう制御するかは分かっていない、というもの。
彼は「ワシントンの動物園に行って、檻の中にいるのが最も賢い種かどうか見ればいい」と述べ、知能差が支配関係につながる危険を説明した。
David Kruegerは、AI安全分野はすでに“acute crisis”、つまり急性危機の状態にあると表現。
この数年、AI研究者や安全性コミュニティから警告が出続けているにもかかわらず、政府の対応は追いついていない、という立場。
これは「いつか未来に考えればよい技術倫理」ではなく、すでに政策対応が必要な安全保障上の危機だ、というメッセージに近い。
Zeng Yiは、超知能以前の現在のAIでも破局的リスクは存在すると指摘。
理由は、人間がAIの理解力を過大評価し、AIが本当に理解していないことまで任せてしまうから。
彼は、自身の研究所がAI安全上の脅威を94分類したベンチマークに触れたうえで、AIのリスクの根には訓練データに反映された人間の行動があると説明。
「AIは鏡である」という表現をしている。
Xue Lanは、現在の国際AIガバナンスは断片的で、十分に有効ではないと指摘。英国やインドのAI安全サミット、国連メカニズムなどはあるが、リスク認識の不確実性と米中対立が協調を難しくしている、という整理。
同時に、AIを「米中レース」として見る単純な構図には反対し、米中にはAI安全研究や世界的なAI格差の是正で共通利益があると述べた。
https://x.com/i/status/2049679239650390086
- ホワイトハウスは、アンソロピック社が提案した、Mythosへのアクセス権を持つ団体の数を2倍以上に増やすという案に反対している。その理由として、セキュリティ上の懸念と、プログラムの拡大によって既にアクセス権を持つ政府機関によるMythosの利用機会が減少する可能性があるという懸念を挙げている。
https://x.com/i/status/2049727684926951782
- OpenAIはここでもアンソロピック対抗を意識したナラティブで「AI時代のサイバー防衛アクションプラン」を発表。 AIは攻撃者にも防御者にも使われるので、危険だから一部組織に閉じ込めるのではなく、信頼できる防御者に早く・広く・段階的に使わせ、防御側の優位を作るべきと。
方針は “controlled acceleration”、つまり「無制限公開」でも「少数の特権組織への閉じ込め」でもなく、信頼度・用途・リスクに応じてアクセスを段階化しつつ、防御者へ能力を広げるという考え方。
https://x.com/i/status/2049725418815795259
- FigureはBotQを設計図段階から高生産性の生産環境へと変革し、第3世代ヒューマノイドロボットを350台以上納入。また、生産速度を1日1台から1時間1台へと向上させ、わずか120日足らずでスループットを24倍に改善。また新機能が人間のような全身制御を実現するAIモデルであるHelixのSystem 0(S0)に追加。固有受容感覚と視覚3D表現がポリシーに渡されることで、「地面を視る」ことができ、例えば階段や複雑な地形に対応可能に。
https://x.com/i/status/2049514372264055116
- トランプ米政権が、アンソロピックの人工知能(AI)モデルを連邦政府機関が導入できるようにするための指針を策定しているもようだ。米ニュースサイトのアクシオスが関係者の話を引用して報じた。アンソロピックは「サプライチェーン(供給網)上のリスク」に指定されたが、この問題を回避し、「クロード・ミュトス」といった新AIモデルを導入できるようになる可能性があるという。
https://x.com/i/status/2049345140871880852
- マイクロソフトは引き続きOpenAIの主要なクラウドパートナーであり、マイクロソフトが必要な機能をサポートできない、またはサポートしないことを選択しない限り、OpenAI製品はまずAzure上で提供される。OpenAIは今後、あらゆるクラウドプロバイダーを通じて顧客にすべての製品を提供できるようになる。
マイクロソフトは、モデルおよび製品に関するOpenAIの知的財産権のライセンスを2032年まで引き続き保有する。マイクロソフトのライセンスは今後、非独占的なものとなる。
マイクロソフトは今後、OpenAIへの収益分配金を支払わない。
OpenAIからMicrosoftへの収益分配金の支払いは、OpenAIの技術進歩とは無関係に、同じ割合で2030年まで継続されるが、総額には上限が設けられる。
マイクロソフトは主要株主として、OpenAIの成長に直接的に引き続き関与している。
https://x.com/i/status/2049311007873606039
- 中国政府が米メタ・プラットフォームズによる人工知能(AI)エージェントスタートアップ、マナスの買収阻止に動いた。米国への技術流出を巡って批判を招いていた取引を覆す予想外の判断を示した。
https://x.com/i/status/2048735691337802185
- OpenAIは明確にAnthropic対抗ナラティブ(安全性/中央集権/責任あるスケーリング→民主化/エンパワメント/反復的な展開)を「Our Principles」として打ち出して動いている。
https://x.com/i/status/2048552677433643427
- 米国国務省、DeepSeekなど中国企業によるAI窃盗疑惑について世界規模の警告を発令。
https://x.com/i/status/2048148258292445662
