INDOS UNVEIL ピックアップ 2026年5月29日~6月4日 データセンター・AIインフラに対する世論の急反転と反対運動

2026年5月29日~6月4日にピックアップした85件の情報をまとめました。
1. データセンター・AIインフラに対する世論の急反転と反対運動
カリフォルニア州モンテレーパークが住民投票で全米初のデータセンターの恒久禁止を可決した(賛成86%超)。Heatmap Proの調査では米国人の71%が自宅近くのデータセンター建設に反対し、9か月前は賛否がほぼ拮抗していた世論が反対へ約49ポイント振れた。18~34歳では80%が反対しており、AIによる雇用喪失への不安が背景にあるとされる。少なくとも12州が州規模の建設凍結を検討中。一方で、データセンター建設反対の世論に便乗したAI生成画像の量産スパム投稿が数百規模で確認され、富裕層側からは「中国の資金による工作」とする対抗ナラティブも立ち上がっている。
この急反転自体が敵対国による影響工作の標的・利用対象になりうる可能性もある。
2. AIシステムの悪用・脆弱性とエージェントの新たな攻撃面
MetaのAIサポートチャットボットに「このアカウントに新しいメールアドレスを紐づけてほしい」と伝えるだけで、オバマ前政権のホワイトハウス公式アカウントや宇宙軍幹部など著名Instagramアカウントの乗っ取りが成立したと、ハッカーらが主張している。人間が介在しないAIエージェントが新たな攻撃面となった事例である。ペプチドやホルモン補充療法(HRT)を扱う企業がソーシャルニュースサイトのRedditにスパムを仕込み、ChatGPTやグーグルAI検索の回答を操作する「AEO(AIエンジン最適化)」を展開。「無検閲AI」は陰謀論に権威の装いを与えている。一方、スターバックスはAI在庫管理ツールを9か月で撤回、マイクロソフトは新AI「Scout」で利用者を「依存させる」計画が内部文書で露見し、アマゾンは社内のAI利用ランキングを不正の横行を受けて廃止した。
3. 偽情報・陰謀論の氾濫と「半分が偽情報」の世界
ジャスティン・ビーバーが「ディディことショーン・コムズに人身売買され、最初の相手はオバマ大統領だった」と告白したとする記事が陰謀論サイト発でSNS上に拡散した。ビーバー本人は一切発言していないが、記事を読み上げた動画は1日で約55万回再生された。英国では退職済みの元警官が、マスク氏のAI「Grok」やSNS上でヘンリー・ノワク逮捕へ関与した警官の一人だと誤って名指しされ、安全確保のため避難に追い込まれた。親中アカウントは、AnthropicのClaudeが中国市場に参入したとする偽情報を画像1枚を起点に拡散した。
「目にする情報の半分以上が偽・誤情報になる」世界に突入した、と言えそうだ。
4. デジタル規制・主権をめぐる攻防と権威主義的統制
EUは「簡素化」を掲げたデジタル規制緩和によって、自らの権利保護の枠組みを解体しつつあると専門家が警告した。主権クラウド構想も米ハイパースケーラーを排除できず、公的データの約7割は米企業が扱える状態が残る。英国の競争・市場庁(CMA)はグーグルにAI検索からの出版社オプトアウト機能の提供を義務づけ、欧州議会は議会内の既定検索エンジンをグーグルから仏のQwantへ切り替えた。トランプ大統領はAIのフロンティアモデル公開前の任意審査を柱とするAI安全保障の大統領令に署名。一方、米国内ではパランティアがIRS(米内国歳入庁)の全データを開放する「スーパーAPI」を構築し、政府効率化省(DOGE)の不正を内部告発した職員の車のブレーキが切断されるなど、監視と統制の強化も並行して進んでいる。
先週からの変化
先週はロシアSDAの認知戦が中心で、ドイツ向けWikipediaクローンによるAIへの偽情報グルーミング、Blueskyの実アカウント乗っ取り、パリの「ピッグヘッド作戦」、アルメニア選挙工作、GRUの工作員養成大学など、国家系アクターの作戦と基盤の暴露が大量に並んだ。今週はこれらがほぼ姿を消し、焦点はデータセンターへの世論反発の本格化(全米初の恒久禁止)と、AIエージェント自体がもたらす実害(Metaチャットボットによるアカウント乗っ取り)へ移った。先週「AIシステムへのAPT攻撃」「10分で外せるAIのガードレール」など可能性・実験として語られたAIリスクが、今週は現実の被害として現れている。教皇レオ14世のAI回勅や、台湾・バルトをめぐる地政学の比重は低下した。一方、トランプ政権による統制・監視の強化は両週を貫く事項で、今週はパランティアのIRSデータ統合やDOGE内部告発者への物理的危害が新たに加わった。