ウェビナーレポート: 世界のファクトチェック団体が集うイベント「Global Fact 2026」

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 2026年7月15日、新領域安全保障研究所(Institute for New Operational Domains Studies: INODS)は株式会社Specteeの情報分析チームでマネージャーを務める大久保陽一氏をお迎えし、「世界中からファクトチェック団体が集うイベント『Global Fact 2026』帰朝報告」と題したウェビナーを開催した。大久保氏は、ウェビナーの前半ではロシアの影響工作とそれに対する調査報道の貢献について、後半では自然災害時のSNS活用例について紹介した。

 大久保氏はまず、「Global Fact 2026」におけるロシアの影響工作に関するパネル「How to Investigate Russia」での議論の内容について紹介した。ロシアの情報干渉に対して、欧州各国は情報戦の非対称性、大規模言語モデルの偽情報などによる汚染、ロシアの情報攻撃に対する反応型の対応といった課題に直面している。こういった課題を踏まえ、同パネルではウクライナ、エストニア、モルドバといったロシアの影響を大きく受ける国々のジャーナリストが登壇した。そして、オンラインのみならずオフラインも含め、ロシアの影響工作に対して調査報道が果たす役割が紹介された。例えば、モルドバでは2022年に親露派抗議運動が展開される中、この抗議運動への参加者に20ユーロの現金報酬が配布されていたこと、また、逃亡オリガルヒによる遠隔からの干渉行為があったことが調査報道により明らかにされた。また、2024年のモルドバ選挙を狙った工作活動において、その構成員に対してロシア国防省傘下銀行から月給形式の継続的な金銭提供があったことが明らかにされた。こういった現実的な動きと並行し、オンラインでは偽アカウントやハッシュタグを用いた反EU、親露的な情報拡散も展開されていた。調査報道はこのように状況を明らかにし、発信することでモルドバ選挙における混乱を緩和することに貢献した。

 ついで、後半部分では自然災害時におけるSNSの活用例について紹介した。まず、自然災害に直面した際、SNSは救助のためのコミュニケーションツールとなり得るものの、その活用範囲は災害の規模や停電の有無などに依存してしまうという限界を指摘した。実際、東日本大震災において、インターネットを用いた救助要請が有効だった事例は極めて少なかったという。一方で、大久保氏はSNSが効果的にコミュニケーションを促した事例として長野県の令和元年台風19号水害の事例を紹介した。長野県危機管理部の公式SNSアカウントが救助要請の窓口となり、「#台風19号長野県被害」のハッシュタグを付け、写真・位置情報とともに投稿を行うよう呼びかけた。その結果、被災者との間でコミュニケーションが生まれ、救助要請者の不安軽減や状況把握に繋がり、SNSが110番や119番通報を補完する仕組みとして機能した。

 これら報告の後、一田氏、鈴木氏、また、ウェビナー参加者との質疑応答では、ロシア化学兵器のサプライチェーン特定、大規模言語モデル汚染に関する欧州での最新傾向、分断や不信感に対するファクトチェックの向き合い方などに関して議論が交わされた。

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この記事を書いた人

鈴木 涼平のアバター 鈴木 涼平 リサーチフェロー

一橋大学大学院法学研究科・特任助教、博士(法学)。専門は偽情報やデジタル影響工作で、国際政治、及び、比較政治分野において研究を行なっている。これまでに笹川平和財団の戦略・抑止グループや中曽根平和研究所の「情報空間のリスク研究会」に所属。笹川平和財団では「インド太平洋地域の偽情報ポータル」の運営や、「情報戦・認知戦ニュースレター」の発刊を担務。『侵食される民主主義ー内部からの崩壊と専制国家の攻撃』(原著:Larry Diamond, *Ill Winds: Saving Democracy from
Russian Rage, Chinese Ambition, and American Complacency*, London: Penguin Books, 2019)の翻訳出版にも携わった。

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