なぜ参政党を選んだのか?〈前編〉外国人不安、YouTube視聴

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2025年の参院選は我が国の情報環境を考えるうえで重要である、という認識に立ち、新領域安全保障研究所は参政党への投票行動に影響を与えた要因を調査することにした。すでに発表されているレポートや記事を整理する中で、当研究所で実施予定だったアンケート調査を先行して、複数回実施しているものを発見し、急遽、その実施主体に分析を依頼することとした。それが社会調査支援機構チキラボだった。 同団体は当研究所が想定していた以上の豊富なデータを持ち、分析体制もあり、当初、期待していた以上の報告書をいただくことができた。この場を借りて感謝したい。

今回は同団体の報告を前編・後編に分けてご紹介し、続いてその内容を踏まえて当研究所としての視点で整理を試みる予定である。

まず、前編をお届けする。

INODS UNVEIL 一田和樹

チキラボによる参院選調査から結果を報告します。なぜ参政党に投票するのか、参政党に投票した人はどのような人で、どのようなメディアと接触しているのか。どのような行動が参政党に投票しやすくさせているのかを調査、分析しました。

● 分析では特定の社会経済的地位との結びつきは確認できない。
● 一方で、YouTubeによる選挙情報取得時間が増えること、外国人に対する脅威・不安・不公平認知の強さは、参政党投票行動と結びついていた。
● 選挙戦終盤に報道された「ロシアによる情報工作疑惑」の影響についても調査。影響は小さい一方で、参政党支持者は、親露的意識が相対的に強かった。
● 参政党支持者は、他の人と同程度にファクトチェック情報に触れていたが、認識を修正したのは一部である一方、「信念の残響(ビリーフエコー)」や「バックファイア効果」と思われる状況が確認された。

目次

選挙期間中に国民から15.8%、れいわから7.1%獲得

——2025年7月の参議院選挙では、参政党が議席を大幅に増やしました。参政党に投票した人たちは選挙戦序盤から投票を決めていた人たちが多かったのでしょうか。

今回チキラボでは、パネル調査という手法を用いて、2つの調査を行っています。

1つ目の調査は、東京都議選直後の6月29日〜7月1日に実施した調査に回答してくれた方のうち、「東京都議選で参政党に投票した人」と「東京都有権者全体」に対して、参議院選挙でどのような行動をとったのかを7月26日〜8月4日の期間に再調査したものです。このうち前者のデータを【都議選参政党投票者グループ】と、後者を【都議選東京都全体グループ】と呼び分けたいと思います。

もう1つの調査は、参議院選挙の期間中に同一対象者を3回にわたって追跡した調査です。全国の人々を対象に、政治意識や、選挙期間中のメディアの接触行動、さまざまな認知の変化を追った調査です。こちらを【全国グループ】と呼びます。

2つの調査の概要は、こちらをご覧ください。

チキラボによる2025年参院選パネル調査の概要

このうち、【全国グループ】のデータより、第1回目、第2回目、第3回目における参政党への投票者推移をみていきましょう。ここでは3回目までの推移をたどるため、3回の調査すべてに回答した911名のデータをご紹介します。

選挙戦開始時にあたる第1回調査時点では、参政党を投票先と決めていた人の割合は比例区で4.4%(n=40)、選挙区でも同じく4.4%(n=40)でした。それが、選挙戦中盤にあたる第2回目調査時点になると比例区で5.2%(n=47)、選挙区で5.6%(n=51)。そして実際の投票先を聞いた第3回目調査では、比例区で7.1%(n=65)、選挙区で8.8%(n=80)となりました。選挙戦序盤にも投票先の候補として一定の割合を獲得できていましたが、選挙戦中盤から終盤にかけてさらに支持を拡大した、という動向が見えます。

——参政党に流れた人は、どこからきたのでしょう。

かつての国民民主党支持者や、一定の無党派層を取り込んだことが、朝日新聞の調査などでも指摘されています(朝日新聞2025年7月22日配信「国民民主→参政、支持の流れ 朝日新聞・阪大ネット意識調査、5月以降顕著」)。

また、もともと無党派で参政党に投票した人たちは、無党派の中でも保守的傾向を持っていたことが田中辰雄氏の分析で明らかになっています(田中氏のnote・2025年7月26日公開記事「参政党の支持者はどこから来たのか?」)。

チキラボの調査ではどのような傾向が見られるでしょう。参政党支持者の流れを「序盤で参政党を支持していた人の、その後の推移」と、「最終的に参政党に投票した人の、それまでの推移」の両方から確認してみます。ここでは比例区投票先の推移について、確認したいと思います。

第1回調査時点で、参政党を投票先と回答した人(n=40)の82.5%(n=33)は、そのまま第2回目調査時点でも参政党を選択。さらにその中から78.8%(n=26)が実際に参政党に投票しました。

2回目調査時点から参政党以外に移った人たちの動向も確認しましょう。10.0%が日本保守党、2.5%がNHK党、2.5%が「投票に行かない」、2.5%が「まだ決めていない」を選択していました。

逆に「最終的に参政党に投票した人」はどうでしょう。その多くは序盤から参政党支持をしていた人ですが、第1回目調査時点で「投票先を決めていない」と回答していた層から7.2%を獲得。そして自民党と回答していた人から2.2%を獲得、立憲民主党は2.1%、国民民主党は15.8%、れいわ新選組からは7.1%を獲得していました。

外国人に厳しく安倍氏を支持し右派傾向が強い

チキラボ調査のデータでも、一貫して参政党を選択し続けていた人たちが、安倍晋三元首相にシンパシーを抱き、右派的なイデオロギーに共感していることも見えてきます。

今回、様々な政治家への感情温度についても調査しました。0度から10度刻みで100度まで選択肢を提示し、好感度が強ければ強いほど高い温度を選んでもらうというものです。

第2回目調査で「安倍晋三」氏への感情温度を調査したところ、第1回目〜3回目調査時点で一貫して比例区で参政党を選び続けていた人ほど、安倍氏への感情温度が高くなっていました。

● 第1回目〜3回目調査時点で一貫して参政党を選び続けていたグループ:60.8度(※一元配置分散分析の結果、下から1つ目・2つ目のグループとの間に有意差あり)
● 1回目・2回目調査時に他党や投票に行かないなどを選択したが、最終的に投票先を参政党としたグループ:46.7度
● 参政党を選んだこともあったが最終的には参政党に投票しなかったグループ:53.3度
● 一貫して参政党を選択しなかったグループ:43.3度
● 一貫して投票に行かないことを選択したグループ:44.2度

また、自分自身の政治的立ち位置をリベラル(左派)的か、保守(右派)的かの軸で自己評価をしてもらう質問も行いました。0が最もリベラル、5が中間、10が最も保守という形で数値を選択してもらうものです。やはり「一貫して参政党を選択した」グループで7.3度という平均値となり、他のグループと比べ最も高い値となりました。

参政党支持者は総じて、外国人に対して厳しいのが特徴です。右派傾向が非常に強く、さらにはジェンダー平等や多様性に批判的で、積極財政を支持します。欧州などでの「極右ポピュリズム政党」の特徴の多くは、参政党の支持者にも当てはまるようです。

YouTube視聴時間が伸びたが、テレビはさらに伸びた

——今回の選挙では、SNSなどはどのような役割を果たしたのでしょうか。

今回はこれまで以上に、YouTubeが参照された選挙だと言えそうです。「YouTube政治」や「切り抜き政治」が当たり前になっており、選挙終盤にかけてその接触時間も増えていました。

ただし、今回の選挙では、テレビ報道での選挙情報も後半にかけて伸びています。選挙前の特集に各社が力を入れたことが影響しているのではないでしょうか。

YouTube視聴時間が長い保守、参政、自民、国民

——参政党支持者はどうですか?投票行動と関わりのあるものは?

参政党支持者は、やはり他党よりもYouTube参照度が高い傾向で、第3回目調査時点の比例区参政党投票者の平均値は3.1時間です。また、選挙期間中の第1回調査時点から3回目調査時点の伸びでは、参政党は立憲民主党と日本維新の会との間に有意差も確認できました。

注)それぞれの調査時点で過去1週間の選挙情報の接触時間を質問した回答の推移
注)全く触れていない=0、30分未満=0.25、30分以上1時間未満=0.75、1時間以上3時間未満=2、3時間以上5時間未満=4、5時間以上10時間未満=7.5、10時間以上15時間未満=12.5、15時間以上20時間未満17.5、20時間以上=20と値を変換して平均値を計算。20時間以上を選択する割合はテレビがいずれの時点でも5%前後、YouTubeが3%前後となっている。それ以外のメディアは1%前後。割合としては小さいため、少数の長時間接触者の影響が大きく出過ぎないように、20時間以上は20と値を変換した。

支持者が中高年に偏ってる政党もあるので、この伸びは世代差を表している可能性もあります。そこで、さまざまな要因の影響を取り除いた上で、YouTubeでの選挙情報接触時間が伸びると参政党投票に影響があるのか、ということも多項ロジスティック回帰分析という手法で分析してみました。

多項ロジスティック回帰分析とは、従属変数が複数の名義カテゴリからなる場合に、1つの参照カテゴリを基準とし、他の各カテゴリ(ここでは参政党)が選ばれる傾向を、オッズ比によって評価する分析手法です。今回は、参政党と比較した時にわかりやすい傾向を示していた立憲民主党を参照カテゴリとした分析結果を示していきます。

オッズ比とは、「あるカテゴリが選ばれる割合」と「選ばれない割合」の比(=オッズ)を、参照カテゴリと比較した指標であり、1を基準にして高ければ選ばれやすく、低ければ選ばれにくいことを意味します。以下の分析では、有意確率(p値)に「*」または「+」の記号が付された箇所に注目します。

「*」または「+」の記号が付された箇所は統計的に有意な結果を示しており、該当する変数が、立憲民主党と比較して参政党を選ぶ傾向にどのように影響しているかを理解する手がかりとなります。

(なお、「***」は有意水準が0.1%以下、「**」は1%以下、「*」は5%以下、「+」は10%以下であることを示しています。これは影響の強さを表すのではないので注意してください。有意水準が低いほどその変数と従属変数に関連があると高い確率で判断できることを意味しています。)

オッズ比が1より大きい場合は、立憲民主党支持者と比べて参政党を選ぶ傾向が高まる要因と考えられ、オッズ比が1未満の場合は、参政党を選ぶ傾向を弱める要因(=立憲民主党のほうが選ばれやすくなる要因)と解釈できます。

分析に使用した変数、外国人不安や政治家の評価基準などの質問項目についてはこちらをご覧ください。
チキラボによる2025年参院選パネル調査の分析に使用した変数

YouTube視聴時間が長い人は立憲や維新より参政党に

以下の分析結果では、YouTubeで選挙情報を取得する時間が伸びると、立憲民主党よりも参政党に投票しやすくなる、ということがわかります。ただし、他の政党を参照カテゴリーとして分析を行ってみたところ、YouTube接触時間の伸びに有意な影響があったのは、立憲民主党と日本維新の会と比べた場合のみでした。

つまり、視聴時間が長い人ほど立憲や維新以外の政党へ投票するよりも、参政党に投票しやすくなるという関係は、統計的には示されませんでした。これは立憲や維新支持者以外の支持者の間では、すでにYouTubeで選挙情報を取得することが浸透していることを示唆しています。

他にも「YouTube以外の動画で選挙情報を取得する時間が伸びた場合」「職場・家族・友人などとの会話で選挙情報を取得する時間が伸びた場合」にも、参政党に投票しやすくなっていました。

なお、統制変数として投入した自分自身の政治的立ち位置を示す変数、外国人脅威因子(逆転)、安倍晋三好感度も有意となっています。保守であると自認している人ほど、または外国人に対してなんらかの脅威や不安、不公平感を抱いている人ほど、あるいは安倍晋三氏が好きな人ほど、立憲民主党より参政党に投票しやすくなる、という結果です。とりわけ、外国人脅威因子のオッズ比の高さは顕著です。

そして基本属性を統制したとしても、これらの要因が単独で効果を持っている、という点も、注目しておく必要があるでしょう。この結果は特定の社会経済的地位と参政党支持が結びついていないことを示しており、外国人を脅威と見なすような、ある特定の認知枠組みを持った人たちに支持されるという動向が見えてきます。

テレビを見ても見なくても参政党投票に影響しない

——新興政党支持者が「オールドメディア」と呼ぶテレビとの接触は、投票行動に影響はありますか?

上記の多項ロジスティック回帰分析では、テレビから選挙情報を取得する時間が増加するほど、立憲民主党よりも参政党に投票しやすくなる、という関係は有意にはなっていません。

比例区投票先の政党別にみた、1回目調査時点から3回目調査時点のテレビでの選挙情報接触時間の変化を確認しても、参政党は他党と有意な差はありませんでした。つまり、選挙期間中のテレビへの接触は、参政党投票行動に対して大きな影響は与えていないと言えそうです。

なお、テレビ以外の「オールドメディア」とされる新聞やラジオについても、同様の結果となっています。

ショート動画・リール動画視聴は投票行動に影響しない

——ではSNSにおける「切り抜き動画」と呼ばれるショート動画やリール動画の影響はどうでしょうか。

TDAI Labの野田氏、樋口氏による2025年7月25日配信の「参政党、「敵」を定めて支持者結束 SNSの4万投稿を分析」では、自民党や参政党、日本維新の会、共産党など、少なくない政党でショート動画が制作されている状況が明らかになっています。しかし同記事では、ショート動画だけではエンゲージメント率や再生数が伸びるわけではない、とも分析しています。

チキラボの調査では、普段からどのようなメディアを利用しているか、という質問の中にYouTubeやXといったSNSのアプリ別への回答だけではなく、一般動画か、ショート動画か、という違いにも着目し質問しました。選択肢として設定したのは以下の4つです。

● YouTubeのショート動画
● Xのリール動画
● Instagramのリール動画
● TikTok動画

ショート動画を各政党が戦略的に用いていた状況で、投票行動に対しては何か影響はあったのでしょうか。

まず比例区投票先政党別に、基本的な分布を確認します。統計的に有意であったYouTubeのショート動画と、Xのリール動画の分布のグラフのみ、掲載します。

こうしたショート動画(切り抜き動画)の普段の接触状況が、投票先に対して影響を与えることはあったのか。結論としては、ショート動画が影響を与えていることは確認できませんでした。

YouTubeショート動画、Instagramリール動画、TikTok動画、Xのリール動画に関する回答を先ほどの多項ロジスティック回帰分析に投入して分析してみましたが、いずれも有意な結果ではありませんでした。ショート動画視聴は、投票行動にまで影響を及ぼすような独特のSNS利用様式とまでには至っていないのでしょう。

しかし、この参院選期間中、切り抜き動画の生産と拡散について国民民主党と参政党の動向を調査した徒然研究室の記事を見ると、参政党の拡散規模は非常に大きく、YouTube政治からショート動画政治へと足場が広がっていく可能性は注視していく必要があります。

参政党の英語表記は”Party of Do It Yourself”。「自分たちで作り上げていく政党」であることを強調しており、現在の参政党の「底力」は、支持者ネットワークを活用した「横展開」にもあることがわかります。こうした「横展開」がショート動画政治ともマッチしたとき、投票行動に大きな影響を与える「変数」になっていくかもしれません。

保守系YouTube視聴者が多い参政党と日本保守党

——参政党支持者は、どのようなYouTubeを見ているのでしょうか。

政治系YouTube番組のなかで、登録者数が多い番組で、保守系の番組について、過去1週間の間に見たことがあったかを調査しました。3回すべてでこの質問をしていますが、投票後の第3回調査データの傾向をご紹介します。

まず、比例区の参政党投票者の特徴は、「この中に視聴したものはない」との回答率が、参院選で議席を獲得した政党の中で2番目に低かったことです。61.5%の人が「この中に視聴したものはない」と回答しており、37.0%の人が選択肢にあがった番組を1つ以上は視聴していた、ということになります。ちなみに、「この中に視聴したものはない」との回答率が最も低かったのは日本保守党で52.6%でした。

参政党に投票しなかった人と有意な差が認められたもので、参政党投票者が閲覧経験のあった番組はReHacQ(10.8%)、高橋洋一チャンネル(21.5%)、真相深入り!虎ノ門ニュース(10.8%)、三橋TV(13.8%)、たまきちゃんねる(6.2%)、ABEMA prime #アベプラ(7.7%)でした。このように、参政党投票者の保守系のYouTubeチャンネルの視聴率が非常に高い結果に。だからこそ「保守党か参政党か」で悩むのでしょう。

なお、国民民主党投票者も高橋洋一チャンネル視聴率は高く(13.5%)、れいわ投票者も高橋洋一チャンネル(13.5%)と三橋TV(13.5%)の視聴率が高い結果となっています。反外国人で保守党と悩むか、積極財政でれいわと悩むか、あるいはトータルで国民民主と悩んでいる、という参政党支持者像が、ここまでの分析結果からは見えてきます。

後編へつづく 「なぜ参政党を選んだのか?〈後編〉ロシア工作疑惑、ファクトチェックの影響」

9月10日正午ウェビナー開催
参院選 参政党への投票行動を探る。約1000名への継続調査の結果 荻上チキ、中村知世

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この記事を書いた人

この記事は、新領域安全保障研究所(INODS)が社会調査支援機構チキラボに委託した調査の分析をもとに、社会調査支援機構チキラボに執筆していただきました。

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