最近の総務省~選挙関連の話題を中心に

総務省
  • URLをコピーしました!
目次

選挙とSNS

 昨年の兵庫県知事選あたりから、SNSや動画配信サイトが選挙に及ぼす影響が重大視されるようになった。いわゆる「SNS選挙」の問題である。それに伴って選挙時のネット規制を求める動きが活発化した。公選法の改正時には、選挙におけるインターネット利用のあり方を検討し必要な措置を講じるとの文言が附則に盛り込まれた。

 選挙を管轄する総務省は「SNS選挙」への関与にはあまり乗り気ではなく、旗振り役は勘弁という様子である。

 村上総務大臣は今年2月の衆院予算委で選挙の在り方をめぐり法規制の必要を問われた際に、各党派で方向性を示してほしいとの見解を述べた。現行の法制度ではカバーしきれないので新たに法制化する必要がある、総務省がリードすべきといった趣旨の質問に対し、各党各会派でやってほしいという姿勢を崩さなかった。基本的には現行法の枠内で対処する方針のようだ。公選法は議員立法なので各党協議会で議論してほしい、選挙の自由と表現の自由がある以上は総務省が率先して動くことは難しいという話だった。

 総務省で偽・誤情報問題を扱う検討会(デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会)が6月にまとめた報告書案でも、選挙に関する記述は驚くほど少ない。脚注で「おことわり」をしている程度である。

なお、選挙におけるSNS利用の在り方については、表現の自由や政治活動、選挙運動の自由にも関わる重要な問題であり、各党各会派において議論が行われるべき事柄である。2025年6月 現在、「選挙運動に関する各党協議会」において議論されている状況であり、本取りまとめはその制度的対応の在り方について方向性を示すものではない。(強調引用者)

 選挙時の情報流通上の問題については検討会で何度か言及があり、問題意識は共有されていたが、深堀りされることはなかった。選挙や災害など特定の場面における「有害情報」よりも闇バイトの募集情報などの「違法情報」を喫緊の課題として優先せざるをえないという事情に加えて、先述の総務大臣の発言にあるように立法府の出方に従うという方針が反映されているようだ。

外国からの介入疑惑

 今年7月の参院選では外国からの影響工作が疑われ、某インフルエンサーの暴露記事をきっかけに文字通り蜂の巣をつついたような騒ぎになった。平デジタル大臣はサイバーセキュリティ会社など複数の民間から報告があったことを明らかにし、サイバー安全保障担当大臣として政府の体制強化と新法制定の検討に意欲を見せた。外国からの介入は偽・誤情報とは限らないとも示唆している。

 一方で村上総務大臣は、関連省庁と連携して総合的な対策を進める方針を示しているが、これはあくまで偽・誤情報に関する国内向けの政策であり、主としてプラットフォーム事業者への規制を念頭に置いている。

 総務省の偽・誤情報関連の検討会では、国外からの干渉について議論されることがほとんどない。レコメンデーションの弊害やマイクロターゲッティングの危険性が指摘されることはあっても、外国勢力による干渉という文脈で語られることはまれである。要するに偽・誤情報は安全保障上の問題としては扱われていない。そのあたりの線引きは明確になされているという印象を受ける。

偽・誤情報対策の現在

 選挙や災害などの特殊で限定的な場面で流通する偽・誤情報にどう対処するかは、前身の健全性検討会から引き継がれた課題であり、制度的な対応が必要であるとされてきた。今回の報告書案では、これらの偽・誤情報を含む有害情報を「違法化」する道筋が示されている。

違法化された場合における対応のイメージ

「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会制度ワーキンググループ 中間取りまとめ(案)~新たな違法・有害情報対策のための羅針盤~」(p.35)より(リンク)

 違法化の可能性は今年6月の参院憲法審査会でも示唆された。このとき検討会のメンバーが参考人として意見陳述し、選挙や国民投票での対策として偽情報の違法化と削除に言及した。ただし、偽情報などの有害情報は絞り込みが難しい上に表現の自由に関わることから、検討会の報告書案ではこれらを新たに違法化する際には「十分な実態把握と国民の理解が欠かせない」としている。

 違法化の他には以下のような対策が検討されている。
収益化停止措置 経済的なインセンティブ以外の動機による投稿に対しては効果が限定的であり、表現の自由や経済活動の自由を制約しかねないとする一方で、災害時など迅速な対応が求められる場合には必要な措置になりうるとしている。
アカウント開設時の本人確認の厳格化 偽情報や誹謗中傷などへの対策に加えて犯罪捜査への活用も期待されているが、匿名表現の自由を守る観点から慎重論がとられている。

 SNS上のなりすまし型偽広告などデジタル広告にからむ問題に関しては、広告主向けのガイドラインが策定された。偽・誤情報を拡散しているコンテンツに広告が掲載されることで、広告主が意図せず拡散に加担してしまうリスクを指摘し、情報空間を汚染し民主主義を損なうものとして注意喚起している。

問われる迅速化と透明化

 今年4月の情報流通プラットフォーム対処法の施行に合わせて検討会ではガイドラインを策定し、適切な運用のための指針を示した。同法は誹謗中傷をはじめとする権利侵害情報について、大手プラットフォーム事業者に対応の迅速化(原則として7日以内)と運用状況の透明化を求めることを目的としている。災害時のデマやフェイクなどの偽・誤情報を含む「有害情報」は迅速化規律の適用外である。

 総務省ではプラットフォーム事業者に対し、要請やヒアリングを通じて対応の迅速化と透明性の確保を求めてきたが、今回の法改正でそれがさらに強化されることになる。また、検討会の報告書案では、自主的な取組みを基本路線としつつ、うまく機能しない場合は制度的な対応を含めた共同規制的な枠組みへ移行することが示された。まずは本年中に業界団体の行動規範を策定することを目指すという。

各種制度的対応のイメージ

「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会制度ワーキンググループ 中間取りまとめ(案)~新たな違法・有害情報対策のための羅針盤~」(p.48)より(リンク)

 報告書案は意見募集にかけられたが、募集期間(2025年7月1日~22日)内に検討会の議事録が出そろうことはなかった。意見募集に際して十分な判断材料を提供したとはいいがたい。しかも、報告書案をまとめる回の会合が非公開で行われたため、その議事録が9月に入って公開されるまでは取りまとめに至る経緯が明らかにならず、不透明感が残った。プラットフォーム事業者に対して迅速化と透明性確保を求める総務省自体が迅速性と透明性を欠いているという矛盾は、改善すべき点であると思われる。

よかったらシェアお願いします
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

某大手マスコミから捏造報道の被害を受け、メディア業界の闇を垣間見て以来、虚偽・捏造報道をはじめとするメディア関連の問題が最大の関心事となった。なかでも「偽・誤情報対策」は、様々な利害と思惑が交錯する十字路のようで興味が尽きない。SNSで報道被害の告発を続ける一人のユーザーとして、総務省・有識者会議の動向を観察中。
Xアカウント @TinyfrenzyKid
note https://note.com/koyagi_village/
捏造報道体験記の他にメディア関係のトピック、偽・誤情報対策やファクトチェック関連の記事など、いろいろ書いています。フォローよろしくお願いします。

メールマガジン「週刊UNVEIL」(無料)をご購読ください。毎週、新着情報をお届けします。

目次