参議院選挙にまとめサイトの影 コミュニティノート分析

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 選挙における偽・誤情報対策に注目されているコミュニティノート。2024年の兵庫県知事選挙では公開され続けたコミュニティノートがなく、選挙に対しては機能しなかったと結論付けたが、2025年の参議院選挙では公開割合が向上して一定の役割を果たすことが明らかになった。注目すべきはまとめサイトに代表されるミドルメディアの存在だ。

目次

ノートの公開割合は上昇

 2024年の衆議院選挙から一般社団法人コード・フォー・ジャパンと共同でコミュニティノートの収集と分析を行っている。兵庫県知事選挙では116投稿に165件のノートが付与されたが、公開は0、一時公開は5で選挙期間終了まで公開され続けたノートはなかった。そのため有権者の役には立たなかったと判断した。一方、参議院選挙では680投稿に824件のノートが付与され、公開は112、一時公開は40、非公開47、評価中が625となった。

 公開割合はノート単位で11.7%(投稿単位13.6%)となり、一時公開を加えると16.6%(投稿単位19.1%)となった。非公開と評価中は表示されないため、多くのノートが有権者の目に触れることがない状況ではあるが、兵庫県知事選挙に比べれば公開割合が増加している。

参考:「コミュニティノートは、選挙時には機能しないが、無意味ではない」(藤代 裕之)

 ノートが付与されたアカウントを分類したところ、最も多かったのは「その他」466、次に参政党140、「メディア」43、「まとめサイト」31、日本保守党25、国民民主党22、自民党21、立憲民主党19、れいわ新選組12、共産党10、社民党9、日本維新の会7、その他の政治家5、NHK党5、無所属連合4、「ファクトチェック団体」3、減税日本1、チームみらい1だった。

2025年の参議院選挙でノートが付与されたアカウントを分類し、それぞれの分類に含まれるアカウントの数を集計した。最も多かった「その他」466に、参政党140、「メディア」43、「まとめサイト」31がつづき、さらに、各政党の候補者がつづく。(図:藤代 裕之作成)

 個別アカウントで最も多くノートが付与されたのは参政党の神谷宗幣代表で82、そのうち公開されたノートは33あり、これは公開されたノート112の約3割を占めている。アカウント分類の「その他」の中にも参政党を応援するアカウントがあり、参政党の割合が多く、他の政党に比べると大きく差がついた。要因としてメディアによる報道の増加により参政党に注目が高まったことでノートが付与されやすくなった可能性も考えられる。

 ノートは誤解を招きやすい投稿に対し、多様な意見を反映させるための機能であり、付与された投稿は偽・誤情報というわけではないことに注意しておきたい。

スプートニクを説明する

 「メディア」の中にはロシアのスプートニクのアカウントに対するノートが含まれる。公開3、評価中1、合計4つのノートが付与されている。

 7月14日に参政党のさや候補にインタビューしたことを紹介する投稿に対し「ロシア政府の意向に添ったニュースを発信するプロパガンダ機関です」「sputnikは、ロシアによる偽情報を用いたプロパガンダを防ぐことを目的に、EU加盟国からのアクセスがブロックされているメディアです」といった内容のノートが付与されている。

 ノートは投稿者が削除することはできない。本稿の読者にとってはスプートニクがどのようなメディアなのかは理解しているだろうが、Xの投稿で流れてきて見てしまったというスプートニクを知らない有権者にも注意を促すことができる点で非常に有益だ。

 公開されている3つのノートの情報源は、NHK、日本経済新聞、インフォシークに配信されたガジェット通信であり、メディアはノートを補強する重要な情報源となっていることが分かる。

参政党のさや候補にインタビューしたことを紹介する「スプートニク」の投稿(左)。「閲覧したユーザーが…」の下にノートが表示される。右はノート部分のスクリーンショット

まとめサイトへの抑止力

 「まとめサイト」では、ツイッター速報、NewsSharing、トータルニュースワールド、Share News Japan、Tokyo.Tweet、ハム速、もえるアジア、JapanNewsNaviのアカウントの投稿にノートが付与されていた。なお、JapanNewsNaviは、参議院選挙中に指摘があったロシアによるSNSの選挙介入疑惑により凍結されたアカウントに含まれている。

アカウント名フォロワー数認証ノート数公開一時公開非公開評価中
ツイッター速報227,471122  10
NewsSharing138,74371 67
Total News World118,8204   4
Share News Japan285,7394   4
Tokyo.Tweet75,9132   2
ハム速374,1971   1
もえるアジア90,3551   1
Japan News Navi(60,540)1   1

「まとめサイト」のアカウントの投稿に付与されたノートの数など(表:藤代 裕之作成)

 現時点で確認できる31の投稿のうち16が自民党や石破茂首相(当時)に対するネガティブな内容であった。例えば、石破氏がカップラーメンを食べているテレビ画像とともに「一国のトップと思われてる人がカップラーメン食べて時間ないアピールって、恥ずかしくないの?」といったものや、「【緊急】自民党「過半数割れなら野党に政権やらせる。好き放題言ってきた責任を取らせる」といったものだ。

 まとめサイトは世論工作に利用しやすく、ネットにおける脆弱性となっていることを、「JICAホームタウン騒動はどのように拡大したのか」(藤代 裕之)で指摘した。

 総務省の有識者会議「プラットフォームサービスに関する研究会 第二次とりまとめ」においても「特に、ミドルメディアを中心とした偽情報の生成・拡散・流通メカニズムに関して、実態把握と分析を進めていくことが必要であると考えられる」との記載がある。

 自民党や石破首相にネガティブな、参議院選挙にまとめサイトの影がある。特定政党にネガティブになるのはお金儲けのアテンション・エコノミーなのか、どこかの国や組織による影響工作なのか、ミドルメディアの詳しい分析が必要だろう。

 ノートが付与されると、同じURLが含まれる投稿に対してもノートが表示されるという仕組みがある。まとめサイトのXアカウントは投稿時にまとめサイトの記事を紹介するためにURLが含まれる。この機能により、Twitter速報に対しては49件と83件の投稿にノートが表示されている。NewsSharingではノートが公開された投稿は削除されていた。ノートが付与されると収益化も無効になるためアテンション・エコノミーに対する対抗もできる。まとめサイトの拡散力に対してノートは抑止力となる。

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この記事を書いた人

藤代 裕之のアバター 藤代 裕之 リサーチフェロー

法政大学社会学部メディア社会学科教授
広島大学文学部哲学科卒業、立教大学21世紀社会デザイン研究科前期課程修了。徳島新聞社で記者として司法・警察や地方自治などを取材。NTTレゾナントに転職し、ニュース編集やNTT研究所のR&D支援(gooラボ)、新サービス開発などを担当した。2013年から法政大学社会学部メディア社会学科准教授、2020年に教授。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表理事。著書に『ネットメディア覇権戦争
偽ニュースはなぜ生まれたか』(光文社)、編著に『フェイクニュースの生態系』(青弓社)などがある。

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