LGBTQ+コミュニティ排斥に動く「Project2025」

1.はじめに
今回は、GPAHE(Global Project Against Hate and Extremism)によるレポート「Project 2025 September 4th update 」( https://globalextremism.org/post/project-2025-september-4th-update/ )を紹介する。本レポートは、米国におけるトランプ政権成立後、その支持母体の一つである極右団体「ヘリテージ財団」が主導する権威主義体制樹立へのロードマップ「Project2025」の経過・進行について整理したものになっている。GPAHEは、以前よりProject 2025 の追跡調査、経過観察を行なっている。分析レポートは毎週更新されている。
GPAHEのProject2025更新情報ページ
https://globalextremism.org/p25-updates/
今回は、ヘリテージ財団が保守的なベビーブームを推進する手法と、トランプ政権によるLGBTQ+コミュニティ排斥への闘争が拡大しているとされる実態を検証している。さらにプロジェクト2025政策が米国労働力に与える影響についても分析されている
2.Project 2025 について
GPAHEが追跡調査を行なっている「Project 2025」とは、先述の通りトランプ政権の支持母体であるヘリテージ財団によって策定されている政策目標である。
トランプの危険な「ほしいものリスト」Project2025
https://inods.co.jp/topics/2908/
プロジェクトの中には「行政権の強化」「大統領に対しより忠誠心のある官僚機構への再編」などが含まれ、政権内でも多くの影響力ある人物の支持を得ている。また、この計画はキリスト教ナショナリズムとの結びつきについても指摘されており、過激な宗教思想と政治権力の合体によって、合衆国の行政に深刻な影響を及ぼすことが懸念されている。
今回のレポートで指摘されている出生率向上政策や性的マイノリティに対する政策は、Project 2025内における、政府の介入によって社会秩序を再構築しようとする大規模な試みであり、その影響はアメリカ社会全体に広がる可能性がある。具体的な内容は下記の通りであり、トランプ支持者たちがなにを考え、どのように現実を受け止めているかを知る手がかりにもなっている。
3.「望ましい赤ちゃん」を増やすマンハッタン計画
ヘリテージ財団は、アメリカの出生率を向上させるために、Project 2025 において政府が家庭生活に積極的に介入することを提案している。特に、理想的な家庭像として、白人・異性愛者・キリスト教ナショナリズムの価値観を持つ「理想的な赤ちゃん」の誕生を促進することを目指している。望ましい赤ん坊のための核家族を生むマンハッタン計画(第二次世界大戦での核兵器開発プロジェクトの名称)なのだ。この計画は、出産奨励金や多子家庭への叙勲など、家族の価値を強調する政策を提案し、ナチスやスターリン政権時代の多子家庭支援策に似たアプローチを取っている。トランプ政権はこの計画を積極的に支持しており、出産促進を福祉問題として位置づけ、特に「自由恋愛」や「ポルノ」「同性愛」などを非難している。シリコンバレーの権力者、ピーター・ティールやイーロン・マスクもこの運動を支援しており、彼らは出産奨励主義を経済的な利益と捉えている。Project 2025のイベントでは、白人至上主義者が登壇するなど人種差別的な思想が色濃く反映されている。さらに、懸念される問題として、ヘリテージ財団の政策には、移民を排除し、白人至上主義的な人口構成を維持しようとする意図があり、彼らの提案には「グレート・リプレイスメント」陰謀論との関連も指摘されている。このような動きにはヘリテージの内部でも反発があるとされ、こうした政策を「優生学」と批判する声も上がっている。
4.LGBTQ+排斥キャンペーン
Project 2025が進めるLGBTQ+排斥運動について象徴的なものとして、フロリダ州オルランドでの一連の逮捕事件を挙げている。これはパルスナイトクラブでの銃乱射事件の犠牲者を追悼するために横断歩道にチョークで足跡を残した抗議者が正当な理由なく逮捕されたもので、LGBTQ+及びその抗議者に対する不当な弾圧を象徴するものである。Project 2025の影響を受けたフロリダ州政府は、LGBTQ+のシンボルである虹色の横断歩道を排除する動きを強化。州交通長官は、虹色の路面標示を禁じ、オルランドの街はこれを何度も塗り直し、記念碑的な意味を持つこの横断歩道を消し去ろうとしている。これに対して、抗議者たちは「これは犠牲者の追悼の記念碑だ」と訴えている。
5.労働環境の変革
二期目のトランプ政権は、労働者に対する保護を解体し、アメリカの労働環境を大変革したとレポートは指摘する。特に政府職員に対する影響は深刻で、約199,000人のキャリア公務員が解雇され、40万人以上が団体交渉権を失ったとされている。主要な政府機関の労働組合契約は破棄され、労働者たちの生活は不安定になった。また影響は民間企業にも及び、従業員に最低賃金15ドルを支払う義務が撤廃されたことで、数千件の連邦契約や補助金がキャンセルされた。この政策は、製造業や移民労働者に対する取締りを強化し、生活必需サービスの価格上昇を招いていると指摘されている。
一方で、労働者たちの反発も強まり、労働組合への支持が急増しているとされている。調査によると、2025年の労働組合支持率は68%に達し、組合加入を希望する労働者は増加しているとされている。また、共和党支持者の40%が労働組合減少が国を損なったと考え、保守派の州でも労働者支援政策が受け入れられている。最低賃金引き上げや有給休暇法の導入が進んでおり、旧来の保守派の間でも労働者保護に対する支持が高まっている。
